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エール

なんと静かなクリスマスだろうか。
昼から複数のミーティングを終えると、気づけば日は傾き、いつも通りの夜がやってくる。去年もその前も、Dream Trainでのクリスマスパーティーに参加したのだが、今年はケーキを頬張ることも子どもたちの笑顔もなく、家でじっとおとなしく。オンラインレッスン用のソルフェージュ課題を淡々とこなしていく。

前日に近所で強盗事件が発生したこともあり、心配してくれたスタッフから、施錠を厳重にとの指示を受けた。
状況的に「ホーム・アローン」気分へ突入。さて、何を仕掛けようかと思い巡らせた3秒後、セッティングした罠に自ら引っかかる自信しかないことに気づき、すぐさま中止にした。

統計上、ここ数日間の陽性率は低下を続けている。しかし、クリスマスの高揚による人出を抑止するためなのか、ヤンゴンの有名な公園や、湖周りのウォーキングスポットはついぞ最近閉鎖となった。
この経緯には様々な憶測が飛んでいるものの、いずれにせよ、このまま押さえ込み切れるかどうか。1つの節目と見ることは可能だろう。

イギリスの報道の急転ぶりもすごい。
購読しているイギリスの日刊紙The Guardianでは、ワクチンの接種が開始された辺りから新型コロナの報道は減り、話題の中心はBrexitへと移っていった。もはや新型コロナは終結したかのような雰囲気が漂い始めた途端、変異株の出現により、クリスマス前のロックダウンとフライトのブロック、不安を訴え始める医療者らの声が紙面を覆うようになっていった。

さらに驚くのは、当該地区の住民たちがロックダウン施行前に移動を始めたり、措置反対と称して暴徒化することだ。
すでに6万人を超える死亡者が出ているにもかかわらず、これなのか…。高水準の公衆衛生大学院と、世界に冠たる(と少なくとも自国民は感じている)医療行政システム・NHSを持ちながらこの有様。ここで1年間学んだ者として、非常に複雑な思いが去来する。

同じような事態はアメリカでも起きているとのこと。
キリスト教圏におけるクリスマスの重要性は知っているつもりだが、国内でこれだけの犠牲者を出しながらもなお、譲れないものなのか。改めて、異文化理解の難しさを痛感する。

そんな中でも、ホッとすることが2つ。
1つは、方々から届く贈り物。以前、こちらでボランティアをしていた方が送ってくださった、日本感溢るる品々に泣かされたり、日本への帰任に合わせて物資を寄付してくださる方がいたりと、ほんわかした気分に包まれた。

2つ目は、平原綾香さんからの応援メッセージ。リレー形式でつないでいくエールの中で、Dream Trainへ言葉をくださった。

思えば、2020年は平原さんとの出会いから始まった。
その大半が沈滞ムードで覆われることになった今年にあって、やわらかで穏やかな光輝を放つこのご縁は、ただただ眩しい。子どもたちにとって、本当に大きな存在になってくださっている。

そう、災禍の中にあっても、こんな風に思ってくださる方がいる。年の瀬の振り返りに、しみじみとその思いの深さへ感謝の念を抱く。

『3月のライオン』アニメ版の主題歌、『フラッグを立てろ』を聴きながら、そのエールを背に、新年を迎える肚をくくった。

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