GPIFの基本ポートフォリオの決定方法についてのメモ

先日、下記の通り、現在のCIOが再任されるということが話題になりました。この記事にもありますが、下記の通り、24年度は基本ポートフォリオについての議論が話題になります。

宮園、植田体制の最終年度となる24年度は、資産ごとの投資配分を決める基本ポートフォリオの見直しの年に当たる。現行のポートフォリオでは、国内債券、国内株式、外国債券、外国株式の4資産にそれぞれ25%ずつ振り向ける配分となっている。

GPIFが植田CIOの再任を発表、巨額資産の運用指揮5年目に - Bloomberg

基本ポートフォリオについては5年に一回見直すとされています。これは財政検証が5年に一度なされ、それをうけてGPIFのポートフォリオをみなすためです(財政検証は今なされているところです)。5年に1回見直すというのは年金の世界では普及しているようですが(例えばこの記事を参照)、人口動態等を考慮するため、1年だと早すぎるし、10年だと少し長すぎるということかもしれません(ちなみに、5年に一回というのは基本スタンスであり、環境の変化があり必要であれば修正するということのようです。例えば、こちらのp25などでその言及があります)。

基本ポートフォリオについては下記の通り、4つのアセットクラスに対して25%で保有する(ただし、一定の乖離許容幅あり)という形ですが、下記の通り、5年前に基本ポートフォリオが変更されて今の形に至っています。

https://www.gpif.go.jp/topics/Adoption%20of%20New%20Policy%20Portfolio_Jp_details.pdf


どのようにポートフォリオを決めているからですが、「新しい基本ポートフォリオは、運用目標(実質的な運用利回り:1.7%)を満たしつつ、最もリスクの小さいポートフォリオを選定したもの」と説明があります(ここでの実質利回りは、「賃金上昇率」を考慮して計算している点が独特であり、それは年金制度と密接だからですが、これについては別の機会に説明します。ここなどを参照)。下記にも記載がありますが、基本的な思想は、(全資産を円債とした場合より損失が低いなど一定の制約等をおきつつ)一定のリターンを確保しつつ、リスクが最小化されるポートフォリオを基本ポートフォリオの4つとしており、その結果として、4つの資産のウェイトがそれぞれ25%というものがでてきているということです。
Adoption of New Policy Portfolio_Jp_details.pdf (gpif.go.jp)

このように、一定のリターンを目指しつつ、リスクを最小化するという発想は2006年のGPIF発足時点から記載されています。

midterm_target_01.pdf (gpif.go.jp)

前回の変更では国内債券を落として、国外債券を上げるという判断をしていますが、経営委員会では、下記のような説明をしています。

PT としては、基本的に国内債券を引き下げ、外国資産を引き上げるということを基 本的な方向性として提案したい。国内債券は、現在の利回り曲線から推定した期待リ ターンを使っているので0.7%となっており、基本的に現在のゼロ金利という国内の情 勢を踏まえて、国内債券について、現行の35%の基本ポートフォリオから10%ポイン ト下げて25%にするということで、国内債券を減らした10%を外国資産に持っていく という考え方である。

keieiiinkai3604.pdf (gpif.go.jp)


上記の前提となるリターンやリスクは一定の方法で推定するとして、なぜ、そもそも「国内債券、国内株式、外国債券、外国株式」という4区分なのかという疑問もあります。これはクラシカルな分類であり、分類を変えるといろいろ問題があるので、従来どおりとしましょう、という判断だとおもいます。例えば、経営委員会の議事概要をみると、下記のような記載がなされています。

内外区分の撤廃については、いろいろな案を検討してきたが、足元の状況では、非常に大きな金額の日本株を保有している。そういう中で、いきなり内外区分の撤廃を実施すると、GPIFのパフォーマンスを悪化させることにもなるし、市場にいたずらに混乱をもたらす可能性もある等の制約があるため、従来どおりの4資産で基本ポートフォリオを定めることにしたい。

keieiiinkai3604.pdf (gpif.go.jp)

おそらく今回の見直しにおいても、そもそも「国内債券、国内株式、外国債券、外国株式」という4区分にこだわる必要があるのかというところに議論が行くと思います。また、アベノミクス以降、株式の投資やヘッジなし外債の投資で成功してきたといえますが、より一層、株式を増やすのかという点に関心も持っています。

GPIFのネタは定期的に記載していきます。上記についても必要に応じて加筆修正します。

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