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清水書院出版「つなぐ世界史」を読んで

私は、学生時代、科目では世界史が好きでした。
自宅に地球儀があり、それを眺めながら、国の位置を確かめ、首都を覚えるのも楽しみでした。

中学の頃、図書館に、世界の国々のことを書いた全10巻ほどの本があり、少しずつ借りて読みました。
図書司書の方に、「とても熱心ね。その本、みんな読んだのね。」と、明るい笑顔で言われたことを、今でも覚えています。

そんなことがあってか、生涯を通じ、世界の歴史や地理に関心がありました。
ウィリアム・H・マクニールの「世界史」が愛読書で、ときどき読み返しています。

先月、図書館で、清水書院から出版されている、「つなぐ世界史1、古代・中世」「同2、近世」、「同3、近現代/SDGsの歴史的文脈」という3冊の本を見つけました。
高校の学習指導要領が変わり、「歴史総合」という科目が誕生したことは知ってました。
この3冊はそれを踏まえ、一般の人々に世界と日本のつながり、世界と自分とのつながりを考えていただく本なのかと感じました。
読み終えて、簡単ですが、以下の3点に絞って感想といたします。


世紀ごとのくくりで、世界を俯瞰する

この本は、世紀ごとの章を設けてあり、章ごとにその世紀の世界地図が載っています。
当時のヨーロッパ、中東、インド、中国、日本の国名が書かれています。
おかげで、「ヨーロッパの史実を読んでいるとき、その時中国はどうだったか?」などと、思いを巡らさなくてすみます。
各章では、まず、その世紀の概説があり、その後で、その世紀の世界に影響を与えた出来事、その出来事が日本をどう変えていったかを述べています。自分の関心のある章から読むこともできます。

18世紀の章に、「太平洋捕鯨時代の日本」があります。
そこに中浜万次郎(ジョン万次郎)のことが載ってました。
私は、中学の英語の教科書に万次郎の生涯を題材にしたものがあったり、万次郎のことを書いた小説を読んだことがありました。

西洋の先進国は産業革命が進み、クジラを重要な経済資材としていたこと。
主な捕鯨場が太平洋と中心となっていたこと。
アメリカが太平洋進出図り、捕鯨船寄港のため、他国に港の開放を求めていいたこと。
アメリカの船が日本海沿岸に往来していたこと。
日本は、鎖国政策を見直し、世界情勢を把握しようとしていたこと。

そんな歴史的背景の中に、万次郎は生きていました。
万次郎の乗っていた船は難破し、アメリカ船に助けられ、
日本に無事帰国し、通訳として江戸幕府に重用されました。
万次郎の人生を、世界の歴史の中で、重層的に理解できました。

教科書に乗っていなかった史実

この本を読んでいると、中学や高校の教科書にあまり記述されてなかった史実に気づかされます。
17世紀の世界の章にある「海賊の黄金時代」が一つの例です。
海賊は映画等でお馴染みですが、活躍した時代背景は知りませんでした。
18世紀の世界の章の、「北方世界を結ぶ交易民アイヌ」も、
教科書にはあまり詳しくは載っていなかったと記憶しています。

私は、大学時代に北海道に旅行に行きました。
JRの発行した20日間無制限で利用できる周遊券を利用して、
ユースホステルに泊まりながら、道内を観光しました。
アイヌに関する歴史館に行ったことを覚えています。
そんなこともあり、関心を持って読み進めました。

日本が鎖国の時代に、アイヌは、北方で、清朝、ロシア、日本を行き来し交易をしていた、というのです。
中国、アムール川下流域、樺太、蝦夷地、松前藩というルートです。
江戸時代、長崎の出島以外に、アイヌを通じ、国交のない中国との交流があったのです。

しかし、江戸時代後期、清朝は国力が衰え、ロシアが日本に接近してくる。
江戸幕府も、北方周辺が、国境として重要になりました。
自由で、豊かな交易の民であったアイヌは、世界史の大きな波に押し寄せてしまったのです。

考え直されたこと

私は、中学・高校時代に、日本史を学び、
江戸幕府の鎖国政策は、日本の近代化を遅らせることになり、
幕末には、西洋の先進国に無理やり開国を迫られ、不平等条約結ばれた、
というように理解していました。

しかし、アジアの東側、極東にある日本はむしろ鎖国することで、
国内統一された平和な時代を持つことができ、国内経済が発展し、成熟した文化が育まれ、
士農工商の身分社会ではあったが、近代に向けた人材の育成がされた、と理解できる、との記述がありました。
幕末には、西洋事情に触れ、対外実務に長けた人材がおり、
中国でのアヘン戦争とその敗北を知り、開国に向け準備を進めることができたのです。

歴史上の事実に対し、新しい視点が生まれ、常に検討され、再考されている。
この本を読み、そう感じました。










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