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春侯爵詩片

ものごころついて
このかた
ずっと

私は自分を
責め苛んで
きました

もっとたくさん
もっとはやく
もっと立派に
もっと激しく
もっと満たされたいと

自分なりに
生きる意味を考えて
自分なりに
道をつくって

友と
切磋しつつ
前後する
渡り鳥のように
それなりに
飛んで来ました

しかし
百年前の
祖先の時代のように
世界は暗闇に
閉ざされてしまい

私の中でも
平凡さゆえの失敗が
積み重なるにつれ

進んで行くことに
冒険の喜びは
湧かなくなりつつ
ありました

でも
そんな
ある日

ちょっと右膝をひねって
足を引きずりながら
いつものように
苛立ちを覚えた
時でした

私の中で
船底が破れ
海水のように
暖かい
完全なる血液のような
私を生み生かし
動かしてきた
暗い情熱のようなものが現れ
私を抱擁してくれたのです

もういい
帰っておいで

これから
あなたは

ずっと
内なるあなたを
生きなさい

船を走らせ
鳥たちをささえ
日月星座を愛するのは
あなた

その曲は
あなたを
奏でているのですよと

姿のない
神のような
暖かさが
教えて
くれたのです

私を癒やす
見えざる優しさ
暖かさは
世界そのものと
気づいたのです

私たちは
癒やし
癒やされる
生み出され
生み出す
宇宙そのもの
だと

その曲は
気づかせて
くれたのです

ひねった
右膝の痛みは
消えていました


■Keith Jarrett、PartⅪ(BordeauxConcert)を聞きながら。
■画像はヤフー、月明画像より。

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