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族長の時代 4. 〜元大統領ヘの敬礼〜
前回に続き、恵比寿ガーデンプレイスタワーの対テロ警備の時の忘れ得ぬ出来事。約100名の臨時警備隊の面々は、自衛官OBあり、施設警備ベテランあり、私のようなアルバイト感覚あり、在日の人ありだったが、時節がら応募された方々の士気は非常に高かった。とくに印象に残っているのは、立川あたりから来られたしっかり韓国名の在日の方だった。待機時間にも黙々と腕立て伏せを続け、寡黙だが暖かい笑みを絶やさない人格者の人柄は隊の空気を良い雰囲気にしていた。また会社が総隊長にしただけあってまだ若い総隊長は、マンネリでなく、日々工夫を凝らして、士気をゆるめなかった。
そんなある日の午後遅くに私はレストランエリアで立哨していた。ふとエレベーターからおりた三人連れに目が止まり、数秒の間、私は記憶にある顔でゆっくりとやって来る中央の人物ににわかに緊張していた。それなりに場数を踏んでいたが、そういう時には営業時代の空度胸が座って無線を取った。
「レストランエリア、早瀬より本部どうぞ。ただいま元ペルー大統領フジモリ氏、来訪。レストラン○○に行かれる模様。なお外国人ボディガード2名随伴してます。どうぞ。」
10秒くらいおいて総隊長が、
「本部了解。」と答えた。
しばらくして総隊長とおそらく待機中の警備員10名くらいが上がって来た。皆んな緊張の中にも何か期待感をにじませながら通路脇に2列に立哨して休めの姿勢を取った。そうしてしばらくすると、場所を変えるのか、元大統領とボディガードが出てきた。数歩歩いて立哨している警備員達にフジモリ氏が気づいたタイミングで総隊長が号令をかけた。
「元ペルー大統領、フジモリ氏に、敬礼!」
一瞬、フジモリ元大統領の目元がゆるみ、同時に私たちに正対されて、敬礼を返された。わずか数秒だが、私たちにとって万感の思いを、その見事な敬礼は与えた。まさに本物の大統領の敬礼をわずか十数人の警備員が受け得たことに、いったいどのような御縁だったのか、今でも素晴らしい一瞬だったと思う。
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思えばこの80 年間、日本人は目頭が熱くなるような本物の統領、族長を持つことができなかった。たとえ族長らしき人物が現れても、様々な不祥事の中で打倒されて、なんとなく豊かな社会に生きられていたが、今現在まさに私たちは私たちの上にインビジブルに君臨してきた者たちが牙をむいて私たちを死の柵の中に追い込み始めたのを呆然と傍観するしかない。この80年間の傍観はもはや取り返しがつかない痛恨の時代であった。
ただほんの少し地平にさしている明るみは、フジモリ氏のような“本物のサムライ”タイプでなく、まるでアメノウズメ神のような、世界中の人々の魂の戸を開き光を差し込む力を持つ若き族長達が現れ始めていることだろう。
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『誰かがちょっといい気分で人生を送れたりするために音楽やっとるようなもんで』(ウイキペディアより)
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■画像はヤフー、フジモリ大統領画像、米津玄師画像、藤井風画像より。
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