顧問/アドバイザーの仕事を私流にまとめる

私は、今まで、いくつかの企業でアドバイザーや顧問の仕事をさせてもらってきました。関わってくれている/関わってくれた企業の方々は、私個人の限られた時間でも大変ありがたく感じてくださって、私自身も気持ちよくお仕事をさせてもらいました。(公開している具体的な実績は、以下の記事もご覧ください)

いくつか仕事をしていく過程で、私自身、「顧問という存在はどういうものであるべきか」を考えるようになり、まとめてみようと思い立ちました。雑多ではありますが、考えていることを以降ではまとめていきます。

顧問とは何をする仕事なのか?

「顧問」とは、企業やその他の団体が行う業務について、意思決定を行う権限は持たないものの、求められて高度な意見を述べるために置かれる役職のこと、あるいはその役職に就いている者を指します。

コトバンク

要するに、ご意見番的な仕事です。この定義をしっかり理解するのが重要。

提供価値は、ノウハウ提供や知見共有

どんなときに顧問が欲しいと思うかを想像してみましょう。

「ある事業領域に挑戦したいけど、自社に知見がない」
「ある技術を導入したけど、うまく機能しない」

などが代表例ではないでしょうか。要するに、これからトライする試行にアドバイスが欲しいか、すでに実行した試行にフィードバックが欲しいかの2パターンです。その課題に対して、顧問は自らが持っているノウハウや知見を共有することで、顧問先の視点を増やしたり、課題を解決したりしています。これが提供している価値です。

顧問業の種類とベンチマーク

何かの事業を始める際は、ベンチマークがあるとやりやすいです。顧問の場合は、顧問の種類によって異なります。具体的には、2種類で考えると良いです。自分がどちらの顧問で価値提供しているかもあわせて理解しておきましょう。(私は、両者を使い分けています)

  1. ドメイン特化型顧問

    1. ビジネスドメインへの理解が深い

    2. 顧問先がビジネスドメインに対して事業を展開するための、情報収集源となる

  2. ドメイン横断型顧問

    1. 様々なビジネスドメインの知識がある

    2. 特定のドメインに対する知識はそれほど高くない

    3. 知識の転用や、別ドメインの知見共有で価値を出す

顧問の種類を可視化したもの

経験則ですが、顧問先の事業が黎明期に近ければ近いほど、領域特化型の顧問の方が価値を出しやすく、グロースした後の企業の場合は領域横断型の顧問の方が活躍しやすいです。これは、事業が小さい時ほど、ドメインから学ぶことが多く、試行錯誤の回数も多いので、専門家がいる方が経験学習が進みやすいという背景が影響しています。

ドメイン特化型顧問 / 士業モデル

もし、ドメイン特化型の顧問で攻めていくなら、税理士や行政書士、社労士など士業をベンチマークすれば良いです。基本的な動き方は、事業や戦略に対して、ドメインの特性を踏まえた上でアドバイスを行う形式になります。

業界の動向に詳しくある必要もあるため、顧問の仕事以外にもそのドメインに自分が関与し続け、ある程度の流行や法規制、業界の雰囲気を察知し続ける必要があります。

ドメイン横断型顧問 / VCモデル

一方で、もし、ドメイン横断的な顧問で攻めていくなら、ベンチャーキャピタル(VC)をベンチマークすると良いです。彼らの動きを徹底的に真似ていけば、価値を生み出せます。

「VCってどんな価値を出してるの?」と思われた方は、先日公開された、前田ヒロさんの Podcast を聞くと良いです。VCの提供している優位性・プロダクトのカテゴリ分けが紹介されており、これがとても参考になります。

具体的には以下の5つのカテゴリわけが紹介されています。資金以外の選択肢は、顧問業でも提供可能で、目指すべきオプションです。特に、人材の紹介とBizDevについては、顧問業を行う上で切っても切り離せない提供価値になると考えています。支援している企業が成長するための源泉になり得るためです。

  • 資金 

  • 人材の紹介

  • BizDev

  • オペレーションのサポート

  • 海外展開

同業者の顧問をベンチマークしないのはなぜか?

