我が国における公的資金注入および一時国有化スキーム-金融危機対応措置(預金保険法102条スキーム)について-

本日、「我が国における公的資金注入および一時国有化スキーム-金融危機対応措置(預金保険法102条スキーム)について-」というタイトルで論文をリリースしています。本稿では日本の破綻処理について我が国が有している公的資金注入と一時国有化のスキーム(預金保険法102条スキーム)について説明しています。論文は下記のリンクから取得できます。

https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202304/202304i.pdf

本稿で説明するとおり、我が国では政策のツールとして、危機に陥った銀行へ公的資金を注入する手段が存在します。金融危機を経て、預金保険法126条の二が成立し、銀行以外に対しても資本増強や流動性供給が可能になりました。このような資本増強の仕組みが残されている点は我が国における破綻処理制度の特徴だと考えています。

本稿の最大の特徴は、預金保険法102条スキームを考えるうえで、りそな銀行の事例を全面的に取り上げている点です。その理由は、日本の破綻処理制度について理解しようと考えた場合、やはり具体的な事例を考えるのが一番だと考えるからです(事例がなければなかなか頭に入ってこないでしょう)。資金援助方式についても日本振興銀行の事例を考えるのが一番と考え、前回の論文(金融機関の破綻処理制度及び預金保険入門)ではその事例を取り上げました。

既存のテキストでは、金融国会から預金保険法102条までの流れについては細かくカバーしていますが、その後の展開について記載したものは少ないと考えています。また、公的資金注入といった場合、預保が政府保証でファンディングして、優先株などを買うのですが、具体的にどのような形で公的資金を注入したのかなどは意外と取り扱っていません。本稿では公的資金注入から返済までの流れを整理しています。

その一方、本稿では、金融国会前後の議論については一切触れていません。そもそもこの辺りは政治的な議論も少なくありませんし、このあたりの制度的な議論は、柳澤元大臣や中曽元副総裁による確立した文献があります。そのため本稿では、そこは他の書籍に譲り、公的資金注入から返済への流れに焦点を当てています。

本稿では紙面の関係上、りそな銀行に絞っており、足利銀行の事例は別の論文で紹介します(預金保険法102条が適用されたのはりそな銀行と足利銀行のみです)。また、金融危機以降に預金保険法126条の2により秩序ある処理も可能になりましたが、この点は翌月にリリースします。



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