逆噴射小説大賞2020ライナーノーツ あるいは 高橋白蔵主大いにメキシコに最適化するの巻。

おれだ。
お前たちのほとんどはおれを知らんだろう。名前はそこに書いてある。遠慮するな、声に出して読め。読めない?そうか。なに、よくあることだ。気にするな。おれの名前はハクゾースと読む。先住民の古い言葉で「宣伝ヘタクソな蛇」って意味だ。響きがかっこいいからつけた。まあ敬意を払うならハクゾースチャンって呼んでくれていい。
おれはお前たちがオシメをしている頃どころか、お前たちのご先祖がチャンバラしてる頃に生まれた。色々あってずっと天狗をしているが、お前たちの中には天狗と聞いて何か思い浮かべることがあるらしいな。
おれも初めて聞いた時はマジかよと思ったが、お前たちの認識でだいたい合ってる。天狗についての説明を省けておれは嬉しい。
ところで、おれは今回、誘われて始めたTwitterランドで、さらに誘われてこの逆噴射小説大賞に参加することになった。本当は去年も誘われていたんだが、去年は歩く死体をぶっ飛ばしたりしてて忙しかったんだ。悪かったな。でも今回こうやって参加したからチャラだろ。良かったな。
おれが書いたのは5編だ。正確にいうと他にもちらほら書いたが、応募したのは5編だ。おれはTポイントも毎回ゼロになるまで使う。貯金とか投資とか貯めておいてドカーンとかは、そういうのが好きなやつに任せておけ。おれたちは、やれることはだいたい全部やる。
おれは初日に3発、終わりの日とその前の日に2発撃った。書いた順に投稿した。おれは時間列通りに生きている。

