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小室訪問記 10月「松茸」

「人生であと何回、食事ができるんだろう。」いつもそんなことを考えながら、誰と、どこで、どんな食体験をするのか、1回1回の出会いとても大切にしています。そんな私が出会った「懐石 小室」は、心もお腹も豊かに、そして人間としても成長させてくれる、そんな日本料理店。

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ザ・神楽坂。と言わんばかりのこの入口。神楽坂の閑静な住宅街の中にひっそりと佇む、日本料理店「小室」。

通りに看板はなく、入り口へと続く小道を抜けると、店主の小室さんが「いらっしゃいませ、ようこそ。」と明るく出迎えてくれます。そんな柔らかい雰囲気が、緊張をほぐしてくれ、ほっと安心感を感じるんですね。

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10月の旬食材「松茸」

ここ「小室」では、月替わりで旬の食材を使った懐石コースを堪能できます。

10月の食材は、「松茸」。なかなか普段食べることができない高級食材ですが、小室さんはご自身でも“個人店で一番松茸を購入している自信がある”と言うくらい、松茸のプロ。これが味わえるのは、今の季節だけです。

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1品目は、北海道産の天然舞茸と壬生菜と菊のお浸しを合わせた、山を味わう一皿。サクッと程よい食感が残る舞茸は、香ばしい香りがすーっと鼻を抜けていきます。壬生菜のシャキシャキ感もいいアクセントに。

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トントンと聞こえてくる包丁の音に聞き耳を立てながら、“次は何が出てくるんだろう”、とワクワクしながらお料理を待つ。この時間もなんだか楽しいんですね。

「松茸の春巻き」

登場したのは、秋満載の八寸。綿密に計算された盛り付けは、まるで食べるアート。

細長く巻いてカラッと揚げた松茸の春巻きは、口に入れた瞬間に松茸をストレートに感じます。素直に、おいしい。その他、鶏松風、芝海老の厚焼き、メダイガレイの揚物には衣に柿の種を使って食感と風味をプラス。海鼠の卵巣、鮎の背中には田楽味噌を乗せて香ばしくしっとり焼き上げられています。

手前の丸いお団子のようなものは鯛の昆布締めのお鮨、小ヤリイカには卵の黄身の味噌漬けを詰めて、日本酒のアテにも最高の味わい。
肝ソースを合わせた秋刀魚は、程よい苦みとソースの酸味が絶妙です。

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ベニテングダケという毒キノコによく似たタマゴダケ。「私も昨日食べましたが、今元気なので毒キノコではないので安心してください(笑)」と冗談交じりに話してくれました。

「松茸の土瓶蒸し」

松茸料理と言えば欠かせない「土瓶蒸し」。

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土瓶のふたを開けてみると、ふわっとお出汁のいい香り…。中には岩手産の松茸とクエ、そして銀杏が隠れていました。

添えてあるすだちはお好みで。しっかり濃い味なので、すだち無しでも十分美味しくいただけます。ふっくらとしたクエも白身とは思えないくらいの旨味。黄金色の美しいお出汁は松茸の味がぎゅっと凝縮されていて、たまりません。

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土瓶蒸しでお腹が温まったタイミングで、脂が乗った天然のシマアジをいただきます。

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やはり日本酒を合わせたくなりますね。300万年前の鉄切子で提供されたのは山形県のお酒「鯉川」。ここでは、数百年前に作られたという様々な器で料理やお酒を楽しむことができるんです。そんな出会いも、楽しみのひとつ。

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「焼き松茸」

さてお待ちかね、松茸の登場です。どーんと目の前にそびえ立つ、松茸の山…!こんなにたくさんの松茸を一度に見たのは初めてかもしれません。

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松茸と言っても大きさも形も様々。ひとつひとつの味わいが違うので、一番美味しく食べられる調理法で仕上げます。これぞまさに職人技。

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まずは、傘の大きな松茸をトントンとリズムよくカットしていく小室さん。それを炭火に乗せ、さっと火を通していきます。カウンター越しに松茸の芳醇な香りが漂いはじめると、期待がむくむくとふくらみます。

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「最初の松茸は、人間で例えるなら40代。」

成熟して脂が乗った大人のような濃い味わい、そして渋い香り。大き目にカットされているので、サクサクとした心地よい歯ごたえ。これが本物の松茸か…!

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2つ目にいただく松茸は、最初よりも少し小さめ。

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「傘が小さい方が甘さが強いんです。例えるなら、ティーンエイジャーのような味わい。」

小室さんの言う通り、甘い香りがより強く、みずみずしい。

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傘が大きなものから小さなものへと、食べる順番や焼き加減など細部まで計算しつくされています。

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「生松茸」

「松茸ポッキーです。」そんな言葉と共に登場した「生松茸」。

松茸を生で食べるなんて、人生で初めてです。シャキシャキとした食感は新鮮そのもの。爽やかな香りは、まるで森林浴をしているよう。

添えてあるのは、日本三大珍味と言われる干し子。程よい塩気と生松茸のみずみずしい味わいが口の中で合わさると、またひとつの料理が出来上がります。

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ほくほくの牛蒡を鰻で巻いて、山椒を合わせた一品。シンプルに松茸を味わい続けた後に、鰻のガツンと強い味わいと山椒の刺激。

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「松茸の肉巻き」

雲丹を肉で巻いた「う肉」や「肉寿司」は食べたことがありますが、松茸を肉で巻いた「松茸の肉巻き」はこれまた人生初体験。

甘めに味付けされた和牛で松茸をくるりと巻いた、一口すき焼き。お肉にも負けない松茸の存在感は圧巻です。

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土瓶蒸しで頂いたクエのアラは、から揚げにして余すことなく堪能。

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すっぽんの茶わん蒸しは、胃を優しく包み込んでくれます。

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「松茸炊き込みご飯」

〆にはやっぱり期待してしまう、「松茸ご飯」。期待を裏切らず、大きな土鍋で炊きあがりました。

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炊きあがった松茸ご飯の上に、さらに松茸をトッピング。これが「追い松茸」…!ご飯に染みた松茸の風味、贅沢にスライスされた生松茸のトッピング、究極の土鍋ご飯と言っても過言でありません。日本人で良かった、と心から思える至福の瞬間。

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もちろん、土鍋ご飯の醍醐味であるおこげまで味わえますよ。

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食後には、アールグレイゼリーに柿やざくろなど秋のフルーツ満載の一皿。さらに、お茶と和菓子でコースは終了。

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「食べることは、生きること。食べることは、人生。」

心から美味しいと思える料理を大切な人と味わえば、自然と笑顔がこぼれます。一期一会の食体験を叶えてくれる「小室」。10月の松茸をお楽しみください。

このマガジンでは毎月「懐石 小室」で味わえる四季折々の素材や料理をご紹介していきます。11月もお楽しみに!

懐石 小室

〒162-0827 新宿区若宮町35-4
Tel (03)3235-3332
[営業時間] 12:00~13:00 18:00~20:00
[定 休 日]日曜日・祝日
https://kaiseki-komuro.jp/

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