意味がないからです。

顧問の仕事は再現性が低く、属人的なビジネスとなりやすい特性があります。特に個人の場合、「その人だからできる」手段が生まれやすく、同業の個人をベンチマークしたところで、自分の能力以外で差異が発生してしまい、ベンチマークが意味をなさなくなってしまいます。最後は、「あの人はこういうことができていいな」と感じておしまいです。

一方で、法人としてビジネスを展開している士業やベンチャーキャピタルであれば、一定の属人性はあるものの業界の中で知見が蓄積しており、それが一般に共有されているため、外部からも入手しやすく、参考にしやすいです。新卒採用がうまく機能している事実からも、ある一定程度再現性があると考えることができるでしょう。

顧問を初めてやるときは、蓄積された一定の再現度がある知見をベースに、自分の気質や提供できる知見や経験を活かしながら、始めると良いです。

顧問の仕事を獲得する方法

色々あるが、人づてがやっぱり中心

主なチャネルは、以下が中心です。

  1. 友人、知人、共通の知り合い経由での獲得

  2. 顧問バンクなど、マッチングプラットフォームでの獲得

  3. SNSなどでの問い合わせ

あいにく、私は2, 3 で顧問を受けた経験がありません。全て知り合い経由で顧問の仕事を受けています。

知り合い経由で仕事を受けるメリットはいくつかありますが、それ以上に自分の提供価値を相手が理解してくれやすいため、これから顧問業を始める場合は、知り合い経由での受注が安心かもしれません。

前述の通り、領域横断型の顧問サービスを提供する場合は、BizDev や人材の紹介も重要なファクターとなるため、普段から様々な人と出会い、様々な業界の動向を知っておくと良いでしょう。

スキルの高さはさほど重要ではない

顧問をやる上で重要なのは、ソフトスキルです。具体的にいうと、人間関係構築だったり相手のニーズを聞き出すヒアリングスキルだったりします。

もちろん、スキルが一定程度あることは重要ですが、スキルが高いからと言って顧問としてもうまくいくかといえばそうではないと感じます。むしろ、自分と違う専門性や知識を持った人たちに自分の専門性やドメインのノウハウをわかりやすく伝えるスキルの方が求められています。

仕事をする上での心構え

顧問をしているからと言って、自分が偉くなったと勘違いしてはいけない

この記事で言いたいことでもあり、私自身がもっとも重要と考えていることです。顧問をしているからと言って、何か権限や権威を持つわけではないのです。偉くもないし、凄くもない。

もちろん、多くの顧問は、高い専門性や業界に対する深い理解、置き換えが難しい経験を持っています。例えば、起業経験があり、企業の様々なフェーズで意味のある指摘をくれる顧問や、業界のドン的な存在で「この人に壁打ちしてもらえれば、業界の人30人に聞くのと同じくらい価値がある」と思えるような人もいらっしゃるでしょう。素晴らしいことです。

しかし、顧問はあくまで顧問であって、ご意見を表明したりアドバイスしたりするのみです。実行はしていないのです。重要なのでもう一度言います。顧問は何も実行していないのです。

アドバイスの価値は、間接的で具体性を伴わない。無形なものを売っていると自覚を持つ

何も実行していないということは、売上やコストに対して具体的な貢献をしていないと捉えるのが正しいと私は考えています。もちろん、間接的には関与しています。しかし、「もしそのアドバイスがなかったらどうなっていたか」を計測できない以上、定量的な貢献を示すのは難しく、どうしても認識ずれが発生しやすいのです。これ以上ないほどに無形商材だし、水物な商売と感じます。

「だから、顧問の仕事は意味がない」とは言いません。が、重要なのは、顧問の仕事は、それくらい実態のないものを売っているのだ、と認識することです。

最終的には、顧問先が顧問を不要とする未来を描いて仕事をする

顧問が目指すべきは、顧問がいなくても顧問先の事業やビジネスが回る状態です。顧問先から自分が不要とされる未来を描いて、そのために自分ができることをしないといけません。

顧問が必要な理由は「顧問先が、自分の事業をうまく活かせるため」です。この点をはずしてはいけません。顧問が自分の利益のために動いても、結局チグハグになるだけで、価値提供が曖昧なものになり、次第に提供価値の認識がずれ始め、最後は決別となってしまいます。


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