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ミルクフランスのこと。

「何か」がその人にとってそれ以上の意味をもつ象徴になることがある。私の場合、富士山を見ると病気を思い出すように。夏の富士山は雲がかかってその稜線をみわたすことはできないけれど、早朝なら堂々とした佇まいを見上げることができることとか、それを病室の並ぶ廊下の突き当りで、ソファに座って眺めている母の背中とか。

さて、病気について思い出そうとすると、記憶が混濁して、散り散りになっていることに気が付く。母が病室の前で先生と話していたのはいつの事だったか。いとこがお見舞いに来たのはいつの事だったか。暇だといって外出許可を貰ったのはいつだったか。その外出許可先で見つけたおしゃれなレストラン、入りたいと我儘を言ったけど、あそこのピザ結局食べなかったんだっけ食べたんだっけ。

だから、記憶を手繰り寄せるように、書きながら思い出していきたいと思う。

まずは、ミルクフランスから。

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1,573字
中学生で癌を経験した私の、トリミングなしの人生を覗くことができます。多分何の役にも立たないです。

自分の人生や、内省や、汚いところや、ずるいところや、どうしても書かずにはいられないことを、溜めておく場所です。ほとんど、忘れていた感情や、…

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