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御嶽山の噴火警戒レベルは2だった。

気象庁がオウンゴールした。

2022年7月に出た松本地裁判決は、2014年9月10日に52回、11日に85回の地震を数えて、14日に低周波地震を観測しても、御嶽山の噴火警戒レベルを気象庁が1に留めたのは正当だったとした。しかし気象庁は、2022年4月に改定した御嶽山噴火警戒レベル表のなかで、2014年9月の地震増と低周波地震だけでレベル2の条件を満たしたと書いていたことが判明した。

御嶽山噴火警戒レベル表(2022年4月改定)
2018年9月改定の御嶽山噴火警戒レベル表では、2014年9月の地震増・低周波地震をレベル2の過去事例としてあげていなかった。

松本地裁判決は、地震増と低周波地震だけではレベル2の条件を満たさなかったとし、25日に山体膨張を疑わせるデータを気象庁が内部で議論したときになって初めてレベル2に上げなかったのは不作為で違法だったとした。しかし、被告の気象庁自身が、低周波地震を観測した9月14日時点でレベル2だったと2022年4月に認めていた。原告と被告のあいだに争点はもはや存在しない。

ただし松本地裁判決は、25日にレベル2にしても27日噴火までに立入規制が間に合わなかったとした。しかし、それは日本の噴火防災行政を知らないひとの言である。御嶽山がレベル2になれば、地元市町村はただちに1キロ規制を敷く。山頂の山小屋へ連絡して登山者を下山させる。ヘリを飛ばして上空から拡声器で登山者に下山を呼びかけることまでする。翌朝、登山道入口に立入禁止看板を据える。これが、噴火警戒レベルの上げ下げを繰り返してきた浅間山で実際に行われてきたことだ。噴火警戒レベルは、こういう対応をする事前同意を地元市町村から得て作成運用されている。どこの火山でもそのはずだ。

木曽町(2023年10月2日)

9月14日に低周波地震を観測したとき気象庁が正しくレベル2にしていれば、その日のうちに、遅くとも翌朝までに立入禁止処置がなされ、少なくとも2週間は維持された。もし25日に山体膨張の疑いが生じたのならレベル2が解除されることはありえなかった。27日噴火のときも立入禁止が継続していて御嶽山頂付近に登山者はひとりもいなかったはずだ。あの噴火で誰も死ぬことはなかった。悔やんでも悔やみきれない。

(扉写真は2023年8月の地獄谷火口と剣ヶ峰)

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