タイタンの学校五期が終わったので自分なりに総括しておく。

2022年春から始まったタイタンの学校5期が無事4月に終了致しました。コロナ禍での運用という事もあって受講生の数は少なめではありましたが、そんな中でも多くの改善を行って臨んだ5期だったと思っています。割とタイタンの学校に通おうとする人や興味のある人が読んだ…みたいな話も伺ったりするので自分のメモの意味合いと皆様の参考までにということで書いておきたいと思います。

一般コースについて

・カルチャーコースの廃止

まず大きな改革のポイントとしてはカルチャーコースの廃止でしょう。カルチャーコースはタイタンの学校に通ってみたい・・・けれども1年間講義に通い続けるのは重い・・・といった声の大きさから半年制で週1コマのみというライトなコースを作ってみようということで新設したコースでした。反響もそれなりにあり、受講生もそれなりに集まりましたが、結果として1年くらいは通わないとコミュニティとして満足度が高まらないということも分かってきました。半年間終了後も継続して通ってくださる受講生も少なからずいらっしゃったという事からも、ユーザーのニーズは「業界への就業を目指す」というよりは、「エンターテイメント分野における総合学習」と「幅広い人との出会いの場としての機能」が求められているんだなという事を体感することが出来ました。

・一般コースの在り方を改めて考える

タイタンの学校の商品価値は「講師と受講生とのコミュニケーション」なのですが、「そこに通おうとする人と人とのコミュニケーション」が非常に重要な価値を担っているのだなという事を大きく感じました。よく考えてみると理屈は明らかで、エンターテイメント(≒発信)力を高めたいと考えている人たちの何人かは既に自分のコンテンツを持っている人たちでその使い方や表現の仕方を考えているというフェーズなわけです。またその中には自分はエンターテイメントをやりたいと考えているけど、それを実行する方法・手段を持たないという人たちもいます。そんな人たちに混ざって、全然なんも考えないで面白そうだからといってくる人たちもいます。そんな集団の中に芸人を目指す人たちを混ぜて化学反応を起こさせる場なわけです。よくよく考えてみたらとんでもない場を作り出しているのだな、、、という事に5年経過して気づきます。このコンセプトの基幹を作り出した太田光代という人はつくづく天才だな、と思います。太田理事長が最初から「寺子屋をモチーフ」と言っていた意味を理解(解釈)していく5年間だったのかもしれません。

・目的のない人も許容する学校

自分なりにこの環境は「業界を目指す人」以上に「自分に(更なる)イノベーション」を起こしたい人に向いている環境なんだなという整理がつけられました。怖いのは「目標がない人」にも向いているという所で、芸人コースと一緒に学ぶ事で「目標をもって動いている人たち」と環境を共にしながら活動していく事は何かしらのプラスを与える事になるんだなーという事を感じています。2期くらいでデザインしていた一般コースのコンセプトは「業界就業向けプロ志向の高い方に向け」だったんですが、それよりは「遊び」をたくさん作り自分を発信していく事、開放していく事みたいなことを多く取り入れることで、自らのモチベーションや可能性を広げていく事というのが僕らにとって大切なことなんだなーと再確認しました。

・コマ数を半減させて時間と費用に余裕を持たせた

以前は一般コースのコマ数は例えば2期一般コースは1年制204コマ(学費47万円)、3期一般コースで1年制136コマ(学費33万円)とコマ数、学費ともに非常に大きな負担が掛かるコースでした。もちろんその分授業内容は充実してましたし、いい部分も沢山あったのですが、通学している皆様の負荷はやはり相当に大きかったように思えます。

2期では週平均4.6コマを実施していた総合講義も5期では週2コマまで削減しました

徐々にコマ数が減らし、負荷を減らし1コマ1コマの講義に集中できる体制を作っていきました。5期一般コースは更に負荷を減らして1年制80コマ(学費税込み22万円)とコマ数費用面共に大きく抑えて運用しました。バランスのチューニングはこれくらいが丁度いいようで一般コースの皆さんもコミュニケーション図りながら楽しく学んでいく上で居心地のいいカリキュラムとなっていたように思えます。5期は一般コースの受講者数も20名程度と多かったのが良かったように思います。6期は初めてと言っていい5期とほぼ同様のカリキュラムで臨んだにも関わらず多くの方の応募があったので、そういう意味でも世のニーズとのチューニングがあってきた結果なのかなと感じています。

