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凶器は真綿【feat.玉ちゃん】



 誤解があってはいけないと思って追記する。
〈研ぎ澄ます感覚故〉その主語はあくまで打点に集約されるもので、玉ちゃん自身、決して視野が狭い訳ではない。以前に比べて近頃特に相手に合わせたテニスをするようになった。例をあげよう。

 身近に手本があった時、それを活かすことのできる人がいる。相似。それぞれに得意があって、別にどちらが大きい訳ではない。ここで必要になるのは「相手と自分の間に共通項を見つける力」。そうして自分自身の形を少しだけいじる。

 玉ちゃんはよく見てる。私が攻撃的なロブを打った時のひここの動き。よく見てる。だから玉ちゃんは私と組んだ時、ひここの動きをまるっとトレースできる。だからひここを味方につけた時のロブがどれだけの効力を発揮するかを知ってる。
 それは純粋な理解。ただ、理解ありとて持ち合わせがなければないも同然。その点玉ちゃんには備わっている。ドンピシャで動き出した時、きちんと仕留める力が。きちんとロブを打てる技術が。
 共通項。自分と相手を繋ぐもの。あれなら自分もできるかもしれない。全部が全部ではなく、高さを変えたり、スイングの速さを変えたり。そうして真ん中だけ残して調整する。
 やさしい玉ちゃんは、私とラリーする時、楽しく打てるように高さを調整してくれる。だから私の苦手なトップスピンのロブはいつまで経っても練習「できない」。そう考えれば、果たして玉ちゃんは本当にやさしいのだろうか。

 一方で、じゃあ偶然ではなく、その後分かっていてロブで勝負を仕掛けてきた玉ちゃんに手も足も出ないかというと必ずしもそうではなく、こちらとしてもきちんと分かってもらう必要がある。

 本来の私の輪郭はそこじゃない。

 戦術の話になるから詳しくは書けないけれど、私のロブは性質別で3種類。先にも書いたが、ひここさえ前を張っていなければトップスピン相手だろうと真っ直ぐ前に力を放出できる。逆を言うとひここがいるいないで勝負の条件自体が変わってくる。
 ベースラインギリギリに落とせるトップスピンは正しい。けれどボール一個分アウトした玉ちゃんのロブ、おかしいと思ったその違和感もまた正しい。
 でも今はまだその根に気づかなくていい。






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