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1枚のレコードと1冊の本〜孵るまでのドイツ語(1)

ドイツ語との出会いは、1枚のレコードでした。
時代ですね…当時としても古いレコードで、母が実家から持ってきたもの。
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウの歌う『美しき水車小屋の娘』に夢中になりました。
20世紀の名バリトンによるシューベルトの代表的歌曲集、ジャケット画像を探したのですが、記憶にあるものはなかなかヒットしません(彼は何枚も『水車屋』を録音しているので)。

とりわけ気に入ったのは、「詩人のプロローグ Der Dichter, als Prolog」
Der Dichter, als Prolog
Wilhelm Müller: Die schöne Müllerin
https://gutenberg.spiegel.de/buch/die-schone-mullerin-2579/2
メロディはなく、朗読なのですが、ドイツ語の響きとメロディの美しさに、これだけをひたすら何度も聴くこともありました。
小学校から中学校に上がる頃だったと思います。
同じ時期、これも家にあった古い世界文学全集からトーマス・マン『トーニオ・クレーゲル』にはまり、原作はやはりドイツ語で書かれているらしいと知り、その言葉の世界に強く魅かれました。

中学へは電車通学だったので、学校帰りにどこか大きな本屋(たぶん新宿・紀伊國屋)で “Tokio Kröger” 原書と独和辞典を買い、自力で読もうと挑戦。

結果…
冒頭で挫折しました。
英語は好きだったし得意なほうでしたが、1語1語独和を引き、翻訳書と突き合わせても、次の文、次の行へ進むとまた立ち往生。
ちなみに、その冒頭部分はこんな感じです。
Tonio Kröger, Thomas Mann
http://www.gutenberg.org/files/23313/23313-h/23313-h.htm
トニオ・クレエゲル、トオマス・マン
https://www.aozora.gr.jp/cards/001758/files/55937_58904.html

『水車屋』と『トーニオ・クレーゲル』はその後も長いこと愛し続けましたが、ドイツ語独学は中断。
数年たって大学進路を決める時期になった時、ごく自然にドイツ語を、ドイツ文学を、と思ったのでした。

…今、ヘルマン・プライの『水車屋』を YouTube で聴いています。
フィッシャー=ディースカウよりも明るく温かみのあるバリトンで、リート(歌曲)歌いとしてはもう長年、プライがいちばん大好き(微笑)です。
“die schöne Müllerin ich lad euch schöne Damen kluge Herren” の検索でヒットしたのですがいきなり歌曲部分から始まり、「プロローグ」を朗読している音源は、メゾソプラノのブリギッテ・ファスベンダーのものだけ。
…個人的には、10代の頃これを聴いていたら、ドイツ語を志さなかっただろうなと思いました。
ファスベンダーもすばらしい歌手だと思いますが、朗読については、私の好みとは違うようです。

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