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小室訪問記 3月の食材「九絵(くえ)」

旬の食材を味わうことで季節の移り変わりを感じる。そんな体験を積み重ねると、自分がちょっと大人になった気分になるんです。

神楽坂の閑静な住宅街にひっそりと佇む「懐石 小室」では、五感で楽しむ“季節ごとの食体験”を提供してくれます。

“懐石料理ってハードル高い…。” そう思っている人がいたならば、是非一度訪れてみて欲しい場所。そんな場所で、今月も旬食材を味わっていきましょう。

3月の旬食材「九絵(くえ)」

3月に味わう旬食材は、「 九絵」。お椀からお造り、唐揚げに〆まで九絵を余すことなく堪能しましょう。一皿一皿味わうごとに、冬から春への移り変わりを感じられるコースの仕立てに、ワクワクと心躍ります。

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先附「薯蕷(じょうよ)蒸しの銀餡かけ

コースのスタートは「薯蕷蒸しの銀餡かけ」。あまり聞きなれない「薯蕷(じょうよ)」ですが、粘り気のあるお芋のこと。

器の中には海老や鯛付け焼き、焼椎茸、銀杏など具沢山で、上には新筍天が乗っています。銀色に輝く餡かけがホッとする優しい味わい。

下は冬、上は春を想像させる茶わん蒸しは、冬から春に季節が移り替わる今の季節にぴったりです。

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前菜盛り合わせ

小室さんのコースの中で毎回楽しみにしているのが、前菜の盛り合わせ。季節によって変わる美しい器に綿密に計算された盛り付けは、まるで食べるアート。

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3月のラインナップは、金目鯛柚麹南蛮漬け、金子黄身寿司、蛤の酒蒸しと青のりおろし和え、数の子の身巻唐墨(からすみ)、鯛入り錦玉子、蕗の薹天みそ挟み、生口子、鱚結び南蛮漬け、天豆、海老あられ揚げ、蛍烏賊燻製、京菜の花昆布〆…。

10種類以上のラインナップですが、そのひとつひとつが細部までこだわって丁寧に創り上げられています。ちなみに私はここで必ず日本酒が飲みたくなります(笑)

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お凌ぎ「蒸し寿し」

ちらし寿司のように様々な具材を彩りよく盛り付けて蒸しあげた「蒸し寿し」。ご飯を蒸すことによってふかふかの食感になり、まろやかな甘さがほんのり残るんです。たっぷり盛り付けられた具材も楽しみのひとつ。

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お椀「九絵葛叩き(くずたたき)澄まし仕立て」

あまり出会ったことのない、ひし形の器。ここ「小室」では、数百年前に作られたという貴重な器で料理やお酒を楽しむことができるんです。そんな出会いも、楽しみのひとつ。

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フタを開けてみると、中には透き通ったお出汁、そして九絵。九絵には葛粉をまとわせることで独特のなめらかな食感に仕上げ、素材の旨味をぎゅっと閉じ込めているんです。

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造り「九絵薄造り」

温かい九絵を味わった後は、お造りでいただきます。美しく薄造りにされた九絵は透明感があって美しい…。脂が乗った身はクセがなく、旨味たっぷり! 河豚よりも美味しいと言われるのも納得です。

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最初は山葵でシンプルに、その後はお好みで“このわた”や“ちり酢”、“加減醤油”に絡めてれば、それぞれ全く違った味わいに驚くはず。

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焼肴「雲子曼陀羅(くもこまんだら)・白アスパラ天・子持ち諸子・真河豚白子天・九絵アラ唐揚げ

続くのは、焼肴が5品。1品目は、「雲子曼陀羅(くもこまんだら)」。ぐつぐつと煮える小鍋の中には、北寄貝や鮑、雲丹、天トラ、毛蟹など海の幸がたっぷり。

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食べ進めていくと雲丹の下に隠れていたのは、白子。中央に白子、その周りを雲丹や様々な魚介類が囲んだ様子は、まさに曼陀羅。小室マジックにかかると、高級食材の掛け算でどんどん旨さが増していくんですね。

