BB(日本相互証券)の引値についてのメモ

国債本について書いている中で、業者間市場について記載していたのですが、その中で、BBやBBの引値についても触れています。BBの引値は、引き合いに使われたり、これによりトレーダーの損益が決まりえるなど、非常にみんな気にしている値です。そこでBBの引値について簡単なメモを作っておきます(この点は今後必要に応じて追加します。不正確な記述等があればご指摘ください)。

まず、国債市場については日本相互証券というブローカーズ・ブローカーが存在しており、JGB市場において圧倒的なプレゼンスをもっています。そもそも日本相互証券をBBと呼びますし(国債のブローカーズ・ブローカーは日本相互証券以外にも2社あります)、日本国債の引値といえば、日本相互証券が計算したもの(いわゆるBBの引け値)がデフォルトになっています(例えば、デリバティブの引値というと、色々な業者がありえるのですが)。

では、どのようにBBの引値を計算しているかというと、イメージとしては15時時点でのBBの板の情報を使って、一定の方法を使ってイールドカーブを推定し、補正をかけることで算出しています。以前は、投票をベースに計算をしていたのですが、LIBOR不正問題を受けて今の形になりました(LIBOR不正問題を知りたい読者は私が記載したこの論文をみてください)。

BBの引け値に関し、実際の計算方法(固定金利債)は下記のとおりです。具体的には、「残存10年以下」と「残存10年超」をわけ、それぞれ年限を区切って一定数の銘柄の利回りを取得します。それを用いて、スプライン関数を使ってカーブを補間して、一定の調整をかけるということをやっています。スプラインを使った補間は私のこの論文を参照してほしいですが、要は、カーブをフレキシブルな関数を使って、離散的に得られる金利にフィットさせているだけです。なお、私の現在の理解では、以下より詳細には現在開示されていません(BBの引け値は16時ごろ公表されます)。

bbhikene.pdf (jbts.co.jp)

上記をみると、その推定の方針については示されていますが、具体的にどういう計算をしているかは細かくは追えないということがわかります。前述の通り、BBの引値は様々な場所で使われており、例えば、トレーダーなどのPLにも影響することから、その計算方法には関心が高いのですが、このように細かい部分はブラックボックスであるため、トレーダーなどの肌感覚と違った値が出てくることも多いようです。たしかに、実際の売買がなされた金利を知っている場合、このように補間をしてしまうと実際に取引された水準とは違ったものが生まれるということが起こるのだと思います。

具体的な計算方法を開示していないのは、これは勝手な予想ですが、これを開示してしまうと、それをうまく利用してトレーダーが取引を行う可能性があるからであり、それを防ぎたいからではないかと思います。BB引値問題は、市場参加者にも非常に多くの意見があるとおもうので、今後、必要に応じてアップデイトしていきます。

なお、日銀の輪番や流動性供給入札ではBBの引値でなくて、日本証券業協会が計算している売買参考統計値を用いているので気をつけてください(たまに事故が起こると聞いたことがあります)。日銀や財務省としては、一つの業者のプライスは使えないということだと思います(BBの引値は公表されていないですし)。日銀の輪番や国債の入札がどのように実施されているかは今記載している国債本でかなり丁寧に説明したので(プロにレビューもうけています)、リリースされたらぜひご覧ください。また、レポ市場におけるSCレートについてはBBの引値のようなプライスはないようです。

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