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9年運営してきたfeast事業を譲渡しました

9年に渡って運営してきたfeast事業を譲渡しました。
feastを通して沢山のお客様と出会い多くの経験をさせていただき、もちろん辛いことやうまくいかないことも色々ありましたが、今後のfeastに生かしたい学びがたくさんあったので、新しいfeastの一歩に向けて感謝の気持ちと共に振り返ってみたいと思います。

feastのはじまり

今日はfeastの誕生日です。

feastは2014年の7月にスタートしたので、今月でなんと10年目になります。
当時はどの下着屋さんに行ってもAカップのブラがほとんど置いておらず、自分のサイズがないということは自分のような体型の人がいないことにされているみたいでとても悲しい思いをしていました。しかも、今でこそあまり聞かなくなった気がしますが「貧乳」というワードも至る所で使われており、胸が小さいことはまるで女ではないと言われているようで、クラスの人からも「まな板」と馬鹿にされて表面ではおちゃらけてましたが、心は傷ついていました。

そんな中「胸が小さくても、自由に下着を選びたい」という熱量だけで下着のデザインをして、当時仲良かったコスプレ友達にサンプル制作をしてもらい、また別の友人にモデルとカメラをお願いして撮影をしました。その写真をSNSに掲載したところあれよあれよと拡散されていき、多くの方から「注文したいです」「どこで買えるんですか」と問い合わせをいただいたき正直、すごく驚きました。なぜなら、それまで世界に胸が小さくてブラのサイズがないのは私だけなんじゃないかとさえ思うような孤独を味わっていたのに、インターネットの中には自分と同じ悩みを持つ人がたくさんいたからです。

ただ、喜びも束の間。そもそも身内で楽しむくらいの気持ちで作ったものだったので、そんな沢山の人にお届けすることは考えておらずめちゃくちゃ焦りました。

元々想定したいた販売数は各デザイン20着ほどだったのですが、結局2型で500件近いの注文をいただき「この数は手作りでは対応できない…!」となりそこから焦って工場探しを始めました。

本来は撮影用サンプル段階から実際の製造環境で作る方が間違いないですし、受注を取る時点で工場が決まっていないことなんてまずないので、本当に最初はグダグダでした。その結果、商品のクオリティは正直低くなってしまいましたし、当時のお客様にはとても申し訳ないことをしてしまったと思っています。

どうやって作っていたのか

現在に至るまで、多くの商品は都内の小さな町工場に縫製依頼をしていました。

ここは、大量の注文にパニクっている私をTwitterで見かけたレース会社の人がご紹介下さってからのお付き合いです。実は、国内で新規の製造依頼を受けている工場というのが本当に少なく、理由としては大手企業は自社工場を持っていることが多く、小規模な下着メーカーというものがそもそも少ないため多くが工場を閉じてしまっていることです。また、feastの下着というのはいわゆるワイヤーブラとは構造が違い、どちらかというとTシャツやキャミソールの製造背景に近く、かつゴムを使ってギャザー(フリフリ)を寄せる必要があるので対応できる工場が限定的なのもあります。

私自身、それまで工場に下着製造の指示出しをしたことなんかもちろんないので、工場長と一緒に手探りでやっていき、なんとか少しずつ形に、自分の思い描いているものになっていきました。

資材の高騰とレース不足

そんなこんなでぼちぼち製造数を増やしていたのですが、大きく2つの壁にぶつかりました。

まずは、プライシングや経営的側面。
そもそも私は何もわからないままアパレル業界に入ってしまったので、どのように原価計算をしたらいいかもわからず、やりたいことをやりたいようにやっていたのでSKU(デザイン数)ばかりが増えて1SKUあたりの生産量を増やすことができませんでした。さらに、生産のあれこれを理解していないからこそ、普通はやらないような細かいデザインをリクエストして工賃が上がるといったことも。

中でも、原価計算が正しくできておらず、本来販売するのが難しい上代(販売価格)にしてしまっていたことは致命的で、一度販売してしまっている以上値上げも簡単にはできず売れているけど利益が出ない、自分の給与が出せないという状況が続きました。

次に、原材料高騰です。

みなさまも直近で物価の上昇を感じられているかもしれませんが、下着ブランドを10年近くもやっているとその間に資材の値上がりがあったり、工賃も上がったりもしました。

最初こそ上下セットで6000円くらいでしたが、あれよあれよと上下8000円頂かないとどうにもやっていけないという状態になってきます。市販品だと1000-2000円の商品も見かけるので「なんでこんな高いんだ?」と思う方もいるかもしれませんが、本当にギリギリなんですね・・・。