芸人コースについて

・専門講義はほぼ「ネタ見せ」へ

これまで芸人コース専門講義ではネタ見せだけでなくダンスや演技など幅広い講義を取り扱ってきたのですが、これらは総合講義(一般コースとの合同講義)にて取り扱うことにしました。理由は芸人コース視点では「ネタ見せ」に集中したい気持ちもあるだろうし、一般コース視点では表現の講義を受けたいという気持ちもあるだろうし、双方の視点から原則「ネタ見せ」の講義に集中するという風に落ち着けました。しかしながら、芸人として重要なフィジカルを育成するという所は日々のトレーニングで身につけていってほしいところではあります。もっと言うと声量のアップについては必須項目で、声が出る出ないは芸人としての力量に直結するという所があります。そこで毎週芸人コース専門講義の日には冒頭1h程度発声練習や体の動かし方の基礎トレーニングを事務局にて行う時間を作りました。その後講師の先生にお越し頂きネタ見せを「全組」行うという講義形式です。うちの学校は少人数制で「全組」ネタをキッチリ見ます。これはウリの一つだと思っています。

・ライブの本数を増やしたり、クオリティを上げたりした

芸人としての経験値っていったい何かなという事の答えはたくさんあると思うんですが、その答えの一つはライブですよね。どれだけ舞台に立ったかというのが、その芸人さんの力に直結するというのは誰もが想像しやすいところだと思います。そこでライブの数を単純に倍にしました。今まで月1本で開催していたライブを単純に月2本にしました。本当は月4本出て欲しいという所も芸人コース受講生には伝え、2本は学内ライブ、もう2本はフリーライブなどに出演して月に最低4本出るペースでネタを作り続けるよう話をし続けました。

あと、ライブのクオリティについても言及しなければならないポイントでした。ライブにただ出るだけで経験値が溜まっていくかというと半分あってますが、半分は間違えていて、そこには方程式みたいなものがあります。

・密度(クオリティ)×客数≒経験値

ただライブに出るんじゃなくてそのライブに掛けられた密度(クオリティ≒熱量)が相応にないと豊富な経験値は溜まらないですし、それに呼応するお客さんがいないとそれも効果が薄くなってしまいます。場所をただ用意すればいいんじゃなくて、我々運営陣もお客さんに少しでも楽しんでもらおうとギミックを考えたりして、総体的な熱量を上げていく作業がないとあまり経験値としては高いものにはならないし、むしろマイナスまでありますよね。ダラダラとネタを数10本並べるだけのライブに慣れてしまう事に良い事なんてこれっぽっちもありません。ただ並べるだけのライブにただ出すだけのネタ。これが強くなる秘訣とは僕にはあまり思えません。

・道場ライブ新設

そこでお客さんにまだ見習いレベルの芸人達を並べても面白く見てもらうためにはどうしたらいいかという事を考えて、これまでの定期ライブ「Dragonfly」というブランドを捨てて「道場ライブ」を新設しました。各ネタについて段位を用意し毎回その段位が上がる下がるを認定していくというライブです。毎回動画を事務局スタッフ舞草さんが頑張ってあげてくれているので全回YouTubeのタイタンの学校チャンネルにアップされています。興味がある方は是非ご覧頂けたら嬉しいです。

少し脱線しますが、このオーディション形式のライブは私がタイタンの学校関連で運用している「ライブオーディション タイタン作戦会議」というライブにも通じているのですが、2005年に日本テレビ系列でやっていた「歌スタ!!」という番組をオマージュしています。(※というか「ライブオーディションタイタン作戦会議」は歌スタ!!をまんまお笑いライブに持ってきた感じですw)

話を戻します。道場ライブにはいくつか自分なりにポイントがあって。

①最初に紹介(予告)を入れることでお客さんに安心感を与える
⇒ミュージックステーション(テレビ朝日系列)システム
②MCを統一することで点じゃなく線で楽しむことが出来る
⇒次も見に行こうと思ってもらいやすい仕組み
③段位の上がり下がりでのバラエティ感
⇒自分なりに評価をしてみたりしてプロの評価との差分を楽しむ

