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師弟同時昇級は成らず!

将棋の順位戦C級1組の第9局は5日に行われ、B級2組への昇級がかかっていた杉本昌隆七段と藤井聡太七段はそれぞれ敗れ、昇級決定は最終局に持ち越しとなった。昇級の可能性があるのは1敗の4人と2敗の1人に絞られた。

順位戦の仕組みとは

順位戦とは、毎日新聞社と朝日新聞社が主催する将棋の棋戦で、タイトル戦である名人戦の予選に当たる。順位戦のA級1位が名人への挑戦者となる。6月から翌年の3月を1期とする。1947年度に第1期が開催され、現在は第77期である。順位戦はA級、B級1組、B級2組、C級1組、C級2組の5つのクラスからなる(順位戦の対局がないフリークラスの棋士もいる)。
今回はC級1組に絞って説明すると、1期のうちに同クラス内で10戦する。定員は決まっていない。C級2組で成績上位の3名が昇級してくるが、全勝は必ず昇級となるので4名以上昇級することもある。また、B級2組からは降級点が累積2点の者が降級するのでこちらも人数が定まらない(降級点は成績下位のうち、参加人数の20%に降級点がつく。勝ち越しまたは2期連続5勝5敗で降級点は1つ減る)。今期の参加人数は39人だ。
C級1組のなかでも順位がついている。
①B級2組からの降級者
②休場者のうち降級の対象となった者
③残留者のうち降級点を取らなかった者
④C級2組からの昇級者
⑤残留者のうち降級点を取った者
これに従い、39名に順位づけがされる。同じ項目ならば、前期の成績や順位が上の者がそのまま上の順位となる。例えば④のC級2組からの昇級者は3名だが、藤井聡太七段は前期10勝0敗、都成竜馬五段と増田康宏六段は8勝2敗のため、今期は藤井七段が31位、前期で順位が3位の都成五段が32位、前期5位の増田六段が33位とされた。34位以下は⑤の棋士が前期の順位の順に並んでいる。昇級したばかりの藤井七段が下の方にいないのはこれが理由だ。

残すは1局、1敗で4人が並ぶ

今期は5日に第9局が一斉に行われた。対戦相手は最初の段階で今期対戦する10人がわかり、また先手後手も決まっている。この日に昇級が決まる可能性があったのは8戦全勝で来ていた7位の杉本昌隆七段と、31位の藤井聡太七段の2人。2人が勝ち、1敗の棋士が敗れれば最終局を残して2差となり、C級1組からの昇級枠である成績上位の2名が決まる。
杉本七段と藤井七段は師弟で、師弟同時昇級となれば1986年度の第45期B級2組で、故大内延介(のぶゆき)九段と弟子の塚田泰明九段(当時六段)が達成して以来32年ぶり2組目。さらに藤井七段が勝てば、前期から順位戦19連勝となり、中原誠十六世名人が持つデビューからの順位戦の連勝記録18を更新する。2つの記録が懸かる対局はニコ生やAbema TVで生中継された。
藤井七段は6位の近藤誠也五段と対戦。近藤五段も7勝1敗で、勝てば昇級のチャンスが残る。途中、将棋ソフトの評価値で藤井七段がリードする場面もあったが、終盤に疑問手が出て形勢が逆転。痛恨の初黒星となった。師匠の杉本七段は14位の船江恒平六段との対戦。船江六段も7勝1敗で、こちらも直接対決。Jリーグの日程くんではないが、事前に決まっていた対局がもの凄い勝負になる偶然だ。船江六段が優勢に進めて勝利を収め、結局1敗が4人並ぶ大混戦で、3月5日の最終局を迎えることとなった。

最終局の対戦カードは

1敗の4人の最終局の対戦相手は次の通り(先が先手、右は過去の対戦成績)。全員が勝てば、頭ハネで6位の近藤五段、7位の杉本七段が昇級となる。船江六段と藤井七段は勝っても上位者に敗者が出ないかぎり昇級できない。

6位 近藤誠也五段(先) 対 33位 増田康宏六段 近藤1勝 増田2勝
7位 杉本昌隆七段(先) 対 9位 千葉幸生七段 初対戦
14位 船江恒平六段 対 13位 金井恒太六段(先) 船江2勝 金井1勝
31位 藤井聡太七段(先) 対 32位 都成竜馬五段 藤井4勝 都成0勝

レアケースで、全員が敗れた場合、4位で2敗の高崎一生六段にもチャンスが回ってくる。2敗で5人が並べば最上位になるからだ。勝利が必須の高崎六段は、10位の小林祐士七段と対戦する(先手は高崎六段)。A級順位戦の最終局の日は”将棋界の一番長い日”と称されるが、3月5日もかなり長い一日になりそうだ。

地元網走に帰ってきて5年半経ちました。元競馬専門紙編集部員。サッカーや野球、冬はカーリングなどスポーツ観戦が好き。もちろん、競馬も話題にしています。時事ネタや網走周辺の話題なども取り上げます。よろしければ、サポートもお願いいたします。