1/5 タイタンの学校の自主練会について
新年あけましておめでとうございます。『タイタンの学校』にて事務局スタッフを務めておりますはやしと言います。2019年もこちらから『タイタンの学校』内で感じた事や思ったことを書いていければと思いますので皆様何卒お付き合いの程よろしくお願い申し上げます。
さて、今日は『タイタンの学校』1期生を集めた自主練会を開催したので開催に至るまでの考察をまとめておきたいと思います。まずは前回のエントリの話から。前回、私は1期生に向けて常に稽古はしておくべきという話を出しました。
その中で「じゃあ、練習ってどんな風にやったらいいのさ」という問いに対する答えを出していないな、と何となく感じてました。また、現状の芸人コースにおける足りてない部分や稽古の仕方など自身が感じていることや考えていることなんかもあり、年末ちょっと色々考える事が多く焦燥感的なものまで湧き出してくる始末…。
運がいい事に年末年始はお休みです。休みになると色んな”イマジネーション”や”やる気”が沸きます。やることがないと逆にモチベーションが沸いてきますね。ややこしい人間だな、と自分でも思います(笑)
そこで、色々考えたり元旦から一部芸人コースの子なんかにも相談させて貰った結果。実験もかねて自主練会の企画を立てる事にしました。『タイタンの学校』には受講生のみが参加できるSNSコミュニティがありますので、そちらで”あくまで個人企画”という事で企画ページを作って募集開始したのが1月2日水曜日。開催は1月5日(土)と非常に日程がタイトな中、企画を進行していきました。
今回、二つのテーマを持ってこの自主練会を実施することにしました。1つは「稽古場借りて練習しようぜ」という割と簡単な話。あまりテーマが重くなりすぎても参加し辛いだろうというところも含め、まずはイージーなお題を設定。『カラオケボックス』という回答が割と正解に近いとは思うのですが、今回は「鏡がついたスタジオ」を借りた時にどうなるかという提案を行ってみました。
2つ目は「一般コースの方に稽古を見てもらったらいいんじゃね?」という点に切り込んでみました。『タイタンの学校』には芸人を目指す「芸人コース」と一般の方が通う「一般コース」があります。この両方の観点からこの利点について少し解説したいと思います。
まず「一般コース」から。
「一般コース」の人たちにとっての「ゴール」のデザインは以前より私もかなり検討に検討を重ねています。その中で一般コースの方がそれぞれの「ゴール」に向かうにあたり「芸人コースの稽古を見たらプラスになるのではないか」と感じる二つの仮説が僕の中にはあります。
①日常にエンターテイメントを導入していくきっかけとしての演出経験
②エンターテイメントを一緒に作り上げたい、という潜在欲求の検証
①は『タイタンの学校』そのもののテーマにもなっていると思っています。一般社会の中にもエンターテイメントを取り入れるとプラスがあるというのは割と簡単にイメージが出来る事象だと思います。ということは芸人の稽古を見てそのエンターテイメント性を高める作業を行うというのは「プラスにに繋がる」と思います。また抽象的なものを言語で伝えるというのは非常に高度な技術が必要で、経験によって培われるものも少なくありません。その経験を積めることは非常に有用です。
もうひとつの②についてはかなり意欲的なチャレンジにおける検証実験だと個人的に感じています。引き続き解説していきます。
現在、趣味の延長線上(人によってはセミプロのような形)でエンターテイメントに携わる人が増えてきました。テレビタレントやアーティストのようなこと(≒ニコ生主、youtuber、インフルエンサーブロガー)を個人で行う人は少なくなく、コンテンツを享受する側からもそういったコンテンツがエンターテイメントの選択肢の一つとして認識されてきています。そうした中で私はこういった現象が「ネット」の中だけではなくもっと広範囲で有用になり、「舞台でコンテンツを発表すること」がもっと身近になってくるのではないか、という仮説をスタッフ内にて提唱しています。
少し話は変わりますが「遊びとは何か?」という事を考えた事はありますでしょうか?「遊び=ゲーム」という図式が成り立つかどうかはまた別途議論が必要なテーマではありますが、僕が尊敬する人の一人に吉田晄浩(よしだみつひろ)さん(現ミラクルキッズ代表、旧テクノスジャパンにてダウンタウン熱血物語(所謂くにおくん)シリーズなどを担当された方)という方がいらっしゃいます。その吉田さんから「ゲームとは何か?」という事をお話頂き、凄く感銘を受けたことがあります。
