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伊豆大室山から流れ広がった溶岩

伊豆半島の伊東市にある大室山は、4100年前に噴火してできたスコリア丘である。スコリア丘としては大型で、底径1000メートル、高さ250メートルある。麓に広がる伊豆高原は、そのとき流れ出た溶岩がつくったなだらかな土地である。小起伏をなす緩斜面はいま、おしゃれな別荘地として利用されている。

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大室山は、マグマのしぶきを噴き上げるストロンボリ式噴火が何か月も続いてこの姿になった。中央に開いた大きな火口とは別の小さな火口が南山腹上部に見える。

しかし溶岩はこれらの火口からではなく、裾野の3ヵ所から流れ出した。大室山の右側に、もっとも大量の溶岩を流出したシャボテン公園の高まりが見えている。

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伊豆高原をつくった溶岩の厚さは10メートルほどだ。旧地表の低所を選んで広がった。南東部では、旧地表が窓のように露出する小さなキプカがいくつも残った

指のように海に突き出しているのは、流れ広がった溶岩の前面から割れ目に沿って海水が侵入するのを許したからだ。海水に触れた溶岩は効果的に破砕されて、その後に続いた波食によって運び去られた。割れ目と割れ目の間を前進した高温溶岩はひとつながりの岩体として冷え固まり、波食に抗していまに残る。4100年前の海面はいまとあまり変わらない高さにあったようだ。ここはイガイガ根と言う。駐車場が整備されていて観察しやすい。

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波で削られた溶岩の断面をよく観察すると、海面付近に細かな柱状節理が見える。溶岩の底面は海面のすぐ下にあるのだろう(が、見えていない)。高温溶岩が底面から冷えるにしたがって柱状節理が上に向かって徐々に生えていった。

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柱状節理は下だけにある。その上の溶岩はゆっくり冷えたので塊状になっている。溶岩によっては塊状部分の上にも柱状節理ができることもあるが、伊豆高原の溶岩にそれはない。

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海に突き出た大淀小淀では、柱状節理の六角断面のくぼみにできた潮だまりで磯遊びができる。右側にある対島(たじま)の滝は、伊豆高原の溶岩がせき止めた湖から水を抜いて水田にするためにつくった人工の川だ。伊豆公園駅から遊歩道で海岸に向かうと、意外なほど豊富な水量を持つこの人工河川に沿ってかなりの傾斜を一気に下る。

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