素敵なリサイクル　そうだ、ブックセールへ行こう

著：御手洗ケール

ハワイに移り住んで間もなく、ホームシックになりました。

初めての一人暮らし、しかもハワイといえど、日本とは勝手の違うアメリカ。寂しくなった時は、日本から持ってきた数少ない本を読んで気を紛らわせていたように思います。数が少ないので、何度も何度も同じ本を読み、日本から友人に持ってきてもらった本も繰り返し読んでいました。ブックオフを利用したり、日本のアマゾンで（送料は高いけれど）オーダーする技を覚えたのはかなり後のことで、その頃の私を支えてくれた本は、戦友のような気がして、いまだに手放せません。

さて、紹介文にもあるように、生まれた場所も育った環境も違う私たち5人は、奇跡的にハワイという場所でめぐり合い、今こうしてそれぞれの視点でハワイについて書いています。詳しく聞いたことはないので、みんな趣味も生活スタイルもまったく違うんだろうなと想像できるのですが（六甲茂子さんの知られざる趣味はひとつ発見！）、思いつく共通点のひとつに、みんな本が好き、というのがあります。

そんな私たちが楽しみにしているイベントのひとつが、ブックセール。図書館や学校で不要になった本や、寄付などで集められた中古の本が大量に放出されるこのセールは、Friends of the Library of Hawai’iという団体が主催し、年に何回か、中学校などのカフェテリアなどを会場に行われます。これが始まると、LINEで「今日行った」報告が5人の間で交わされます。昨年は当然のことながら開催なしだったので、残念に思っていたところ、このほどワードビレッジの一角に、3カ月限定のポップアップのブックストア「Village Books and Music」がオープンしました。場所は、ピア１インポートがあったスペースです。

以前の学校のカフェテリアも雰囲気があってよかったのですが、ここでは広いスペースにカテゴリーごとに分けられた本が見やすく並んでいるほか、CDやDVD、レコード、アート作品などもあり、レアなお宝が眠っている予感満載･･･。日本語の本もそれなりに揃っているし、いつもながら「ハワイアナ」と呼ばれるセクションに集められたハワイにまつわる本の充実度は高く、ここもマニアックな本が探せそうです。

正式オープンの日は、まさかの長蛇の列で、この日はさすがにあきらめたのですが、実は前日にプレオープン的なことをやっていたので、その日に一足先に下見完了。1度入れば1時間は軽く過ぎてしまうので、並ぶ場合は待ち時間が読めないのが難点ですが、現在はウェブサイトよりオンラインで入場希望日時が予約できるようになっています。

ストアでは入り口で検温、ハンドサニタイザーで消毒してから入場となり、コロナ対策もばっちり。中は、広さの割に人数が制限されている感じで、ソーシャル・ディスタンスも守りやすく配慮されています。年配の方が中心とおもいきや、子ども連れのファミリーも多く、子どもたちが床に座って絵本に見入っている姿を見ていると、なんだかうれしくなってしまいます。

そもそも、この非営利団体の歴史は古く、設立は1879年。本を通してハワイの人々の教育に尽力する目的で作られましたが、当時のメンバーにはキング・カラカウア、クイーン・エマ、クイーン・カピオラニ、バーニス・パウアヒ・ビショップ、サンフォード・ドールなど、王族や名のあるビジネスマンがずらり。ハワイ王族のクイーンたちは、教育や医療の充実に熱心だったことで知られていますが、当初は女性はメンバーに入ることが許されなかったとか。ところが、創始者の一人であるカートライトなる人物の進言により、女性の参加が認められ、クイーンたちにも活動の場が与えられたと聞きます。進歩的な考えを持った人がいてよかった！

現在ハワイには51の公立図書館があるそうですが、電子書籍などが簡単に利用できる便利な世の中になり、本離れが著しいのは想像できます。私たちのように、本を手に取り、ページをめくるあのわくわく感が好きな世代にとって、ブックセールはまさに「天国」ですが、断捨離とは対極にある趣味であることも間違いなし。でも、誰かが読んだ本を巡り巡って自分が手にし、今度は好きだけど読まなくなった本が誰かの手に渡り、感動を共有することが出来たら、それはとても素敵なリサイクルだと思うのです。と自分に言い聞かせながら、寄付する本を選ぶつもりが、一向に進まず、ため息が出るばかり･･･。

本は場所を取るし、2回目なかなか読まなくても、やっぱり好きな本は手放せない。そしてまたブックストアに足を運ぶ私であった。

Village Books & Music
営業時間：火曜～土曜：10am～7pm / 日曜10am～5pm / 月曜休み
https://friendsofthelibraryofhawaii.org/2021/02/19/village-books-music/