など。他にも細かく色々ギミックは作っていて、平場で必ず名前入りのタスキを掛けてお客さんから誰が誰かをわかりやすくするだったり、常に客席に座らせることでリアクションのタイミングを常に作って緊張感を維持したりなど、色々なところでお客さまに見やすい、楽しめる、また芸人が楽しませる環境を常に考えられる仕組みを企画したつもりです。

また、②でも触れましたがネコニスズのMC起用もひとつキーだったなーと思います。これまでは毎回MCを立ててましたが、今年は原則年間通じてネコニスズのお二人にお越し頂くというスタンスをとれたのは非常に大きかったと思っています。ヤマゲンさんの捌きに、舘野さんの返しに、どれだけ受講生が救われたことか。ライブの密度の部分の底上げに大きく寄与頂き凄く感謝しています。

・集客への意識をもっとつけたい

我々はプロの芸人を育成している機関ですから、プロである以上集客への意識ももっと高めていかなくてはならないな、というのが今期に残された課題の一つです。5期の学内ライブのチケット販売枚数を取りまとめてみましたが、大体こんな感じでした。

学内ライブのチケット販売枚数

この数字は例年と比べて良かったかと言えば良かったのですが、ただ僕らが力を入れてきたのと比例して集客が伸びたかと言われるともう少し高望みしたいような、そんな数字です。自分たちへの注目度は自分たちでも作っていかなくてはならないですし、集客それ自体がブランディングになりえる要素なので、そこに対する意識の強化というのは課題の一つだなーと感じています。

・修了公演「Dragonfly」の完成度のアップ

昨年まではあまり精力的に企画分野での関わりをしてこなかった修了公演ですが、今回本格的に着手しました。時間と労力を結構掛けたつもりです。

道場ライブにおけるネコニスズの通年起用もこの修了公演を見越しての逆算での採用という意味合いもありました。1年かけて5期生のメンバーを知ってもらって最後に最高の料理をして頂く為に道場ライブを1年間やってきたといっても過言ではありません。

また演出面での強化もかなり力を入れました。「修了公演を見に来た」という気持ちから「映画」を見に来ているのと同じ空気感を持ってもらうために映画と同様のCMからスタートさせて気持ちを整えてもらいつつ、OPムービーの導入。出演順の抽選をしつつ最初に自己紹介をさせつつ、出囃子もクオリティの高い出囃子を用意、学校全体で1年間かけて作り上げたライブであることをテーマとしたエンディング(名前変換ミスが1か所あったのは伺っています。本当にMさんすみませんでした・・・。)など。

個人的には出来ることは可能な限りやってクオリティを格段に上げたつもりです。芸人コースの子達のパフォーマンスも良く総じて良いライブにすることが出来たんじゃないかなと思ってます。見に来てくれた講師の先生方に感想を聞いたりしても概ね好評ではあったのでほっと胸をなでおろしています。

・定期的にやり続けた面談

昨年までやったなかったこととして面談があります。1年間を通じて芸人コースの受講生と面談をし続けました。在籍が約20名なので週に4~5名程度を面談し、全員月に1回程度面談出来るように対話をし続けました。これも距離感については非常に悩むところもあったのですが、時にプライベートな所まで話は食い込み、様々な話をしてきました。結果としてこの面談があったことで所属となる道が開けた子もいたんじゃないかな、と感じれるようなところもあったのでそれはそれでよかったな、と思うところもあり。残念ならが所属に至らなかった方についてはもっと何か別のコミュニケーションとかもあったのかもしれないと反省する部分もあり。

なんにせよ語った言葉の数の分だけ理解が深まるという部分もあると思います。話が長くなるのもあまりよくないというのがありますが、でも彼らが何に悩み、何に躓き、何を考えているのか、そこによく耳を傾け、我々が何を考えていて、どうなってほしいかを訴え続けていくことで、お互いの理解が深まることはあるのかなあと思っています。