そんなこともあり、初期feastは基本国内製造でやっていたのですが、水着の国外生産を皮切りに、デザインによっては国外製造も混ぜて原価のコントロールをしていました。それでも努力虚しく、国内製造の商品であれば販売価格で10000円はいただきたいくらいに原価が上がり、国外製造でなんとか6000-7000円に収められるかなといった具合になってきました。心苦しく思いつつ、その中で私が強く感じたことがあります。

本当に届けたい商品はなにか、クオリティの高さとは何か

feast事業を9年に渡って運営している中で、feastの下着が高いということは「胸が小さいというだけで、可愛い下着を買うのに高い金額を払わなければいけない状況を作っているのではないか」と感じました。

マジョリティのサイズであればそれこそ980円1980円で色々な下着の選択肢がある中から自由に選べますが、feastの下着は1万円近い…。私が目指したかったのは「胸が小さくても、自由に下着を選びたい」という過去の自分の悩みを解決するブランドだけど、自分は本当にそういうブランドにできているのか。

SKU数を減らして1アイテムで戦えば、feastみたいな小さなブランドでももっとコストを抑えて販売できたかもしれませんが、「胸が小さくても、自由に下着を選びたい」という気持ちを考えるとSKU数を減らすことはできませんでした。

SKU数は減らしたくない、でもどんな人でも買えるような価格帯も目指していきたいという、相反する2つの悩みの間で揺れていました。

事業譲渡についての詳細や今後

そのような悔しさ、はたまた無力感は2-3年前からあったのですが、ではどうやってそれを解決していくかと言われるとなかなか難しくずっと悩んでいました。そんな中、たまたまお世話になっていた士業の方を通じて「下着のOEM企業が自社でブランドを育てたいらしい」とご縁があり、株式会社ブルマーレという下着OEM会社にfeastの事業を譲渡し株式会社feastという会社をブルマーレ子会社として立ち上げることになりました。
長くやっていたブランドなので事業譲渡に対して躊躇があったのではと思われがちですが、私としてはこれまでずっと悩んできた中で「お客様により多くの商品をより適切な金額でお届けできるのであれば、どういう選択肢であれ前向きに進める」と決めていたので、すぐに、自信を持って意思決定ができました。

ブルマーレは誰でも知っているような大手ブランドのOEMを多くやっており、中国とミャンマーに自社工場を持っています。そのため、これまでできなかったモールドカップやワイヤーブラなどなど、様々な商品が製造できるようになりました。

販売価格もこれまでと比べて手頃になり、かつ縫製のクオリティや検品の厳しさも格段に上がりました。デザイナーもfeast時代と変わらず、生産背景はしっかりと、そして夢に見るほど願っていた商品クオリティのアップと販売価格の適正化の第一歩となりました。

今後予定している企画について

「胸が小さくても、自由に下着を選びたい」

私の思う自由というのは、世間体とかこうあるべきとかから解放された上で、当たり前に自分向けの選択肢があり、それを問題なく選べる状態だと思っています。

例えば、これまでfeastではノンワイヤーブラをメインに販売してきましたが、ノンワイヤーもワイヤーも人それぞれ好みがあるはずなので、本当はノンワイヤーもワイヤーも商品としてご提示すべきでした。

ブルマーレの仲間になることで、これまでやりたくてもやれてこなかったワイヤーブラに着手できたのは奇跡のような話で、実際以下のような商品を今年3月から販売しております。ただサイズを小さくしただけでなく、シンデレラバストの方に併せてパターン(型紙)を0から作っている特別な一着です。

そして、「胸が小さく"ても"、自由に下着を選びたい」と言いましたが、9年の間に胸の大きさに対しての悩みも社会全体として減ってきているような気がしますし、「胸が小さく"ても"」と卑下する必要も無くなってるんじゃないかなと思います。なので10年目のfeastとしては次のステージとして「着ていた方が、私らしい」を大切にして、ぴったりサイズなのは勿論、自己表現だったり自分を快適に解放する存在としての下着を作っていけたらと思います。

これまでのfeastと運営元こそ変わりますが、引き続き私も経営陣としておりますし、これまでのfeastの良かったところとこれまでできてこなかったこと、どちらも全力で取り組んで参ります。今後とも宜しくお願いいたします。


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