影を書き留めること(2016年7月6日採集)
表現、あるいは声なき声、というものについて考えています。
ねえみんな聞いてよ聞いてよ、というほどのことではないので相変わらずひっそりやるんですが、声なき声は、声なき声である間だけ、美しく価値のあるものだと思います。
その人のうちにあり、誰にも見せぬ思いである間だけ、その人の原動力になったり、倫理規範になったり、力強い杖になったり、とにかく重要な「何か」であるのではないかと思います。
それが衆目に引きずり出されて、陽の下に晒されてしまうと、急に、それまで多方向へ輝いていたポテンシャルが消えてしまうように感じます。
たぶん、言語化するプロセスに問題があるのだと思います。それは形がなく、触ることもできません。ただ、世界に影を落とします。
ものすごく労力を使って、それの落とす影を丹念にいろんな角度から何枚も書き取り、何幾重も重ねて、影を見て本体をイメージできる人にだけ見える「ほんとうの形」をぼんやりと示すのが、一番誠実な記述になるのだと思います。それが、要約できない物語の本質なのだと思います。
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