春侯爵詩片
むかし聖が
川に橋をかけようと
心魂を削り
身を粉にして
労働した
まわりには泥まみれの
多くの食うや食わずの人々がいて
銭は無くても
おそらく食べ物や水や
濁り酒を持ち寄って
そこら中に眠り
そこら中で暮らしながら
聖を扶けて
ついには橋がかかった
のだろう
一つのことを
実現しようと
ただ一人動き始める
やがて気の合う何人かで
図面を書いて
国に押しかけ
勉強会と称する
ああでもないこうでもないを
始める
嘲笑って消える者
裏切って金に走る者
巧妙にすべて奪う者
老いと病に倒れる者
世の無関心と無気力と
金銭と運の欠乏と
熱意の奔流と
あらゆる逆流に
その身をさらして
自ら橋となり
その深淵にかかるために
ありとあらゆる重みに堪えて
ありとあらゆる善を担保する
人柱のような人々の
集まる場所をつくりたい
むかしの人には 情けの中に知恵があった
今の人には知恵の中に謀りがあるので
小さな良いことでさえ成らない
■画像はヤフー、春の一日画像、行基画像より。
■『桜』河口恭吾を聞きながら。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?