1つのネタを練るのか、たくさんのネタを作るのか?

先日のタイタンの学校の事務局内で事務局小林さんとの会話の中でこんな話がありました。

はやし「せっかくネタ見せ出来るんだから色んなネタをどんどん持ってきたらよいと思うんだけどなあ。」
小林「いや、それはどっちもあるよ。一つのネタをじっくり作っていくタイプもいれば、たくさんネタを作ってみた方がいいというタイプもいるし。」

なるほど、確かに小林さんのいう事も一理あります。小林さんもタイタンに入社してから多くの人の信用を勝ち取り、今や子会社の社長を務める人間です。そんな彼が様々な芸人さんを見てきて感じている事ですから、これが真理に近いというのがまずは大前提として間違いなさそうです。

というわけで回答は「人によって違う」!!

でも、これって答えになってないですよね。僕個人の考えとしては「学校」というのは受講生が何らかを享受しに来るものであり、提供されるものがあるべき存在であると考えています。そこで今日はこの命題に対して恐れ多くも僕なりの回答を出してみたいと思います。

まずは大変参考になったエントリのご紹介から。上記エントリは菊池健さんというトキワ壮プロジェクトという新人漫画家を育成する事業を展開されていらっしゃる方のエントリになります。

この記事は読み物としてもデータとしても大変参考になりますので是非一度目を通して頂きたい読み物なのですが(リンクをクリック!!)、中でも特に興味を引いたデータの一つは「連載経験のある漫画家がデビューまでにどれくらいの作品をどういったペースで作ったか」というものです。

(BLOGより抜粋)連載経験のある作家は、デビューまでの期間に、平均で約240ページの原稿を描いてるとなっています。ちなみに、そのうち半分の方が月に1作品という量産ペースでした。平均すると、それ位頑張る必要があるということですね。30ページの作品で言うと8本描く必要があるということです。新人には結構な本数です。トキワ荘PJの新人漫画家入居期限は3年ですが、この間に240ページ描けるかどうかは、一つの基準かも知れません。

「連載経験がある漫画家」のデビュー前に書いた作品の平均数は240P、これはBLOGの記事から読み取るに8本相当の作品を描いていることに相当するようです。また、「連載経験がある漫画家」のデビュー前の作品を描き上げるペースは約半数(45%)が1か月に一本のペースという調査結果が出ています。これらはBLOGの中でも同じく菊池さんが纏められた「漫画家白書調査報告」というデータから参照している旨紹介されています。


こちらを熟読頂けると「プロとして活躍している漫画家のデビュー前の傾向」の実データが見られるわけですが、内訳は皆様で熟読頂くとして、結論としては以下のようなことを唱えられています。

いかがでしょうか。

先程もお話に上がったように「プロになれる人は1か月に1作品ペースで原稿を作成」しており「より沢山の原稿を、より早く描いている人の方がプロ漫画家になりやすい」と結論付けています。しかもそれはただ原稿を書けばいいというわけではないようです。

(BLOGより抜粋)根本的な話として、原稿を短い期間に沢山描く経験は新人作家にとって必須です。更に当たり前ですが、原稿をただ惰性で描くだけでは上手くはなりませんし、結果も出ません。トキワ荘PJでは、新人には原稿を沢山早く描く事を推奨していますが(デビュー済みの人にも)残念ながら1000ページ描いても、漫然と描いて来てしまったため、どうしてもプロになれない人間も、稀に見てきました。

十分に発表するに値するクオリティのものを描く、完成させる、というのが大前提にあるということが書かれています。

で、ですよ。

このデータを「漫画家」の話でしょ、って一蹴するのは簡単だと思うんです。でも、これ同じ表現者の「プロ」になる人の傾向が明確に出ているデータなんですよね。参考にしない手はなくないですか?「プロ」を目指している皆様にとって。

更に言うと、僕も色んな業界の方を相手に仕事をしてきていますが、所謂「プロの条件」の一つは「仕事のクオリティが一定以上で尚且つスピードが早い」ことであることは間違いありません。これはどの業界においても共通で言える事だと思います。

つまり、より早く、よりクオリティ高く仕上げる事が出来る人間がプロとしての階段を昇っていくのであり、そのペースの基準は「一か月に1本」というのは体感的にもとてもしっくりくるものがあります。

というわけで。菊池さんのデータを通じてなんとなく私なりの答えが出てきました。まずは「デビューをする前」だという前提で「ネタはたくさん作るべき」という立場に立ちます。何故なら、その方が「プロになりやすい傾向」にあるというのが推測するに十分だからです。

そして、そのネタは全てが自分達が考えられる最高のものを「月に1度のペースで『完成』させる」べきであり、「目指すのはネタ6本以内(半年)でプロデビューを決める」というところです。

なんとなく、僕が直感的に感じていたこととニアリーな答えになったので自分としては腑に落ちてはいるのですが…。



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