春侯爵詩片

彼は
過去世で
人を大量に殺戮して
財を奪い
悪逆の限りを尽くして
永年地獄に堕ちていた悪霊だった

しかし彼は
形ばかり成していた仏への供養の功徳で
現世にもどされ
再び人として生まれ
つぐないを成せることになった

彼にとって
神に叛逆した天使が悪魔となったように
悪魔に叛逆した悪霊が菩薩を真似て
生きるようなものだ

彼はぼやいた
この状況では
大虐殺のさなかに立ちあがり
大音声に否と叫び続けて
打殺されて
証しを立てるしか
ないじゃないか

たとえ一瞬で
打殺されようと
立ち上がり
的となることで
殺すのでなく
殺されることで
それをつぐなえるかどうかは
わからないが

今生こそは
大死一番
やってみるしかない
殺されるための人生だったか

なに
たかが数年のこと
面白いではないか

彼は野放図で
無鉄砲な男だったが
ロマン致死ストでもあったのだ

■JoeHisaishi、The Rainを聞きながら。
■画像はヤフー、大死一番画像より。