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孤独のタクシー飯 ride.7 すりゴマに負けた!!牛カツ京都勝牛の変!!


38歳、2人の子供がいる。東京大学に11年間在籍した後、文筆家になるという夢を追い始めた。しかし、夢とは夢で稼ぐことではないと気付き、家族を養うためにタクシー運転手を始めた。

お客様にご乗車頂きながら辿り着いた街で、今日も、独り飯を食う。

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土曜日、東京都が外出を自粛するように要請した日。この日は、営業はずっこけるだろうなと思っていたのだが、案の定難しかった。とはいえ、新人乗務員のぼくにとってはいつも通りの数字だった。ただ、わざわざ遠くの街まで飲みに来ているお客様はほとんどいなかったようで、客単価がとても低かった。

世の中のタクシー運転手では、月収40万から半分以下に落ちてしまった人もいるのだという。なかなか大変な話だが、ライター業でコンスタントに月収18万を稼ぐのはそれほど簡単ではなかったことを考えると、良い仕事だなと思う。

何せ1本5000円の仕事だってあるのだ。それだって3,4時間はかかるし、書き終えてから修正したりなんだりとリソースを食われる。ペロッと書いたものが高額で売れるレベルの書き手なら良かったのだが、そんな人は現代にはあまりいないような気がする。

さておき。そんな中でも、飯を食うことは忘れないようにしたい。たとえどれだけ収入が少なかろうと、夜の東京を彷徨い、辿り着いた街で飯を食うことはライフワークとしたい。

さて、この日辿り着いた街は江東区にある錦糸町だった。この町は、東側の繁華街としては有名なのだが、どこで営業したらいいのかわからず非効率的な流しをすることになってしまった。

情勢が悪かったのもあるのだが、お客様を乗せられないため、諦めて飯を食べることにした。

錦糸町は駅前でも駐車場代が比較的安く、にもかかわらずお店が多いので、そういう意味では楽しい街だ。

ただ、この日はあまりにも空走時間が長すぎて、飯屋を探すのが面倒になっていた。駅前にでかでかと看板がある目立つ店。牛カツ京都勝牛に入ることにした。

30分300円の駐車場に止めて少し歩く。

メモをし忘れてしまったのだが、1380円の牛カツを注文したはずだ。100円足すと「京玉」という半熟卵がつくのだが、今回はやめておいた。少々高いのだが、活力をつけなければならない!!

牛カツというと、牛カツもと村と京都勝牛が有名で、色々な街で店舗を展開している。ぼくは基本的にもと村派なのだが、その理由が勝牛の「たれ」であった。どういうことか説明しよう。

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牛カツが運ばれてくる。軽く火を通した生々しい肉にサクサクの衣がついている。このギャップが牛カツの魅力である。

まずはだし醤油で頂く。ただ、少し甘くてパンチが弱い。宮崎の地鶏を食べるときに使うような濃厚な甘い醤油のほうがあうように個人的には思う。

次にソース。こちらもまずいわけではないのだが、ソースの味ばかりが強調されてしまって、せっかく上品にあがった牛肉の良さが出ていないように思えてしまう。極論をすると肉の個性が死んでしまっているのだ。これならば、コロッケにたっぷりソースを浸して食べるほうが良いのではないかなどと思ってしまう。


そして和風カレーつけ汁。これは正直言って謎のタレなのだ。出汁入りのカレーなのだが、要するにカレーうどんのスープを少し煮詰めたものだ。これで食べると美味しいのだが、カレーの味しか感じられなくなるのが難点なのだ。ご飯とは合う。しかし、肉の良さが引き出せてるとは言えない。

山椒塩は美味しい。美味しいのだが、やっぱり液体のほうがドリップみがあって美味しく食べられるように思う。

そしておまけに麦飯!麦飯はいいのだが、どうしてとろろがないんだ!!!とろろだろ!!麦飯はとろろだろ!!!!

珍しく文句ばかり言っているのだが、道玄坂の書店に務めている時に、坂を上がったところに京都勝牛があったので、手の内がわかっているのだ。だったら行かねばいいではないかと言われてしまいそうだが、文句を言いつつも美味しく食べている。

美味しいのだが、タレが多くて、どれも一歩足りない感じがしてしまうのが難点なのだ。ぼくは普通のわさび醤油でいいかなぁなどと思った時に、机の上にすりゴマがおいてあることに気づいた。

だし醤油につけて山椒塩でぴりっとインパクトを与え、そのうえにすりごまを乗せてみた。なんと、これは美味しい。味が複雑になった。

最所にふわっとごまの香ばしさが包まれ、山椒の香りがピリッとしめてくれる。その後に肉の食感が続き、最後に肉のうまみがあふれてくる。これだ。勝牛の食べ方はこれだったんだ。そう思い、2キレを食べると、山椒塩があっという間に尽きてしまった。

追加を頼むという手もあるのかもしれないが、ここはすりごまの力に頼ってみよう。

ここで改めてメニューを見直すと、牛カツソースの説明に「すりごまとの組み合わせで美味しく頂けます」と書いてあった。そうか。すまなかった牛カツソースよ。おまえはすりごまとセットだったのか……。とんだごますり野郎め!!!

すーりごまにー 負けたー
いえ 世間負けたー

ソースをつけたあと、たっぷりとすりごまを振り替えて食べると、まるで別次元の美味しさだった。そうか。そうだったのか……。

ごまの芳醇な香りと、あっさりとしたソース、そして絞り出てくる肉の美味しさ。完璧だ。そうか。すりごまだったのか。今まで京都勝牛のことがわかっていなかった。ここはすりごまの店だ。

よし、後はすりごまとソースで全部食べるぞ!!!


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もう、2切れしか残っていない。しかもそのうち1切れは端っこの肉があんまりないところだ……。

まぁ仕方がない。最後の最後は舐めるようにすりごまソースを堪能した。

そして、最後にカレーのたれを飲んでみたら、美味しかった。今度からはスープだと考えよう。

ふー、なんのかんので堪能した。京都勝牛はたれが多い分、ベストの食べ方を見つけるまでに時間がかかるのかもしれない。ちなみに100円多く払うとついてくる京玉というタレは小細工なしで美味しい。多分これが1番美味しい。

すりゴマへの創意工夫がいきすぎて少し時間がかかってしまったが、なんとか30分以内に食事を終えることが出来た。

駐車料金は30分以内なら300円なのである。


駐車時間 31分 
料金 600円

……。

……。

すーりごまにー 負けたー
いえ 世間負けたー

……。

ごちそうさまでした……。

京都勝牛 錦糸町店
店舗数が多すぎるのでホームページで調べてください
http://kyoto-katsugyu.com/



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