見出し画像

姶良丹沢火山灰の再現シミュレーション

姶良丹沢火山灰は、3万年前に鹿児島湾最奥部にカルデラをつくった入戸(いと)火砕流から空高く舞い上がり、北海道を除く日本列島とその近隣に降り積もった火山灰である。

画像1

厚さ5センチの等層厚線を細いオレンジで示した。風下の南東方向には2400キロまで、風上の北西方向には600キロまで、分布軸と直行方向には1200キロまで、届いた。

降り積もった火山灰の量は、上記楕円の面積に厚さ5センチを乗じただけで3000億トンに達する。入戸火砕流まで含めれば、10倍の3兆トンに達するだろう。オレンジの塗りつぶしは入戸火砕流、南東方向に延びる太いオレンジは直前の大隅軽石の50センチ等厚線である。

上空の風速が時速100キロだったとして、この姶良丹沢火山灰雲の移動を再現してみよう。風向きは大隅軽石の分布軸を採用した。

画像2

入戸火砕流は、100キロを1時間で走り抜けて宮崎まで届いた。できあがった半径100キロの火砕流パンケーキは高温だから、その上に大規模な上昇気流が発生して火山灰が舞い上がり、きのこ雲になって四方八方に広がった。

その拡大速度が、初めの2時間は平均時速400キロだったとする。2時間できのこ雲は800キロ拡大するが、風上では時速100キロの風で200キロ押し戻されて600キロに留まる。風下は逆に200キロ上乗せされて1000キロだ。八丈島まで届く。

4時間までの平均拡大速度は時速250キロだったとする。きのこ雲の半径は1000キロだが、風上では400キロ押し戻されて600キロ地点で停滞する。風下は400キロ上乗せされて1400キロまで広がる。小笠原父島まで届く。

12時間までの平均拡大速度は時速100キロだったとする。きのこ雲の半径は1200キロだが、風上では1200キロ押し戻されてちょうど姶良カルデラの上に戻って来る。風下は1200キロ上乗せされて2400キロまで広がる。南鳥島まで届く。

上で仮定した平均拡大速度を実現する毎時の速度は、たとえば以下である。

画像4

結論

入戸火砕流の上に立ち昇った姶良丹沢火山灰は、半日程度で3000キロ*2400キロの領域に広がった。火山灰粒子が空中を降下するに要する時間も半日程度だから、姶良丹沢火山灰の堆積にかかった時間は1日程度である。各地の姶良丹沢火山灰で下が粗く上が細かい単調な正級化層理が観察できることも、短時間の爆発的拡大のあと上層風に流されて火山灰雲が移動したとするこのモデルを支持している。

画像3

姶良カルデラから600キロ離れた奈良県都祁村並松に露出する姶良丹沢火山灰に見られる正級化層理。

※入戸火砕流のようなカルデラ破局噴火については、2016年4月にiRONNAに書いた記事をお読みください。

(扉写真は八丈島のスコリア層のあいだに挟まれる姶良丹沢火山灰、白色)


アニメーションにしました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?