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エチュード 谷間の人々12.

初冬にしてはかなり強く翳りのない陽光の心地よさの中で、私は眠くなった。何かわからないが、少しこの異常な気配の中で、眠ってみたくなった。浦野が言う精霊との交感が起こりそうな静謐さがあると。                                                          「そうだ。少し眠れば、いろいろ出てくるから、お告げがあるかもな。ここはデルフォイ並みだからな。俺も随分たくさん見たよ。」そう言いつつ浦野がまず直接、土の上に仰向けに横になった。上空を飛びすぎてゆく雲の影がよぎるごとに、何かが舞い降りてきたように感じられた。峡谷を渡ってきた風が私の顔の上の草をなびかせる。 ひんやりとした、山の土に直接横たわることで、まだ強い陽ざしを浴びた身体が心地よく、私は山のほうを向いて草の上にひじ枕をした。今まで視界に入らなかった低木の間にもう一つの位相の山があり、私は目を閉じてそこに1軒の小人のプレハブ小屋をイメージした。私はプレハブに入り、山に向かった窓を開き、落ち着いた机と椅子、ベッドを置く。ドアに鍵をかけベッドに横になる。ベッドの横に犬が伏せていて私を見上げている。と思うと犬は窓を乗り越えて山の中に、何回もこちらを振り返りつつ、かけていってしまった。

(画像は"森PEACE  OF  FOREST"小林廉宜。世界文化社より。)


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