4月から実施する公務員と交流する講義

そろそろ3月が終わる中、4月から始まる講義の準備をし始めているところです。私がもっている講義の中に、金融および財政をテーマに、毎週、国家公務員(基本的には30代の課長補佐ランクですが、室長や課長もきます)をよんで講義をしてもらうというものがあります(「政策担当者が語る日本の財政金融論」というタイトルの講義です)。

30代の課長補佐とは、公務員としての経験が10年以上あるケースです。このくらいの年次になると、様々経験を有していることが多く、彼らの経験を通じて、実際の政策について学ぶというのがその趣旨です。

最近、大学生と接していると公務員の人気が落ちているという実感があります。実際マスメディアでもそのような報道がなされている気がします。もっとも、実際の政策に近いところで仕事ができるという観点では公務員の魅力は昔から変わっていないと思っています。また、あまり強調されていませんが、河野大臣の改革によりサービス残業は劇的に減少していますし、(劣悪なことは事実かもしれませんが)働き方について改善されているとも感じています。

学生の話を聞いていると、公務員になる場合、異動が多くて何も身につかないのでは、という印象を持つようです。たしかに、(私の理解する限り)総合職の場合、原則1-2年で異動しますし、総合職でなかったとしても、3-4年で異動していくというのが典型的です。私の金融機関の同期が、入社時から40歳になるまで同じことをしていることが少なくないことに比べると、専門性については全く違ったものになるといえます。

私は、証券会社だけでなくて、役所の経験もあるのですが、私が感じたことは、証券会社を通じていて見ていた世界がいかに狭かったかということです。金融機関にいると、例えば、実際の政策や制度がどういう風に形成されているか全く想像ができないのです。これは私個人の体験になりますが、役所での経験を通じて、自分の視界が劇的に広がったという経験をしました。また、制度の理解は公務員に大きな強みがあるとも感じました。

学生に問いたいのは、例えば、円金利だけ考え続けたり、あるいは、仕組債の組成、株式や社債の引き受けを20年間やる人生がハッピーなのか、ということです。私のように一つのことをやり続けることが好きな人間にとってはそれでもハッピーといいきれますが(学者になる人もそうだと思います)、そうではないという人も少なくないはずです。

例えば、様々な政策に係る意思決定を見てみてみたいとか、あるいは、将来は政治家になって日本を変えたいとおもっているような野心のある若者にとって、公務員をキャリアのスタートにすることは今でもそれほど悪くないのでは、と私は思っています。実際のところ、20代前半でどういう方向に行きたいかを決めきれずにいるケースも少なくないと思います。また、あくまで一般論ですが、例えば、働き方が悪いとか、あるいは、全く無駄な時間を過ごしてしまった、上司からパワハラを受けたみたいなことは、民間でもありえることだとおもいます。むしろ、人間関係については公務員の場合、(異動が多いがゆえ)1-2年我慢すれば解消される可能性があるともいえます。

とはいえ、公務員が良いとは言えないケースも多いとはおもいますし、実際学生の中で、(様々な経験ができると思われる)コンサルの人気が増えている背景にはこのこともあるとおもっています。私が仮に、今学生時代に戻っても、証券会社に入るという選択をするだろうと想像できるのですが、結局、自分がなにをやりたいのかということに時間をかけて向き合うしかないと感じています。このようなことは大学にきて、若い学生と話すことを通じて考えることが増えてきた気がします。

今回は雑感になりましたが、今年は特別なゲストを呼ぶ予定なので、受講できる人は是非参加してもらえればと思います(おそらく東大生全体向けのセミナー形式にすると思います)。

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