出産当日 嵐の『HAPPINESS』おしりだせ〜

私の出産は帝王切開であった。よって、局部麻酔?局所麻酔をしてもらった。

事件は現場で起きている。

と織田裕二は言ったが、手術は手術室で起きている。4月7日12時50分から、と手術開始時刻は「刻んできた」。担当助産師さんが押してくれる車椅子に乗り手術室へ。手術室は向かい合って何部屋もあり、冷蔵庫のようでもあり、倉庫のようでもあった。別の部屋からはオペラのような曲が聴こえてきた。円生百席とか聴こえてきたらどうしようと思った。手術中音楽がかかっているとは耳にしたことがある。姉は大晦日に陣痛、元旦に帝王切開手術をしたため

姉「第九かお屠蘇音楽の2択だった」

お屠蘇音楽って!?「春の海」ですかい?お琴と尺八の。テン、テケテケテケテン、、姉の適当なネーミングも選択できる曲もツッコミ所しかない。

私が入った手術室は無難なJ-popであった。落語や浪曲がかかっておらず安心した。後で聞いたら看護師さんが選んだ結婚式でよく使用される曲やハッピーバースデーを含む曲のプレイリストであった。

手術室に入室してからは慌ただしかった。本人確認やアレルギー確認やら矢継ぎ早に質問された。執刀医が手術名と名前、看護師、麻酔医、、皆さんが自身の名前を言った後

一同「お願いします!」

と声を揃えた。

私も「お願いします!」

と元気よく言ったら驚かれた。最もお願いしなくてはいけないのは患者である。言って当然である。

麻酔については陣痛室(待機部屋)で問診を受けていたが、今一度確認される。私が前回局部麻酔をしたのは25年、四半世紀近く前のことである。

私「アレルギー反応とかはなかったんですけどねぇ、、いかんせん昔のことですから。」
(嗚呼、超高齢出産よ。)

切開手術自体は痛く感じないが痛く感じないようにするための麻酔がメチャクチャ痛い、ということは公然の事実である。横向きに寝て、身体を丸めるようにして腰に注射していく。

そのとき、嵐の『HAPPINESS』が流れた。

"走りだせ〜"

かつて嵐の皆さんが『笑点』にゲスト出演された際、この曲を用いた大喜利問題があった。そして、小遊三師匠が

"おしりだせ〜"

と歌い、会場で観覧していた小学生の心を鷲掴みにしたことがあった。私はそのことを思い出してしまい、かなり痛い注射を

(おしりをだしながら)笑いを堪えて受けることになった。

麻酔医「大丈夫ですか!?」
私「いえ、この曲嵐の曲ですよね」
看護師「嵐好きですか!?もう一回かけましょうか?」
私「いえ、以前職場に嵐の皆さんがいらして、、」
一同「え!!!!!」

推定20代後半から30代前半の女性スタッフ(産科のためか、執刀医以下ほぼほぼ女性であった。千葉大から男子生徒?研修医?の見学はあった)数人が驚きの声をあげた。(嵐の皆さん、千葉医療センターに行ってエッセンシャルワーカーの皆さんを労ってあげてください、、きっと喜ぶと思います。)

さて、今回担当してくれた麻酔医がやたらに陽気な人であった、おそらく女性。みんな帽子にマスクに作業着?なんていうんでしょう手術着?なのでよく分からなかった。麻酔の効き具合を確認したあと、

私「いやぁ〜緊張しますねぇ」
麻酔医「その割に心拍数落ち着いてますよ。ところで、ご職業が落語家さんだとか」
私「はい」
麻酔医「私『笑点』大好きなんですよ!」
私「ありがとうございます。今年のお正月特番までアシスタントをしてたんですよ」
麻酔医「えええええ!」

そこから、麻酔医の『笑点』愛を聞くことになった。社交辞令で「好きなんですよ〜」と言う人は多いが、聞けば聞くほど、毎週観てる人のコメントであった。

麻酔医「三平さん、、残念でしたね」

どっちの意味で残念なのか知らない方がいいこともある。電動メスで"切腹"されている最中でも、こういったトラップを避けながら、おしゃべりした。さすがに、いよいよ赤ちゃんの取り出しかなぁという時は緊張した。みぞおちの辺りを何度か押されたので、

私「ヨイショ、ヨイショ、ヨイショー」

と掛け声をかけておいた。鏡割りの要領である。

赤「ほぎゃぁ」
一同「おめでとうございます」

やはり鏡割りである。そこから胎盤やら羊水やらがバキュームされている感覚が続いた。歯医者で唾をとられる時の感覚に似ている。その後、縫合作業をしているようだった。昔、お腹にメスを忘れて縫合してしまった事件があったが、

".本日、メスのお忘れ物多くなっております。お忘れ物にご注意ください。"

とアナウンスしてほしかった。多分大丈夫だと思う。13時に手術がスタートし15時に終了した。

麻酔医「流石落語家さんですね!手術中こんなにはっきり話されるかた初めてです!」

私も「こんなにしゃべる麻酔医は初めてです!」

と思った。

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