ゲームの面白さっていうのはプロしか感じる事が出来ない醍醐味の部分だけを抽出したようなものをいうんだ。例えばF1のゲームってあるでしょ。F1の車を運転できるようになるためには凄いトレーニングが必要だし、死と隣り合わせのリスクを生じる。そしてそれを背負い超えてきたF1レーサーだけが感じる事が出来る「ライバルとの駆け引き」や「限界への挑戦」みたいなことは何物にも代え難い面白さがあるはずなんだ。例えばこの1秒を縮めるための勝負をするかしないか!?みたいなね。トレーニングやリスクみたいな大変な部分をすっとばしてその醍醐味みたいなものを子供でも疑似的に体験できる、これがゲームの面白さなんだ。
僕の拙い言葉で伝わったらいいんですが、これ6年くらい前に吉田さんから投げかけてもらった言葉でずっと心に残ってるんです。「プロにしか感じる事が出来ない事の疑似体験がゲームである」というワードには何かとても大切なものが詰まっている気がします。
さて。話は戻します。
これからの時代は「人と人とのつながり」が一つのキーワードになってくることは誰もが何となく感じる所であるところだと思います。そういった意味で「舞台、ライブ」というのはエンターテイメントを考える上でも非常に重要な要素になるのは間違いありません。その「舞台・ライブ」を作ること自体を庶民が娯楽としてやる、ということが近い将来の姿としてあるんじゃないかな、という気がしています。
そして『タイタンの学校』にはこれを趣味で(≒遊び、ゲームとして)やってみる事が出来る要素が詰まっています。芸人さんもいるし、構成するものは色々学べるし、やってみない手はないのではないかな、という提案です。そして『タイタンの学校』に通おうと思った「一般コース」の人たちの何人かにはそういった潜在的なニーズがあるように感じています。その実験の意味合いでテーマに設定しました。
(※注 趣味、遊びという言葉は誤解を受けやすいので解説ですが、ふざけてやるということではないです。趣味や遊びも本気でやるべきだという立ち位置に著者は立っていますので誤解なきよう。)
閑話休題。
続いて芸人コースの人たちにとってのメリット。
これも2点に集約させました。
①人に演出してもらう事の重要性
②ファンを作る作業の基礎訓練
①はこれまでの学校での芸人コースの子たちに対する僕なりの疑問です。もっと「人に意見を乞う」、「教わりにいく」というスタンスがあっていいんじゃないか、という疑問を常に抱いていました。特に総合的な感想を求めるのではなく、「足りてない能力が何で、それを習得するためには何が必要か」を議論する環境が必要であると痛切に感じています。
タイタンの学校でも実力ある作家の先生方に講師を務めて頂いております。そこで講評をもらう事も大事ですが、「アプローチ手法や表現方法、能力の向上」といった点についてはあまり触れられてきていないように感じています。そこをフォローしていく為にも「客観的に見てもらう事で足りてない部分を知る、そしてそれを満たすために何が必要なのか議論し、考える」といった時間が必要なのでは、と感じています。
「一般コース」の方々は勿論素人ではありますが、少なくとも『タイタンの学校』に学びに行こうと思うくらいエンターテイメントに対し感度が高い方です。そういった方々と一緒に面白いものを作り上げていく作業に取り組むというのは良い経験になるはずだと直感的にではありますが、感じています。
②は誤解を恐れずに言うと「一般コース」の方にもっと「ファンになってもらうための活動をするべきだ」ということです。ファンを作ることの重要性についてはいくつかのエントリで触れているとおり、個人的には「ファンの多さ」というのは最も重要なパラメータの一つだと思っています。
「あなたを応援したい」と思ってくれる人が多い人ほど成功するチャンスは多いというのは真理です。「ファン」が多いことは成功に直結します。つまり芸人として面白いものを作ることと同等に「ファン」を作っていく事は大事です。例えばお店でも同じです。お客様の意見やお声に耳を傾け、それに向けて改善やサービスを向上させ、更に感想を聞いてより良いお店を作っていくというのは当たり前の話です。芸人もファンを作っていく為にもっと意見に耳を傾けより良いものを作っていくという事が必要ではないでしょうか?
