今年最大のてのひら返し!ヤクルト並木、今季初安打が決勝打
応援している阪神タイガースが高橋遥人の力投もあり4-1で勝ったことを知った後、他会場の途中経過で広島カープが敗れ、読売ジャイアンツも敗色濃厚と伝わってきたのでシメシメと思っていたら、京セラドーム大阪は、9回裏2アウトからモンテスに来日第1号となる同点スリーランが飛び出し、振り出しに戻って延長戦だという。
10回表の東京ヤクルトスワローズは、巨人の5番手の守護神・大勢に対し、5番オスナから始まる打順。だが、6番中村のあとは7番に武岡、8番に並木と、守備固めで入った選手たちに回る。高津監督の采配に注目が集まった。
先頭のオスナがフェンス直撃のツーベースを放つと、高津監督は続く中村にバントの指示を出した。打率が2割4分の中村にバントさせて、打率1割8分の武岡、今季まだノーヒットの並木に期待するという、なかなかの大バクチである。
中村は初球からバントしてファウルの後、2球目をしっかり決めて1アウト3塁に変わった。武岡は、2ボール2ストライクから1球ファウルの後、5球目のボールを空振りして三振を喫した。
2アウト3塁。繰り返すが、今季まだノーヒットの並木がそのまま打席に入った。並木秀尊外野手は25歳。2020年にドラフト5位でヤクルトに入団した今年4年目の選手で右投げ右打ち。相手の大勢も右投げで、人がいれば左打ちの選手が送り込まれるところだが、ベンチに残っていた野手は全員右打ちで、左右病を出すこともなかった。
大勢は、はたして準備万端でマウンドに上がったのだろうか。ある程度肩はつくっただろうが、3点ビハインドで9回裏は「今日はもう出番がない」と思っていたかもしれない。
それが2アウトからモンテスに同点弾が出て、慌ててまたブルペンのマウンドに向かったのではないか。この後、スワローズはここでタイムをかけることはなく、試合は途切れず打席に岡本が入った。岡本は2球目を打ったがセンターフライですぐに9回裏が終わり、準備不足でグラウンドに出て行ったと思われる。ベンチや岡本は、タイムをとったりするなどで、少しでも時間を稼ぐ必要があったと思う。
並木は俊足が武器で、代走として出場することが多い。今年は1度、6月9日の北海道日本ハムファイターズ戦の後にヒーローインタビューをホームの神宮球場で受けているが、それは相手のエラーで出塁したオスナの代走として出場し、決勝点を生んだ好走塁を讃えられたものだった。
「大勢は右打者へのフォークの精度が微妙」という巨人ファンの書き込みがあったが、大勢と岸田の巨人バッテリーは、変化球をバットに当てられて、ボテボテのゴロになり、際どく1塁セーフになってのサヨナラを警戒したのではないか。相手は今季ノーヒットだし、得意の速球で押し切れるとたかをくくったのだろう。
並木が打席に入る前、ヤクルトファンのSNSの反応は悲観的だった。「中村、武岡、並木で一番期待できるのは中村じゃないのか。高津監督はなぜ中村にバントさせて後の2人に任せるのか」「今季ノーヒットで大勢相手に打てるのか」「思い切ってセーフティーバントやるしかない」⋯⋯ とてもタイムリーを期待する空気はなく、よくある「ここで並木が打ったら◯◯する」的な書き込みすら見当たらなかった。
1球目は、外角低めの151kmのストレートを見送ってボール。BS日テレの解説の能見篤史氏が「自分の自信のあるボールで勝負しないといけないので。ある程度狙われていると分かっていても、いけるボールがないと抑えというポジションは難しくなる」と語った直後の2球目。
152kmのストレートが、甘く入った。そこを待ち構えていたのか、並木はドンピシャのタイミングで打ち返した。打球はセンター前に飛ぶタイムリーヒットとなった。
能見氏は「一番の武器はこのまっすぐなので、打たれた後も悔い自体はたぶんない」と大勢について語ったが、悔いがあるとすれば四球を出して次の左の西川に回ることを恐れてか、武岡を三振に討ち取った159kmのスピードボールより少し抑えた150km台前半の球速でコントロールを重視したはずなのにコースが甘くなったことだろう。
ヤクルトファンは、盛大にてのひら返し。
「正直、3ラン打たれた瞬間に『オスナと長岡と村上しかいないじゃん、終わった』って思った。並木秀尊さん本当にごめんなさい」
「並木くんボテボテの内野安打でいいから打って🙏とか願ってすみませんでした🙇♂️
綺麗なタイムリーヒットありがとうございました🙇♂️🙇♂️🙇♂️」
「並木に代打出せよ!って言い続けてて、誠にごめんなさいでした」
ヒーローインタビューで並木はこう語った。
「今季ヒットは打ってないが、そこは関係なく思い切って行くことだけを考えて打席に入った。狙いを絞って思い切って行った。コンパクトに打てたと思う。同点に追いつかれても負けた訳じゃないので、もう一度勝ち越そうという気持ちだった。
与えられた役割をしっかり果たして、チームの勝利に少しでも貢献できるようにやっていきたい。残り試合は少なくなってきたが、チーム全員で全力で戦うのでこれからも応"燕"よろしくお願いします」
並木は、7月3日のDeNA戦(横浜)で左肩を脱臼して以降は2軍でリハビリし、8月27日に再昇格したばかり。中川家の兄ちゃん似とか田口の弟でも違和感ないとか言われるが、6階級制覇を成し遂げた元プロボクサー王者のマニー・パッキャオ氏に似ていることから、元山飛優(現西武ライオンズ)に命名された「パッキャオ」がニックネーム。コンパクトな一撃が、相手の守護神を打ちのめした。もっと脚の速さを活かすには、やはり1番に定着しなければいけない選手だろう。
この日、10回裏を抑えたロドリゲスに来日初セーブが付いた。ヤクルトは、今季セーブポイントを稼いだ投手はロドリゲスで9人目(田口7、木澤5、石山5、小澤4、清水2、大西1、山本1、星1)。抑え役がなかなか固定できないチーム事情があるのだろうが、昨日の雰囲気ならロドリゲスを守護神に抜擢していいのではないかと感じた。それだけ魅力あるボールを投げていたし、痺れる場面でこそ力を発揮できそうなタイプに思える。
来季へ向けた戦いでもあるが、中日ドラゴンズと2.5ゲーム差に詰まっただけに、まずは最下位脱出を目標に残りゲームを戦っていきたいところだ。
地元網走に帰ってきて5年半経ちました。元競馬専門紙編集部員。サッカーや野球、冬はカーリングなどスポーツ観戦が好き。もちろん、競馬も話題にしています。時事ネタや網走周辺の話題なども取り上げます。よろしければ、サポートもお願いいたします。