Bach Well-Tempered Klavier I No.4 C# minor Fuga/Analyse

平均律第一集の嬰ハ短調の5声のフーガのお勉強です。

テーマはまずバスに出てくる4つの音。C# B# E D であります。主調のC# minorです。すぐ続いて答唱が始まりますテナーで G# F## B A# これは属調のG# minorです。対唱としてはおそらくバスでEから始まるフレーズでしょう。r は掛留音です。5小節目の頭で、対唱は掛留するようになってます。7小節目の後半から一拍遅いですが、主唱の二回目がアルトで出てきます。(C# minor) 一拍遅らせたのはやっぱり響きが悪いからでしょうか。対唱(CS)はテナーにAから出ます。

その後短い喜遊部(?)が続きます。対唱(CS)の後半にでてくる音形が5回出てきます。(青色で示したもの)和音進行は一筋縄ではいかなくて、一応C# minorですが、2小節目二拍目はF#が出てきてB minorっぽいし、4小節目から6小節目はF# minorですね。4小節目のアルトのC#はどう見ても倚音ですねぇ。掛留にしたかったけれど、先行する動機の形を優先したということでしょうか。

ソプラノの主唱が終わり、4小節目の後半から答唱がテナーに出てきます。最初の小節、メゾソプラノのC#は掛留ですが、一拍目おもてで本来のBだったとしたらここは四六の和音になってしまいます。C#が掛留している間に一拍目の裏でアルトにアインザッツがありこれがAが出て来るんですけど、いいんでしょうか(笑)これはD#m7b5の和音とみなせるのでいいんでしょうね。二拍目はG#mで、D#m7b5の7度音であり掛留されていたC#はめでたくBに解決しています。

2小節目もいろいろありまして、最初のバスのAがよくわかりません。他の3声を見る限りどう考えてもC#7でF#mに解決するのだと思いますが、バスだけはずれています。これは倚音(a)でしょうが、バスのメロディー優先ということでしょうか。

2小節目の二拍目裏は形としてはB7でC#mに偽終止する形になっています。4小節目後半は答唱が始まり、G# minorに変わり5小節目のあたまでA#が出てきて風景が変わります。この部分のバスは先行した動機が現れています。6小節目の一拍目は一小節目一拍目と同じ形で、ソプラノのEのアインザッツの瞬間A#7b5の形になってD#7に繋がり次の小節でG#mに落ち着きますがすぐ一拍目の裏でテナーにAナチュラルが登場して転調を示唆します。

1小節目、ソプラノとテナーが同じような動きをしているために妙な感じになっています。最初のソプラノのG#は嘘掛留ですから次のF#は刺繍音ですが、しかし、二拍目表ではバスがAなのでソプラノのG#は落ち着きどころがなく、結局経過音として扱うしかないのでしょうか?

2小節目はG#mで決まりですからG# minorかと思うとA#ではなくAがなっていますし、よくわかりません。

3小節目はソプラノは型どおりの掛留音でF#mに解決します。二拍目のソプラノのG#は経過音と考えてよいと思います。二拍目からC# minorで主唱がテナーに出てきます。

ここでは対唱が出てきませんが、青の枠で囲ったように同じ音形を繰り返して構造を保っています。

6小節目、F# minorを通って

1小節目二拍目からVII度調のB minorでバスに主唱、4小節目の二拍目からIII度調の E majorでアルトに主唱。1小節目の二拍目の和音は何なんでしょうね。C#m7#6みたいなことになっていますし、その裏は7度音であるべきBが二つ重なっちゃってます。ソプラノはいずれも経過音と捉えるのでしょうね。

2小節目、一拍目はまごうことなきF#7でB minorですが、ここでもことさらにA#をソプラノのBにぶつけた上、同じくBで終わって妙な進行です。

3小節目、C#m7からF#7の第二転回形でEに解決するのですが、4小節目の頭はどうも四六の和音臭い。しかし、その裏がBの和音で正規なのだとしたら一拍目は掛留ないし倚音によるものということになるでしょうか。もちろん二拍目はすべて経過音となります。

5小節目は一拍目はBの和音ですが、バスのG#は何なんでしょうね。

6小節目はソプラノに掛留を置いてB7から7小節目でEに解決してE majorを確立します。バスのB B E A はちょっと不自然ですね。

ここから装飾的で特徴的な音形がソプラノに登場する。「ミレミファミレドミ」(長調であれば「ソファソラソファミソ」)である。この音形は、最初の4つはミを中心に刺繍音となっており、後半の四つはミとドが本体であることを示唆している。この形は、上手くV-Iの和音に対応するようになっている。すなわち「ミレミファ」の「ミ」はVの和音の主音であり、「ド」の音は、Iの和音の3度音なのである。(ややこしいかな。長調で言えば、「ソファソラソファミソ」が4音ずつ、VとIに対応するわけ)

最初の小節はテナーがC# minorの主唱を奏しており、3小節目から応唱がG# minorでアルトに、ここでは型どおり、テナーがG# minorの対唱を奏する。ソプラノはしつこく刺繍音形(仮にこう呼ばせてもらう)をくりかえす。3小節目ではC#m のIの和音に埋め込まれている。5小節目も同じくF#に埋め込まれている。

ここからテナーに刺繍音形が現れる。アルトは対唱を繰り返す。アルトは一小節目の頭が掛留、2小節目の頭も掛留、しかし、三小節目の頭はタイで繋がっているが掛留ではない。こういうことを書くと師匠に「これは嘘掛留だね」とバカにされます。

一小節目のG#mへは、前のF#からの偽終止で繋がっています。3小節目の BからG#7への進行もテナーが刺繍音形のなかでB→B#となって対斜を起こさないようになっています。

