さくらの深化する哲学紀行:構造と超越から制作へ



## 15日目:パリ - レヴィ=ストロースの構造主義との出会い

予定を変更し、レヴィ=ストロースの足跡を追うことに。コレージュ・ド・フランスを訪れる。

「野生の思考は、驚くほど論理的で体系的だ」というレヴィ=ストロースの言葉が響く。

ピエール教授と議論。「構造主義は、文化の多様性の中に普遍的なパターンを見出そうとしたのです」

パリの街並みを眺めながら、都市の構造と人々の行動パターンの関係性を考察。日常の中に潜む「構造」を意識し始める。

## 18日目:ニーム - レヴィ=ストロースの『悲しき熱帯』を追体験

レヴィ=ストロースが影響を受けた南仏の風景を訪れる。ニームのローマ遺跡を前に、文化の重層性を感じる。

「どの文化も、他の文化との関係の中でのみ理解できる」

遺跡を歩きながら、ピエール教授と対話。「文化は常に他者との関係の中で形成されるのですね」

古代と現代が交錯する街並みを見ながら、時間軸を超えた文化の対話を想像する。

## 21日目:マルセイユ - バタイユの『エロティシズム』を巡って

バタイユの思想に触れるため、再びマルセイユへ。港町の喧騒の中に、バタイユの言う「過剰」を感じる。

「エロティシズムは、存在の連続性への郷愁だ」

夜のカバレーを訪れ、ピエール教授と議論。「日常の秩序を破壊することで、かえって生の本質に触れるのかもしれません」

夜の街を歩きながら、秩序と無秩序、聖と俗の境界線上にある人間の姿を観察。

## 24日目:ラスコー洞窟付近 - 芸術と超越性

バタイユが深く影響を受けたラスコー洞窟の複製を訪れる。先史時代の芸術に圧倒される。

「芸術は、人間が動物性を超越しようとする試みだ」

洞窟絵画を前に、ピエール教授と対話。「表現することは、すでに日常を超越する行為なのかもしれません」

夕暮れ時、丘の上から風景を眺めながら、芸術創造の根源的衝動について思いを巡らせる。

## 27日目:パリ - 構造と超越の融合

パリに戻り、レヴィ=ストロースとバタイユの思想を統合しようと試みる。ポンピドゥーセンターで現代アートに触れる。

「構造は秩序を、超越は無秩序を表す。しかし、両者は相補的ではないか」

ピエール教授との最後の対話。「さくらさん、あなたの思索は新しい地平に向かっていますね」

セーヌ川沿いを歩きながら、構造と超越、日常と非日常の間にある創造的可能性を感じ始める。

## 28日目:制作論的転回への気づき

旅の最終日、モンマルトルの丘で朝日を迎える。これまでの旅を振り返り、新たな洞察が生まれる。

「哲学は単なる思考ではない。それは世界との対話であり、創造の行為だ」

ピエール教授への別れの言葉。「教授、この旅で私は哲学を『する』ことを学びました」

エッフェル塔を背に、パリの街を見下ろしながら、自分の中で起こった変化を感じ取る。

思索は机上のものではなく、日々の生活の中で実践され、創造されるものだと気づく。レヴィ=ストロースの構造主義的視点とバタイユの超越的視点が、日常的な「制作」の中で融合する可能性を見出す。

「私たちは日々の行為を通じて、絶えず世界を再構築し、意味を創造している」

この気づきが、さくらの中で制作論的転回として結実する。哲学は単なる観察や分析ではなく、世界との積極的な対話と創造のプロセスなのだと。

パリを後にする飛行機の中で、さくらは新たな決意を固める。
日常のあらゆる瞬間を、世界との対話と創造の機会として捉え直すこと。
そして、この旅で得た洞察を、具体的な実践へと昇華させていくこと。

帰国後の生活が、どのような「作品」となるのか。
期待と創造的衝動に満ちた気持ちで、さくらは故郷へと飛び立つ。


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