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2品目は「白アスパラ天」。薄衣でカラッと揚げたアスパラは、シンプルに塩でいただきます。シャキッとみずみずしい食感でしっかり濃い味。

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3品目はこの季節に美味しい「子持ち諸子」。魚の旨味とプチプチっとした卵の食感がたまりません。もう、がぶりとまるかじりしちゃいましょう。

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続く4品目は「真河豚白子天」。またまた白子の登場です。お箸で持ち上げるのが難しいくらいにとろっとろでクリームのよう…。口に入れた瞬間に濃厚な白子の旨味が広がって、じゅわ~っと溶けてなくなっちゃう。幸せってやっぱり儚い…。

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最後5品目の「九絵アラ唐揚げ」は、上品な味わいでジューシーな身と甘さ。手づかみでかぶりついちゃいましょう! 隣に添えてあるのは、九絵の鱗のお煎餅。ザックザク食感で絶妙な塩気はお酒のアテにパクパク食べたい。

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酢の物「平貝、赤貝」

平貝と赤貝の2種の貝が登場です。平貝はほどよい歯ごたえがあり、甘味と渋みがちょうどいいバランスで奥深い味わい。

大きな赤貝は、その大きさから“爆弾赤貝”と呼ばれていました! 鮮やかな朱色にコリコリの強い歯ごたえ、噛めば噛むほどに増す甘味も最高です。鮮やかな器に映える映える…!

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鍋「青柳、若筍鍋」 

小室さんが大きな土鍋を火をかけます。そこで作られているのは「青柳と若筍鍋」。わかめと筍を合わせた“若筍”は、それぞれの歯ざわりのコントラストが楽しい贅沢食感。

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若筍と一緒にお鍋に入るのは、春の味覚「青柳」。こんなに大粒の青柳が山盛り…!いいお出汁に期待が膨らみます。

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お鍋が完成すると、大きな貝殻がパカッと開いて、中から出てきたのはぷりんとした肉厚の青柳の身。ほくほくの筍と旨味たっぷりのわかめ、そして青柳、このお鍋を食べた瞬間に気分は春ですね。

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御飯「鍋汁からの九絵雑炊」

「一番美味しいのはやっぱり炊き立てのご飯。」

と小室さん。青柳の旨味が凝縮されたお鍋の汁に、炊き立ての土鍋ご飯を入れるんです。炊き立てご飯ってそのまま食べたいと思ってしまいがちですが、雑炊も炊き立てご飯で作るのが一番美味しいんだとか。

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卵とお出汁で黄金色に輝く雑炊。青柳の旨味が凝縮されたお出汁で食べる雑炊は奥深く、格別。なのに優しい…。

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九絵の身がたっぷり入った贅沢な雑炊はシンプルだけど旨味たっぷり、思わずおかわりしちゃいました。

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水菓子、菓子

お料理とお酒を楽しんだ後は、水菓子と菓子が続きます。一口では食べられないほどに大粒の「ベリーベリーストロベリー」、シャキッとみずみずしい「ルビーグレープフルーツのゼリー」。とたんに口の中が爽やかに変身。

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桜鯛の形をした菓子は、食べるのがもったいないくらいキュート。あんこの優しい甘さでこの日のコースを締めてくれました。

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さてこの日は、旬の九絵をお椀からお造り、唐揚げに〆の雑炊まで九絵の美味しさを余すことなく堪能しました。

外食しづらい時期ではありますが、心から美味しいと思える料理を大切な人と味わえば、自然と笑顔がこぼれる。料理にはそんな力があるんです。

「食べることは、生きること。食べることは、人生。」

そんな小室さんの言葉を胸に刻んで、しっかり対策をしつつ、大切なひと時を過ごしたいですね。

このマガジンでは毎月「懐石 小室」で味わえる四季折々の素材や料理をご紹介していきます。次回は4月後半です。春爛漫の旬食材をお楽しみに!

懐石 小室

〒162-0827 新宿区若宮町35-4
Tel (03)3235-3332
[営業時間] 12:00~13:00 18:00~20:00
[定 休 日]日曜日・祝日
https://kaiseki-komuro.jp/

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