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冬大佐詩集

暮夜
部屋で
エンヤを聞いていると

数十年前この部屋から
春霞む山々を
皆で見ていた記憶が
よみがえってきた

皆詰め襟で
瞳には蒼い靄がかかり
確かにあの頃の私たちは
天使のように豪勢な
白銀のオーラをまとっていた

もう羽化した一人を除き
皆今は
闇の向こうで
一人きりになって
蛹になって
しぼんでいる

内に
冬の光を
凝縮しながら
おのが魂に穴を穿ち
凍えるような
冬の陽射しを
からっぽになった
青春がなみなみと詰め込まれていたボトルに
射しこませながら

そう
この部屋が
始まりだった



■画像はヤフー秋の夜画像より。

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