面談は時間と労力を食うので同じ事務局の篭崎さんには大きな負荷を掛けましたが、来期も継続してやっていきたいなあと思っています。

総括

・1期以来の卒業制作が自発的に行われた嬉しさ

1期の時に在学生の皆様が自発的に卒業制作みたいなものを作ってくれたというのがあって、我ら運営スタッフに向けて受講生が寄せ書きみたいなものを書いて送ってくれたりしました。今回、それに近しい卒業文集の制作的なものが自己発生的に受講生の中で起き、実際に冊子を作り上げて出来上がったという出来事が5期ではありました。こういう取り組みが受講生の中で起きているというのは我々の運用がうまくいったという成果のひとつだと感じていて、凄く嬉しく思いました。誤解がないように念のため記載しておくのですが、これがなかった他の期がダメだというわけでもなく、これからこういうのをやりなさいというのでもなく、ただ、今期の受講生の皆さんがみんなでこういうものを作りたいという気持ちになってくれて実際に作り上げたという事がただ嬉しいというだけ。

卒業文集のスピンオフ的なものになるんですかね。この「お笑いの生き霊」という作品も頂戴して拝読させて頂きました。何かこの作品を書(描)いた二人の人生がタイタンの学校に通ったということをキッカケに動き始めたことは間違いなさそうなので、これからも応援できることは応援出来たらなあみたいなことは思ったりします。

・2期の「春とヒコーキ」の躍進、「ウエストランド」のM1優勝など

昨年はタイタンという会社が大きく動いた年でした。2期の春とヒコーキがネットで大活躍したところからドラマへ進出と大躍進。年末には事務所の先輩であるウエストランドがM1グランプリで優勝するという嬉しい事件もありました。

余談ですが。春とヒコーキのぐんぴいは俺が貸した変態本を一向に返却する意思を見せず、アニメ「惡の華」の再評価をいずれしようとブルーレイも貸したのですがこれも帰ってこず、悲しい思いをしていますが、学校業務にも積極的に協力してくれるナイスガイなので心を広くもって許していきたいと思っています。

話がそれました。色んなことをきっかけにタイタンの若手が世にどんどん出ていくようになれば学校事業も安泰ですし、逆を言えば世に出ていくような若手を排出することが出来れば、タイタンがもっと盛り上がっていく事でしょう。学校はその基幹となる部分を担っていると思います。

試行錯誤しながら前期よりは今期、今期よりは来期と常に進化し変化し、より強いコミュニティを作っていく事を考えていけたらと思っています。

・「ライブオーディション タイタン作戦会議」と「タイタンの学校」

4期からライブオーディション作戦会議に来てくれる優秀な人材をスカウトしてくるという作業を行っています。4期ではしびれグラムサム、5期ではひらおか族というコンビをスカウトし、学校に入学頂きました。彼らに入学して貰ったことで、彼ら自身の力が単純にプラスになるという事もありますが、それ以上に学校全体のネタレベルの向上に寄与する(他のメンバー含めた全体のネタ力の向上に影響が出る)ということがあります。やはり強力なライバルがいると盛り上がります。そういう意味でもフラグシップを用意するというのは学校運営において非常に重要だなーと考えています。この2期(4期と5期)についてはしびれグラムサムもひらおか族も凄くいいパフォーマンスを発揮してくれたこともあり全体にとてもいい効果がありました。

6期は総勢10名を超えるメンバーが作戦会議から上がってきます。正直これがどういう効果に繋がってくるかの予想は難しいのですが、全体の偏差値を大きく上げる要素になると想定しています。だからと言って作戦会議組を優遇するとかは我々にはなく。従来の入学組は身近に彼らを見ることで早い段階でそこまでのプロセスを手に入れていく事が出来ますし、いい意味でお互い刺激しあって高いレベルになっていってもらえたらなあと考えています。

強い新人をより多く作る、それが我々の使命なので全員と志を共にしていると考えています。5期からは7組の芸人が所属し新人としてスタートしました。彼らには引き続き頑張っていってほしいですし、所属できなかった3組含め修了生でまた活動していて所属を目指す人のバックアップもしつつ、より強いメンバーを上にあげていくという作業を今年も頑張ってやっていけたらなと思っています。

長くなりましたがつらつらと思っていることを書きました。
ここまで読んで頂きました物好きな皆様ありがとうございました。

2023年5月14日
はやし


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?