2024年6月の歌 テーマ「メニュー」
病院の検査メニューを果し終へ診断待つ身はまな板の鯉
爽やかな五月の風に若葉映ゆ寒さ乗り切り心身ほどけぬ
山下ふみ子
隠し味を夫に聞かれど明かせぬはクリームパスタに入れしカラスミ
野遊びの草花入れいし竹籠に蔦の絡みて蝶の舞いくる
楽満眞美
中華街で話題の飲茶に繰り出して筆談しつつメニューを吟味
記念日はキャンドルライトのレストラン メニュー渡され老眼鏡(メガネ)を探る
六甲もこ
夕飯のメニューを決めるはわが腹とお裾分け待つ相棒姫ちゃん
「赤福」を堪能したいが友の声「一つだけね」と互いを気遣う
伊藤美枝子
朝凪の青澄みとほる春の海に心満ち足る初夢愛す
乱舞するあの桜ばな頬に眼にそ~と撫でて往く夢はどこまでも
今森貞雄
日本語を読めるふりして眺めいる夫はメニューを逆さまにして
「やったぞ」と掲げる我の指先の黒きかたまり血にまみれおり
鵜川登旨
パチパチと花火のついた寿司が来て目を丸くする元シェフの友
納豆を入れた手提げに空港のビーグル犬が鼻を突っ込む
大室やよい
<脳梗塞の兄を見舞いて>
吹き込みし「北国の春」の自分の声に兄の口元わづかに動きぬ
メニュー見てあれかこれかと決めかねる値段も嬉しき日本でのランチ
岡まなみ
忘れぬようメニューの裏に書いた詩を忘れてしまって呆然となる
咄嗟にはiPhone使えぬ老いの身はひらめきし短歌メニューの裏に書く
小島夢子
母の日に緑のカレー試食するタイレストランの不思議なメニュー
昼メシを湯気の漂う饂飩屋で ポツポツ語る姉の思い出
関本なつ
夕暮れに泥付き水菜を抱え来し母のメニューは煮浸し、ナムル
赤嶺氏の一周忌の早めぐり来てカネオヘ湾に雲の流れる
筒井みさ子
料理好き夫の献立手抜きなし豪華パエリア手作り餃子
鯨缶見せつつ姉は目を細む帰れぬエトロフ恋いているらし 原 葉
何もなきこと祈りつつMRIのトンネルに吸い込まれゆく 雨上がり餌を求めて来た野良を撫でれば毛皮のしめりていたり
藤代敏江
フレンチのメニューわからず戸惑えど全部正解シェフのおすすめ
久々に友と打ち合うグリーンでスコアーかぞえて笑いはじける
宮川美智子
早朝に目覚め寝床で思案する今日の予定と今夜のメニュー
意思を持つ幼児となりたる一歳の孫の動画を繰り返し見る
森田郁代
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