復興債のメモ

2011年における東日本大震災直後もすぐに復興債の議論が展開されました(当時急速な円高に進み、ドル供給オペを打ったことも記憶しています)。もっとも、東日本大震災が被害規模が巨大であったことや原発関係の問題もあり、類似的な議論が簡単ではないのも事実です。もともとどこかで復興債について記載をしようと考えていたため、参考までに、今回、復興債についての簡単なメモを記載しておきます。

まず、復興債とは何かですが、下記が、私の「日本国債入門」で記載した復興債の説明です。

復興債
復興債とは、2011年度から2025年度まで実施される東日本大震災の復興財源を確保するため、時限的にその使途を明確にして発行される国債です。新規国債は、前述のとおり、一般会計における歳出と歳入のギャップを埋めるよう発行される国債であるため、使途は明記されていません。それとは対照的に、復興債とは特定の目的をもって時限的に発行される国債といえます
(復興債は上述の観点でいずれ発行がなくなる点に注意してください)。

つまり、普通の国債とは異なり、東日本大震災の復興財源を確保するにあたり、通常の国債とは別管理にする仕組みがとられました。具体的には、東日本大震災復興特別会計を創設したうえで、復興債を発行してファンディングすることで、東日本大震災の復興資金を賄うということです。

これまでさんざんGX債の説明をしてきましたが、復興債とGX債は、復興やカーボンニュートラルなど、特別な目的のための歳出をファンディングするという意味で、類似性があります(GX債についてもエネルギー対策特別会計に直入されます)。もっとも、一定の違いもあります。例えば、GX債は通常の国債とは区別され、個別で発行するという特徴(個別発行)があります。一方、復興債の場合、通常の国債と区別されず、いわゆる統合発行という形がとられました。この日経の記事にあるとおり、通常の赤字国債や建設国債と同じ金融商品としてマーケットに出てくる点が特徴です。

GX債では、①化石燃料に応じた賦課金と②特定事業者負担金が償還財源になることを繰り返し説明しました。GX債ではこれらをエネルギー対策特会に入れるところ、東日本大震災の復興については、下記の図の通り、復興債によりファンディングした資金を入れるだけでなく、復興債収入以外にも、復興特別所得税などが繰り入れられ、国債整理基金特会を介して、(東京メトロ・日本郵政株式売却収入なども繰り入れながら返済することとなっています。

今日は最低限の説明ですが、今後必要に応じて随時補足します。なお、復興債については下記の「ファイナンス」でも取り上げているため、参照してください。違和感や加筆すべき点等があればご指摘いただければ幸いです。

齋藤通雄氏に聞く、日本国債市場の制度改正と歴史(後編)|服部孝洋(東京大学) (note.com)




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