4小節目からメゾソプラノにひっそりとC# minorの主唱が現れます。

刺繍音形はバスに引き継がれていきますが、少々変形してきます。

わからないのは2小節目。一拍目はC#mでソプラノとバスが3度関係にあり、メゾソプラノは掛留していますが、二拍目がよくわからない。最初の8分音符はC#mの第一転回形です。次の8分音符はF#mの第一転回形、3つめの8分音符はC#mだとすると四六の和音になりますし、4つ目の8分音符はなぞの和音です。F#mといるのも無理があるし、この小節はバッハだから許される特別処理ですね。

3小節目の二拍目はソプラノのF#を7度音だとおもえば、次のEは経過音でそれほど無理はないといえましょう。4小節目からテナーにF# minor (主調の下属調で第二の主題が入ってきます。5小節目のあたまF#を打ち直していますが、掛留と考えるべきでしょう。

ここでいよいよ二つの主題(主唱)が同時に出てまいります。最初の小節にバスでF# minor(主調の下属調)で第一の主題が、2小節目にそれにかぶせるようにしてソプラノに第二の主題が同じ下属調ででてきます。その間を刺繍音形がつづっていきます。意図したものか、イマジネーション赴くままか、和音は自由に動きます。

第一小節目、二拍目のアルトのC#がよくわかりません。鍵盤楽器で弾けば、ソプラノの伸ばしているDナチュラルがあるので経過音っぽく聞こえますが、やっぱり特別でしょうねぇ。そうすると和音は二拍目は表がDで裏がBm7ということになるでしょうか。二拍目の裏は一瞬四六の和音になりますが、これは経過音ということで許されるでしょう。2小節目はC#7-F#mで型どおりですが、次に3小節目でEらしい和音につながります。調性はA Majorなんでしょうかねぇ。次がDになって弱進行ですね。間にF#mが入っているという解釈は・・・ないだろうな。

4小節目からA Majorでアルトに第一主題が出てきます。これにつづいて5小節目でバスに第二主題が同じくA majorで。主調のC# minorからみればVI度調、並行調の下属調ってことですかね。

テナーはずっと刺繍音形をつづけています。2小節目からもういちどアルトに第二主題がA Majorででてきて4小節目にソプラノに主調のC# minorで第一主題が、畳み掛けるように5小節目に第二主題がでてきます。ここではC# minorの第一主題(ソプラノ)は最初の二拍は、Aの和音の中にありますが、すぐにF#mを通ってC# minorに抜けます。

アルトが刺繍音形を続ける中(少しずつ変形はありますが)二小節目から第二主題がC# minorでソプラノに、4小節目から同じくF# minor (下属調)でテナーに現れます。

2小節目の二拍目、ソプラノのC#を三度に扱って和音はA、C# minorのIV度の和音をつかっています。

3小節目、一拍目裏に一瞬Bの四六の和音が出来ますが、経過的な扱いですね。二拍目はG#mb5で7度音が掛留してC#7からF#minorになりますが、4小節目の二拍目二つ目の8分音符のEは…うーん、これしかないか。

バスは第二主題のつづきですね、ソプラノには第一主題がII度調で現れます。D# minorです。最初の小節の冒頭はD#7と捕らえたほうがいいのかもしれません。

2小節目、G#mからA#に二度上がりますが面白い進行です。2小節目のアルトは第二主題のII度調のアインザッツですね。ところどころに強拍の四六の和音が見られますが、バスが経過音だからいいよね、ということだと思います。

4小節目のテナーは第二主題がV度調で出ています。

最初の小節のソプラノは「ラソ#ラシラドシラソ#」となっていて、音形を若干変えてあります。2小節目はG# minor(V度調)の第二主題の入り。テナーはかなり自由に動いて最後の小節で満を持してバス(といっても相当低いが)に主調の第一主題(主唱)が出ます。

主唱に重ねてテナーで(これも低い)第二主題が主調(C# minor)で重なります。三小節目からダメ押しでソプラノに主調の主唱、4小節目にはメゾソプラノで第二主題が重なります(今度は主唱が上、第二主題が下)

第2小節にバスで第二主題がVI度調で(A dur)でます。ここの二拍目あたまのアルトのG#は7度音の掛留と見ることができるでしょう。更に4小節目のテナーに主調で主唱。

1小節目から主唱に重ねてアルト(?)で第二主題の主調による入りが重なります。もう一度、三小節目でバスに第二主題のVI度調でのいりがあります。

前の段からソプラノが完全に同型(ミレミファミレドミ)で一音ずつ一オクターブにわたってコンスタントに降りてきています。第一小節目、バスに下属調(F# minor)に第二主題。三小節目のアルト、テナー、バリトン(?)、アルトと順に下がってくる動機(シーーシラソ#ラー)がカスケードして大変美しいです。

いよいよ大詰めです。第二主題を畳み掛けるように積み重ねていって、大きな主調のV→Iの大解決を行って、全曲の終止としています(4小節目から5小節目)。終止後、バスには隠れたC#(主音)が鳴っており、その上で絢爛たる転調が展開されます。

しかし、調性的にはそれほど主調と離れることなく推移していきます。

主唱も第二主題も半音下降にとけていき、上の4小節目で曲全体のドミナント=属音に達します。このG#のペダルの上で主調の主唱と下属調の第二主題が同時に出て、バスのペダルが半音下がるという芸を見せたりしながら、全曲の終止に至ります。(赤の⇒部分)最後は第二主題を回顧して静かに終わります。

あー、えらかった。(了)

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