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できないと言えなかった夢を見た



 戦いと癒し。
 理想と現実。

「力を抜くことは意識しないとできませんからね」

 義務と権利。
 実績と要求。

「これをあげるから許して下さい」
「これだけしたんだからいいでしょ」

 足りない。まだまだ足りない。
 もっと頑張らなきゃ。もっと見合うように。

「ガチガチじゃないですか」
「力を抜いて」

 理想と現実。
 いや待てよそいつ誰だ。

「頑張れちゃう人がいるんです。そういう人が一番危ないんです」
 自分を赦すことが、もっとも難しい。



「いい、行け」
 コーチ、こっち女ダブだよ。男ダブ相手にキツくない?
「いい、行け」
 コーチ、私は。
 女の子だけど大丈夫?
「いいから」
 もう誰も、私を非力な女性として特別扱いしないと思っても、
「行け」
 こんな私でも、ありのままの自分でここに立っていてもいいと、
 正式にこの競技の傍にいることを赦してもらえますか?

 戦いと癒し。
 モンハンとノンバーバルコミュニケーション。
 理想と現実。
 数ヶ月に一度の非日常と、毎週の鍛錬。
 義務と権利。実績と要求。
 時間外交えてこれだけ働いたんだから、交代で休みをとりましょう。
 時間が空いたなら頑張って、頑張って磨く。そうして結局

 私はどうなりたかったんだろう。どうしたかったんだろう。

 ただラリーがしたくて、高い弾道の、けれどもピンと糸の張るような、釣り合うような。
 でも試合が怖くて、サーブを打ちたくなくて、そんなコリを潰すことで、自信がつき、健康体に近づいたのなら、私は

 ただラリーがしたいだけの、融通の利かない、なんちゃって中級が、
 ただの女の子に戻ってもいいだろうか。











なんてつぶやく夢を見た。





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