見出し画像

2023年6月の歌  テーマ「地名」  


大隈座、小熊座

木曽路ゆくあなたの背中追いかけつつ鶯の声に心奪わる
iPadのアプリかかげて星空に見つけ出したる大熊小熊
楽満眞美

薄墨色のビルの谷間にたこ焼きの匂い漂う大阪の街  
一礼し鳥居くぐれば静謐のなか頬撫でくる涼やかな風 
六甲もこ

境内を福男目指し駆け抜ける西宮神社は我が街にあり 
孫去りぬ静かな時を持て余し孫の絵本をパラパラ開く 
伊藤美枝子  

耐え忍び奏でだしたる「メリークリスマス」龍一メソッド虹の彼方で  
雛の待つ巣処めざし悠々と冬空を翔ける大鷲一羽
今森貞雄

雨の奈良の鹿たち

雨の降る奈良の町より届きたる動画に身を寄せしゃがむ鹿たち   
欠けたるを使い続けしマグカップ「風水」知りて捨てる気になる  
鵜川登旨

「スーパーの魚は腐っている」と言う九十九里から来たお嫁さん
海の見えるベッドで我らと声高く「夏の思い出」を歌った先生
大室やよい

カネオヘの海を見下ろす庭先のベンチに君の姿はもう亡き  
夫逝きて気の抜けた日に友からのピーチゼリーはするりとやさし    
岡まなみ

特急は二両編成 早苗田の実りを見たや阿波の風良し
山あいに重なり続く手植えの田土佐をうるおす四万十の水
小野貴子  

壮大なグレイトキャニオン眺むればまだアメリカは健在と思う     
惹かれしは戦後の日本の暗黒に光をくれしよき日のアメリカ
小島夢子

上高地小梨平にズミの花初めてテント張りし日の朝  
徳本の峠越へし日山小屋の熊笹の茶とニリンソウの花  
近藤秀子

まだ青きマキキのざくろ風に揺れフェンスの中でツンと上向く
夕方の五月の風を受けながらカメムシ二匹葉先に動かず
関本なつ

日が長く太陽沈む夕暮れにしあわせ感じよろこび感じ
美味しいね作ってもらう手作りの夕食食べてしあわせ感じ
田中えり

花曇の空を映せる淡海(おうみ)の海に小舟は白き筋を残せり
つづれ折の道を比叡へ登りおれば光る湖面の遠ざかりいく
筒井みさ子

ベルリンの壁跡きえてさくら咲く平和ねがいし人ら往き交う   
(注:30年程前に日本が贈ったソメイヨシノは4キロつづく)
真夜中にスタンドを消す習わしに闇に浮かぶは星降る夜なり
原 葉

八年の沈黙破りアマリリスは紅い大輪咲かせ堂々
ゆっくりと猫の背撫でる夕暮れに陽は山の端を金色に染める
藤代敏江

四人姉妹親の逝きたる歳を超え長寿は親のおかげと感謝す     
長生きの時代に生きる幸せの四倍にもなる姉妹(きょうだい)なれば 
三浦アンナ

人々の祈りに寄り添い御仏は穏やかな笑み斑鳩の地で    
ランチ会は値上げの話で盛り上がり取りあえず幸せとデザートでしめる 
森田郁代

母鹿の後追ふバンビの可憐さは奈良公園のヘプバーンぞ  
草引き後木々の葉そよぐを眺むれば睡魔の襲ふ初夏の昼過ぎ  
山下ふみ子    


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?