見出し画像

『目覚めるアメリカ仏教』を読む2.参照:●『目覚めるアメリカ仏教』ケネス・タナカ(武蔵野大学名誉教授)著

“■仏教の認知度を高めるセレブたち          アメリカ社会におけるこのような仏教の浸透は、六〇年代以降、政治家、芸術家などの知識人、また起業家、ハリウッドの映画人やミュージシャンなどのセレブリティたちの一部が仏教に強い関心を持ったことと、それをマスコミが伝えてきた影響が大きい。
ハリウッドを取り巻く業界には、仏教徒、および仏教に共感するもの(仏教共感者)の数が多い。有名ところではスティーブン・セガール、オーランド・ブルーム、オリバー・ストーン、シャロン・ストーン、ケイト・ハドソンなど、そうそうたる名前が挙げられる。セガールはチベット仏教徒であり、日本で学んだ武道を基とし、多くのアクション映画に出演している。ブルームはSGI(創価学会インターナショナル)の会員であり、二枚目役者として人気を呼んでいる。またオリバー・ストーンはチベット仏教徒であり、そのきっかけは、自身が脚本・監督した映画『天と地』に登場した仏教徒の心の寛大さと強さに惹かれたからだという。女優のシャロン・ストーンは、友人のリチャード・ギアの紹介でチベット仏教に強い関心を持ち、チベット支援も積極的に行っている。
■リチャード・ギアとチベット仏教                ……例えば、今挙げた俳優のリチャード・ギア(一九四九~)は、一般のアメリカ人にとっては、ダライ・ラマに次いで有名な仏教徒である。ギアはダライ・ラマに師事し、チベット文化の支援を行っている。
彼と仏教の縁は、悩み多き二〇代に遡る。実存哲学の本をよく読んだそうだが、その際、あるチベット仏教の本に魅了され、仏教に興味を持ったのがきっかけである。最初、二四歳のとき臨済宗の佐々木承周老師の下で坐禅を始めたが、その五、六年後にダライ・ラマに出会い、チベット仏教徒としての道を歩むことを決意する。
一九八七年にはニューヨークにチベット文化の保存と促進のため設立された「チベット・ハウス」の創立者の一人となり、一九九一年の「国際チベット年」制定に向けた活動や、自身が立ち上げたイニシアティブス基金を中心にインド在住のチベット人の健康保険確保など、社会慈善事業も行ってきた。修行面でも、今でも毎日四〇分のメディテーションは欠かさず、仏教の勉強も続けているらしい。
慈善活動や仏教伝道を行う動機について問われた際、ギアはこう答えた。“最終的に、(私が行っていることは)皆のためです。それは、皆が苦悩から脱するまでは、誰も苦悩から脱せられていないということです。そうでしょう?それほど我々はつながっているのですよ。”
しかし、信念ゆえの言動でブーイングを受けたこともある。二〇〇一年の九・一一テロ事件直後、ニューヨークで行われたチャリティー・コンサートの際に、仏教で説く業(カルマ・行い)の因果応報の法則に従って、「加害者たちも苦しむことになるので、彼らへも哀れむ気持ちを向けるべきだ」という意見を表明し、聴衆の反感を買った。”

画像はナショナルジオグラフィックより。

■アメリカの新しい仏教興隆により、同じように数千年を経たユダヤ・キリスト教と仏教の一人一人の人間レベルの融合が始まっている。現在、世界を良くも悪くも突き動かしている西欧文明がもしも仏教精髄を導入できたならば、大袈裟でなく、地球文明が宇宙文明としての第一歩を踏み出すことになると思う。いかなる思想哲学、科学技術をリードしようと、他者への行為が自分に百数十%返ってくるという、単純極まりない真理をマスターしてエントロピーを制御する心を獲得しない限り、西欧文明は海賊文明にすぎない。この意味でリチャード・ギアのニューヨーク同時多発テロを引き起こしたもの達への祈りも必要というスピーチは正しい。もしも日本人仏教徒ならばその時、“テロを引き起こしたもの達は必ず地獄に堕ちます。そしてまたテロを引き起こすという地獄のカルマにより、次から次へと新しいテロが起こされます。私たちが仏陀の因縁解脱力(運命改造力)を祈り、彼らに回向することで彼らの魂を地獄から引き出し、テロの連鎖を断ち切りましょう!”とスピーチしたかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?