サムネイルにおれのかわいい絵が並んでるのはいいな。おれは絵も描く。まあ、絵の話はいい。なんでヘッダー画像作らないんですかとか聞かれたら困る。面倒だからだ。察せ。
ともあれ自作の話だ。どれも800字と短いので読め。最初の3作は時間があったので、改行スペース入れて全部800字ちょうどになるように作った。
次の二つは、気付いたら最終日(だと思っていた)ので慌てて書いた。最後のやつだけは余裕がなかったので改行含めずに800字ちょうどだ。
まあどれも些末な技術だ。書いたものの面白さには関係ない。そのうちお前たちにもできるようになる。がんばれ。
しかし人間たちのカレンダーは進むのが早いな。おれはまだお前たちの書いたものの1/5も読めていない。それについては恥じている。すまん。
なので、せめておれは自分の書いたものの解説とかを伝えようと思う。これはライナーノーツというものだ。
『柔肌は俺たちの墓標』
パルプとは何か、と考えてパイオツカイデーのチャンネーと、ネオン差し込む暗いモーテルが浮かんだ。おれはパルプというものをたぶん意識的に摂取していない初心者である。処女にするみたいにやさしくしろ。
とりあえずエッチっぽく始めてみるかというのと、地の文で「おっぱい」と書いて違和感のないものを目指した。最初はタイトルがダサくて『「おっ立てるのは男だけの仕事じゃないのよ」と彼女は言った』、女でもおっ立てられるもの、というのは中指のことだ。エロい想像をするな。
分かりにくいので改題して『おれもお前も彼女も二度死ぬ』にした。まだしっくりこない。候補の中で一番酷かったのは『デスブログおっぱいvs何度となく死ぬ俺』。
結局、投稿する5分くらい前に『柔肌はあいつの墓標』からちょっと変えて『柔肌は俺たちの墓碑銘』に変えた。割とよいタイトルをつけられた。逆のおっぱいに「俺」の名前が彫られる。たぶんこっちにも二重線が引かれる。書いてて困ったとこはない。書き出しのまま極めてシンプルに作った。セリフ掛け合いは半分ぐらいに削った。おれの書くものは、人物が余計なことばかり喋る。脳内の編集がぜんぜん仕事しない。
『蘭之助、もう吠えないのか』
界隈、たいへん好評でおれは嬉しい。これは京浜東北線の中で書いた。普段からおれは、他人に法に触れない嫌がらせをすることばかり考えている。特に他人に、心底嫌そうに「ありがとうございます」と言わせることに関しては人生を懸けているといってもいい。蘭之助も多分、鼻水と涙でぐちゃぐちゃになった顔で、それでも妖怪がいなければ成し遂げられなかったことについてをいつか思うだろう。
流石に片道では字数調整がうまく行かず、東京から大宮までの往復を使った。構想は特になく、犬のマネを強制させられる薩摩弁の美剣士、というのだけをイメージして書いた。
嫌だ嫌だと言いながらキャンキャン言わされた事例はだいぶ字数制限で削った。残虐度は下がったが削って良かったと思う。ちなみにチンチンの真似とか犬の小便をするとまた別の技が出る。これは追加アビリティだ。
ともあれ書きたいところを書いて、取ってつけたように旅の理由を書いて、これどうやってヒキ作るんだ、と悩んだ末に次の刺客を出オチででっち上げた。引きなんて2行で出来るんですよ、とイキるムーブ。「次の敵、名前呼んだら終わりじゃん」というのにちゃんと気付いてくれた人がいて嬉しかった。なんか色々時代劇は不利だと聞いていた中だったのでかなり嬉しかった。
タイトルは皆さんご存知最高の名作「ベルカ、吠えないのか」より拝借した。盗られて困るものには鍵をつけてしまっておかなければならない。そうでないものと可愛いラニーニャは、全人類共通の財産だ。
まあ、このタイトルにしたのも発表の30分前くらい。最初の仮題は「きりひと戦記」。ダサい。変えて良かった。思いつきでやる仕事以外の仕事はザコだ。計画書なんかは全部モグラに食わせろ。
『ローグ、ローグ、ローグ』
おれは、今回の中ではこれが一番好きだ。なんと言おうとこれだ。これはタイトルを変えなかった。泥棒一家の話を書こうとして書き始め、つるつると泥棒のはずが与える男になってしまった。パルプというのは「かっこよさ」だとすればこれは最高にパルプだ。特に字数を削ることもなかった。ヒキについてはいきなり片腕欠損、というのが割と安直かなというのを反省している。ケツがワームホールと比べると相対的に怪我が軽い。
ナアナがナアナになった経緯は、ルドルフとイッパイアッテナよりインスパイアした。それまで庇護されるだけだったタンゴが初めて戦い、ナアナを守ろうとする、という構図でヒキを作れたのはすごく良かった。繰り返すがこれも即興だ。思いつきだ。即興にこそ芸術は宿り、継続にこそ人間の地力が出る。
タイトルのローグ、ローグ、ローグは、爺さん・拐われたタンゴ・成長中のナアナの3人で始まった旅が、爺さんが死んだあとにもう一人加入する美人賞金稼ぎ(未登場)・強くなったタンゴ・タフガイオブザタフガイのナアナの3人に変わるイメージ。
旅をするなら3人だろ。これはメキシコでも、メキシコ以外でも変わらない。これは法律だ。
『セクシーアームズ・トゥ・ホールドユー』
書き始めた瞬間の仮題は「ウェスタン・マーズ・レッドロック』。意味はない。どういう意味かはおれの方が聞きたい。
ウェスタンと火星を混ぜるなら、タコ形宇宙人はマストだ。これを書くときに気をつけたのは、ちゃんとした情報を一切出さないこと。なにが起きててなにが起こるのか、具体的なことをあえて一切書かないようにした。書いてなきゃ次が読みたくなるだろという安直な考えである。あとはタコの出オチを叙述トリックで書くだけなので印象はよくない。
これはアロハ天狗氏の今回の投稿作、サイバーアパッチを読んでから書いたので、あわよくばシェアワールドしようと狙ったら、メクラ判で承認してもらってシメシメである。
おれたちは馴れ合ってるんじゃない。ただガバなだけだ。
タイトルは『エイトアームズ・トゥ・ホールドユー』、中嶋らも氏の作より拝借しようかと思ったが、読んだことのある人からしたら火星人丸バレだし、そもそも全パクリっていうのはダメだろと思ったので少しだけ変えた。タコの足のうち一本は生殖器だ。このタコはその腕で絞め技をする。軟体コマンドサンボだ。このタコは、イケメンで元人間である。こいつがハードボイルドで、火星帰りとかサイバーアパッチがいっぱいの、紅の豚をこれからやる。
今パクリじゃんっていったやつ、額に「オマージュ」って焼きごて当ててやるからあとで表に出ろ。
『過保護くらいで、ちょうどいい』
ロリババァ好きか?おれは好きだ。
過保護な姉、好きか?おれは好きだ。
カツアゲされる少年好きか?おれは好きだ。
明らかに不利な状況なのに言動がおかしいやつ好きか?おれは好きだ。
そこに狐耳まで足すとやりすぎなので控えた。こやこや。おれは節度というものを知っている。やりすぎるとリヒトホーフェンの騎兵隊が来る。あれはよくない。
ここまでの作は全て、「改行空白含めて800字ぴったり」にこだわっていたが、これだけは改行含まず800字だ。最終日の夜に、子を寝かせて限られた時間で喰らわすという威嚇をしてみようと思ってやった。
寝かしつけがスムーズだったせいか、まだ追い込まれ感が足りないと思ってアークナイツのイベントの、4枚目の捜査令状チャレンジまでやった。夢中になっていたら23時だった。あと1時間だ。好きなもの書くだけならやれんだろ、とタカを括っていたがマジでギリギリだった。携帯のnote編集、投稿ボタンを押す手が滑って24:00のタイムスタンプになった。これは受け付けられるか微妙だぞ、おい、どうする、プランBの出番か?と思ったら日付を1日間違えていた。
人生はそんなもんだ。
スベったら諦めて受け入れろ。それがメキシコの夜の流儀だ。おれはコンテスト最後の投稿者というアチーブメントを逃したが、5発全部使い切ったというアチーブメントは手にした。クーポンは必ず最後まで使え。ガチャは天井まで引け。リボ払いにしろ。ログインボーナスを一個でもとり逃したらアンインストールの刑だ。
ふう。
ライナーノーツというものは、話始めると無限だな。おれはそろそろ、子供の運動会のご褒美に無限ポイントを目当てにくら寿司に一家で行かなければならん。無限ゴートウだ。当然リボ払いで飲み食いする。帰ってきて、好評ならプラクティスの分もやる。
一応置いておくから、本戦の5作で足りないやつは読んで待ってるといい。じゃあな。くら寿司にはコロナが置いていないのでおれはスーパードライで乾杯をする。あれはビールじゃないが、まあ、なんだ。スーパードライという飲み物だと思えば悪くない。
全部は読めてないが、おれは、お前たちもきちんと小説を書いているのを知って心から嬉しく思っている。
愛を込めて。今度こそ、じゃあな。

*****

クッソ大事なことを言い忘れました。
もうちょっと長いのを読んでみたいよなと思われたアナタ。わたくし、こんな小説も書いてます。


宣伝ヘタオブ宣伝ヘタなので書き忘れました。
ハニカムウォーカー、また夜を往く」というタイトルで、まあまあセンターに投げ込んでるファンタジーです。騙されたと思って読んでみてください。
面白いと思うんだよな。

今回の投稿作群でなんとなくの作風が伝わる気もしてますが、もともとはウェットな現代の話ばかり書いていました。その辺の経験が生きてるのかもしれません。
よろしくねー。

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