その基礎訓練として「一般コース」の人たちにダメ出しを受けるというのは割と手軽な導入になるんじゃないかな、と感じた部分があります。
以上。
ここまでがこの自主練会の導入部における考え方、私の立ち位置についてです。かなり長くなりましたが、このようなテーマから企画を進めていくことにしました。
今回、この企画を進めていく上で最も危惧するポイントがありました。それは「芸人コース」の人が望む”ダメ出し・アドバイス”と「一般コース」の人たちが出す”ダメ出し・アドバイス”の温度感に差異があった時に変な感じになるんじゃないかという点です。
それを避けるべく、本来ならタブーである事前に面白いと思っているポイントを説明するというフローを確立することにしました。事前に芸人さんから説明を受ける事でどういったポイントでそのネタを見たらよいのか心構えをし、ズレを減らすことを狙ったわけです。作成配布した資料は以下の内容の通りです。
この形式がうまくいったかどうかはわかりませんが、少なくともダメ出しに困惑していた芸人さんがいたようには感じなかったので少なくとも危惧していた点への抑止力にはなったのかなと思っています。このメソッドに対し芸人さんたちには違和感があったかもしれませんが、意図はちゃんとあったのでお許しください。
また、せっかく来たのだからただ自主練だけで終わってはいけない、と思いスペシャルゲストをキャスティングしました。タイタンの機関紙「GOGAI」の編集を担当しております放送作家、ライターの「だるま亭へっぽ子」さんにお越し頂き「一般コース」の方と一緒にダメ出しにご協力いただきました。(※へっぽ子姉さんに昨年末焼肉おごっておいて本当に良かったw)
これで「芸人コース」の人も「一般コース」の人もプロの方の意見を聞くことが出来るので参加した時のお得感が増します!へっぽ子さんはめっちゃ姉御肌のおばはんなので、皆さん接しやすく楽しくダメ出しを聴くことが出来た事と思います。うん、良かった。(へっぽ子さんのダメ出し一切聞いてないけどw)
会場も大塚のBMCスタジオなるスタジオが格安で抑えられました。15時~19時の4時間貸切で約7,000円。7人くれば一人1,000円で4時間借りれるので割安になるんじゃないかなあ、という計算です。スペースのレンタルもそれ専用のWEBサービスがあるので手配が本当に簡単になりました。
会場は鏡もあり、50平米と割と広めのスペースが確保されているスペースです。安い時間帯なら時間当たり1,000円程度で借りる事が出来ます。こんな感じのスペースです。
結果、今回は15名(芸人コース5組7名、一般コース8名)の方に参加頂いたので一人500円見当で会場費を賄うことが出来ました。声を出すという事を考えるとちょっと稽古がし辛い時間帯もありましたが、声を出す時間帯をローテする等の工夫でもっとうまい使い方が出来るのでは、と感じてます。
ということで、考え方立ち位置、企画内容についてまとめてみました。5000文字を超える超大作になってしまった事を改めてお詫びいたします(笑)
参加された方、参加したかったけど出来なかった方、興味なかった方、タイタンの学校の様々な方からのご意見やご感想を頂けたら大変参考になりますので、率直なご意見を頂けたらと思いますのでどしどしご意見をお寄せいただけたら幸いです。このnoteの最下部にコメント欄ありますので是非よろしくお願いします。
それではまた。
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