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春侯爵詩片


私の懐中には
使いこまれた
古い刀がある

一瞥さえも
許さず
秋霜苛烈に
愛の気配を
断ち切る刃が

かつて苦しみであり
痛みであったものが

胸の中で
凝り固まって
人を切る剣のようになって
弱々しい
おずおずとした
視線を寸断してしまう

もはやおそらく
花のように
ふくらむことのない
私の情愛は

切り込まれ
刈り込まれた
老木のように
立ち尽くす

あなたが
生まれ変わって
私の前に
現れきてくれるまでは

私の葉は茂らず
花はふくらまず
実は現れない

ひとふりの
古い刀を持ったまま
旅装をとかないで

春を内蔵して
深まりゆく冬



■画像はヤフー日輪画像より。

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