後決めGCレポのメモ

GCレポについてメモを記載しましたが、ここで後決めGCレポについてもメモを記載しておきます。これについても随時アップデイトします(不正確な点等があれば随時修正します)。

実は、GCレポには「先決めGCレポ」と「後決めGCレポ」があります。ここで取り上げたいのは「後決めGCレポ」になりますが、具体的に考えます。前回説明したとおり、国債の決済については原則T+1決済です。これは今日取引したら次の営業日にお金を振り込む(支払う)という決済のスタートのタイミングを考えています。

例えば、財務省の入札に参加して、今日、1兆円落札したとしたら、明日、1兆円を財務省に振り込む必要があります(今日は厳密に言えば、土曜日なのですが、わかりやすくするため、ここから、ひとまず営業日は捨象します)。読者は明日までに1兆円を調達してくる必要がありますが、読者は国債を購入することになるので、国債を担保に資金調達をすることができます。これがレポ取引でした(詳細は下記を参照してください)。
f01_2020_02.pdf (mof.go.jp)

再び先ほどの例に戻ると、今日の午後に1兆円が必要であることがわかったとして、明日振り込む必要があるわけですが、読者として、今日の午後に明日に1兆円の調達をする取引をする必要があります。この場合、本日、T+1のGCレポ取引を1兆円分すれば(国債を差し出して、1兆円資金調達をする)、明日、この決済をすることができます。

ここで問題にしたいことはこのレポ取引において受け渡しをする銘柄のタイミングです。今日の午後のタイミングで取引をするのですから、素朴には、今日の夕方、例えば369回債を差し出します、と決めるのが自然といえます。これが銘柄を先に決めているため、「先決めGCレポ」といいます。しかし、実は、ひとまず今日、1兆円レポで調達することを決めておいて、その銘柄は明日決めるということもできるのです。これが「後決めGCレポ」になります(これはそもそもどの銘柄でもよいという発想ですからSCレポではなくてGCレポである点に注意してください)。

「後決めGCレポ」では、このような後決めの仕組みを可能にするため、日本証券クリアリング機構(JSCC)というクリアリングハウスが銘柄を指定して、その範囲で事後的に受け渡すということを行います。「後決めGCレポ」はJSCCでクリアリングすることが前提になります(ちなみに、JSCCでクリアリングされる国債は後決めGCレポ以外にも多く含みます。この点はまたの機会で記載します)。下記が、JSCCのサイトにあるタイムスケジュールですが、受け渡しを決めるタイミングは1日に3回あることがわかります。


国債決済期間短縮化(T+1)について | 株式会社日本証券クリアリング機構 (jpx.co.jp)

この後決めGCレポの何がいいかというと、そもそも、証券会社はマーケットメイクのため、色々な銘柄を売ったり買ったりしているので、ファンディングが必要となるその日の終了時点に、どのような銘柄をどの程度持っているかわからないことが往々にしてあるわけです。例えば、トレーダーが顧客の注文の関係で、今日の夕方などにある銘柄を購入した場合、明日までに資金調達が必要になるわけですが、その段階で今の在庫が正確には分からないということがありえます。後決めGCレポであれば、今の時点でレポ取引をすることで資金調達することは固めておいて、受け渡し銘柄は、明日事後的に受け渡せばいいので、安心というわけです。これはJSCCでレポがクリアリングされていることに加え、GCという特別銘柄を指定しない担保取引であるからこそ可能になるといえます。

このように事後的に決めることは、T+1の決済にプラスに寄与することがわかります。先ほどの例のように、例えば夕方などに取引(約定)した場合は、事実上、翌日から対応をするという意味で、この取引はT+0決済に近くなるのですが、常に在庫が正確に把握できるとは限らない中で取引をすることは、T+0に近くなるがゆえ、危険といえます(持っていない国債を指定してしまったら大変です)。しかし、後決めGCレポという形をとることで、読者としても在庫がはっきりしたタイミングで、事後的に受け渡しできることが分かっていれば、安心して取引することができます。仮に夕方などに約定したとしても、「今決めた取引についてはJSCCが指定銘柄で事後的によろしくやっておいてね」ということができるわけです。下記は、後決めGCレポがT+1決済を容易にすることを示した図ですが、後決めにすることで事務負担が軽減されることが確認されます。

国債決済期間短縮(T+1)化後の市場取引動向 (boj.or.jp)

これは日銀のデータなのですが、GCレポについての先決めの割合は推移は下記の通りです。これをみると、現在、2割弱程度であることが分かります。また、2018年から2019年に増加していることもわかります。ただ、これをみると先決めのほうがずっと多いこともわかります。これは前述のとおり、後決めGCレポがいわゆるバックストップ的な役割を有しているなどが理由だと考えられます。

market2210.pdf (boj.or.jp)

なお、JSCCによりクリアリングされるレポ全体については下記の通りです。これには先決めと後決めGCだけでなく、SCも含まれている点に注意してください。

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