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『目覚めるアメリカ仏教』を読む4.参照:●『目覚めるアメリカ仏教』ケネス・タナカ(武蔵野大学名誉教授)著

“ビースティ・ボーイズの「菩薩の誓願」     九〇年代を代表するラップ・グループ「ビーズティ・ボーイズ」の中心メンバーであったアダム・ヤウク(一九六四∼二〇一二)は、彼がチベット仏教に改宗したかどうかは不明であるが、少なくとも仏教共感者であったことは確かだ。チベット解放運動を経済的に支援することで、亡命中のダライ・ラマの力となり、また中国政府にチベット内の人権を守るように訴えかけている。その資金作りのため、一九九六年にサンフランシスコで行われた「チベット解放コンサート」以降、数々のチャリティー・コンサートを全国的、世界的規模で行ってきた。

毎日、朝と夜に観想(visualization)という一種のメディテーションを実践し、それが作品にも反映されていたそうである。ビーズティ・ボーイズは白人ヒップ・ホップの草分けといわれ、多くのミュージシャンに影響を与えてきたが、ヤウクの仏教的な世界が最も表れた曲が一九九四年に彼が作曲作詞した「Bodhisattva Vow」(菩薩の誓願)というラップ・ソングである。この曲は、戦いや暴力に満ちた世界に生きる若者を念頭に置いて作られていて、非常に興味深い仏教の解釈もなされている。その詞の一部を紹介しよう。

誰かに侮辱され妨害されても

思い止まり、よく考えてから対応することにします。

そんな彼らも実際は不安であるはずなので、

この状況を自分が辛抱する機会として受け止めます。……

菩薩道とは、パワーに満ちていて、力強いものであり、

持続する内面の力となるのです。

他人は私と同じように大切であると見ることによって、

豊かな精神という幸せを求めます。


第三説で菩薩道が「パワーに満ちている」とあるのは、仏教の伝統的な表現からは程遠いが、力(パワー)が重要な若者の世界では心に通じるところがあるのであろう。しかし、「他人は私と同じように大切である」と次に歌っていることで、正しい菩薩精神が理解されていることがわかる。また、誰かに侮辱されたら、その相手のことを思い、即座に反撃するのではなく、考えてから対応し、その状況を辛抱し、自分が成長する機会に転換するという第二節は、仏教の真髄をよく捉えていると思われる。暴力が旺盛な若者文化の中でも、このように平和な仏教の教えが建設的な倫理観を促しているのは、仏教が新しい土地に合った形で蘇っていることの好例である。”

画像はナショナルジオグラフィックより。

■先程、この企画の序を投稿しつつ、序に書いた中国の精日族の若者たち(日本文化に憧憬を持ち、大日本帝国軍服を愛好する若者たち)や、京都八坂神社で着物姿で愉しむ若い中国人女性たちの、正反対の事象も当然あるはずだと気づいた。それは、日清戦争、第一次大戦、第二次大戦により大日本帝国により殺戮され、人体実験され、塗炭の苦しみを受けた無数の中国人たちもまた、不可思議な“輪廻転生クロッシング現象”により、日本人に転生輪廻している可能性だ。イアン・スティーブンソンによる膨大な転生事例研究やブライアン・ワイス博士の前世療法など。安易な理論化はできないが、精日族や着物を愛好する中国の若い女性たちが、前世に中国大陸で戦死したり、餓死した日本人の生まれ変わりだという可能性。真逆の生まれ変わりとして想定されるのは、前世で日本軍のために残虐悲惨な死を遂げた中国人の現代日本への生まれ変わりは、どのような事象となるだろうか?想像にあまりある、強烈な日本国及び日本人への憎悪と復讐の衝動を持つ日本人の大量発生だ。戦争のもたらす真に恐ろしい、継続する地獄の因だ。世界的にも突出する(キリスト教のような歯止めを持たない)堕胎中絶数に始まる、陰惨に深化する犯罪(いじめ、尊属殺人、快楽殺人、悪魔的殺人等々)の激増蔓延。

NHKの映像の世紀で、日本軍により破壊され瓦礫と化した都市を背景に撮影者を凝視する童児の壮絶な視線が忘れられない。この事象に対峙してこその日本仏教ではないのか。菩薩道は人類最強最高のパワーを人間に与えるものだから。

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