浜野さんの話

皆さん、こんにちは。フリーでプランナーをやってます「はやし」と申します。こちらのnoteでは私の仕事の中でも【タイタンの学校】というお笑い芸人を育てたり、お笑いの世界に学びたい人に学びを提供したりする仕事について書き綴っています。

さて。春です。

今年もタイタンの学校から受講生が旅立っていくシーズンとなりました。今年は設立3年目なので3期生の修了ということになります。3期生はお笑いを学ぶ芸人コースの方達もお笑いの世界に学びたいという一般コースの方達も大変優秀で、結果から言うと芸人コースは18組中11組が株式会社タイタンとの所属(預かり)契約のテーブルに座る事となり、一般コースからも動画コンペでの入賞など1年で大きな成果を上げることが出来ました。

今日は個人的に感慨深かったエピソードを一つ書かせてください。

関係者には大変有名な方で「浜野さん」という40代の方がいらっしゃいます。この浜野さん、色んな事務所が主催する芸人の養成所を渡り歩いているらしいのですが、何故かこの「タイタンの学校」を大変気に入ってしまったようで、なんと立ち上げから3年間通い続けて下さっているのです。

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(いつもヨレヨレシャツを着ている浜野さん)

じゃあこの浜野さんが期待が出来るホープかと言えばそんなことは全くなく、まあ2年間やってきて”箸にも棒にも掛からない”状況で、それだけじゃなくて何ならあまりクラスに馴染めてないんじゃないかと思わせるくらいちょっと浮いてた方でした。

それだけでなくここで書けないような問題行動をいくつか起こしているのを運営事務局は掴んでいます。浜野さん、僕らが知らないと思ってたら大間違いですよ!大事になってないから言わないだけで泳がせてるだけですからね!!

そんな問題児の浜野さんですが、そうは言っても3年間通ってくれてるわけです。根はまじめな人なんです。しかも1期から通してほぼ皆勤賞。講義の参加態度は必ずしもいいとは言えませんが、僕らが提供するカリキュラムをちゃんと受け続けてくれているのです。根はまじめな人なんです、きっと。恐らく。そうであってほしい。

感染症対策もあって6月から開校した「タイタンの学校」。3か月ほどした9月くらいだったでしょうか。

僕は浜野さんと向き合う覚悟をほんの少しだけ決めました。たぶん浜野さんはこのまま放っておいてもタイタンに所属する事は出来ない、と肌感的に感じて取っていてそれが僕的にはどうにも自分の中で解釈出来なかったんです。

僕は1年間のカリキュラムを受ければタイタンの所属として選んで貰えるだけの十分な力をつけることが出来るという要綱を作ることが理想だと思っています。勿論個人差があるので1年間で全員が各講師の先生から全てを習得していくことが出来るかというとそれはまた別問題ではあるのですが、とはいえ理想はそこです。芸人コースで言えば年間200コマ以上の講義、時間にして400時間程度の勉強を行うわけです。この時間をいかに使って芸人として生きていく素養を身につけていくかを考えて行くわけです。

浜野さんは3周目に突入しました。

タイタンの学校は年齢の制限枠も広くとっていて、それは年齢は、もちろん若い人の方が有利ではあるけれども、そこまで関係ないというスタンスに立っており、浜野さんが所属できないのは年齢のせいではないのです。

なるほど。
そうなると責任は僕(達)です。

まずは浜野さんを捕まえて学校内の態度を改めるように強い言葉で言いました。年配者に向かってそんなことをいうのも本当にアレです。僕も相当に狂ってるなと思います。でも彼の目指すところと僕の目指すところが同じであれば、僕なりの意見をちゃんと伝わるように伝えないとダメだと思い、失礼を承知で幾度となく伝えました。

加えて彼にとってラッキーだったのは3期で見つけることが出来た珍堂さんという相方です。この同年代の女性の相方は社会経験もありとてもしっかりされた方で、僕以上に浜野さんのことを𠮟咤激励し続けてくれました。

珍道さんは自分の常識で浜野さんの芸人としての破天荒さのようなものを縛ってしまっていいのかという事を悩んでらっしゃった時期もあったようですが、僕が全否定しておきました。浜野さんの場合破天荒ではなく”ただダメ”なだけなので珍道さんがちゃんと言ってくれないといけません、と。

そうするとどうでしょう。根がマジメだという設定になっている浜野さんはほんのちょっとだけ変わってきたように思えます。本当にほんのちょっとだけですが、それは小さな小さな、大きな変化でした。

ネタについても極力彼らのネタを見れるように時間を取りました。最初は支離滅裂なネタでこれをどう形にするのか本当に苦慮しましたが、その中でも彼らが必死で考え続けて、苦しんで、生み出してきたものから奇跡的に光るものが出てき始めました。

そうして作ったネタで挑んだ最後のライブ。

ウケた・・・。
あの浜野さんがウケた・・・。

箸にも棒にも掛からぬ状態だった浜野さんがウケたというのは本当に奇跡みたいなことです。3年やって初めてのことです。安井、見てるか?あの浜野さんがウケてるぞ!

そんなこんなで、その後も色々紆余曲折があり一筋縄でいかなかったことは間違いないのですが、3年通って彼は3期生の所属(預かり)候補としてノミネートすることが出来たのです。

でも彼にとっての戦いはここからです。学校はみんなのためにサポートしてくれるけれども、プロになったら自分ひとり、自分の腕1つで戦っていかなければなりません。

タイタンに所属(預かり)して今後頑張っていくのか、それともそうじゃないのか。浜野さんの今後も凄く楽しみです。


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