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相棒がトイレを破壊したせいで、アイドルライブに行くことになりました。

 41歳。できたての出版社を経営。既婚。職歴は変わっているものの、そこを抜かすとどこにでもいる普通のおじさんである。ライフワークは文章を綴ること。

 そんなおじさんが、アイドルという現象に出会った際の心象スケッチを残す。



 2022年末、六本木で忘年会をすることになった。会社を退職することになった女性スタッフ、会社に残る相棒の大城あしか、そしてぼくの3人で最後の飲み会であった。

 ただ……。1人のゲストと4人で過ごした1次会は良かったのだが、2次会、3次会と続くうちに風向きが怪しくなり……。
 
 3次会で訪れたのは六本木ミッドタウン前のお洒落なバーで、会員制なのだという。女性スタッフが顔見知りだということで入ることができたのだが、そこのトイレで大城あしかが転倒してトイレを破壊してしまったのである。

 あしかーーーー!!!
 飲み過ぎるからーーーー!!!!

 店長と連絡先を交換して、後日弁償するという話をして退散した。これは痛い……。六本木のお洒落なバーなんて、修理費がいくらかかるかわかったもんじゃない。机が水槽になっていて熱帯魚が泳いでいるお店なのだ。

 年末の忙しい時期にトイレを破壊してしまって、随分と迷惑を掛けてしまった。これは謝りにいかないといけない。

 年が明けてからお店に謝罪を兼ねて飲みに行くことにしたのだ。すると偶然にもお店のオーナーもいてカウンターで飲んでいた。

オーナー(社長) https://twitter.com/yoji56821568

 しっかりと謝罪すると、その時はじめてトイレが壊れたことに気づいたようだ。それはそれとして、乾杯して飲んでいるうちに打ち解けてきた。六本木のバーを経営しているなんていうと、ちょっと怖い人なんじゃないかというような先入観があったのだが、非常に爽やかで、バイタリティがあって、仕事のできそうな人だった。

 そして、アイドルの話になった。

 オーナーに推しのアイドルがいるというような話しではない。なんと仕事としてアイドルのプロデュースをしているのだという。

 詳しい経緯は忘れてしまったのだが、とにかく今はアイドルに力をいれていて、アイドルユニットを成功させるために全力を尽くしているという。アイドルといってもまだ地下アイドルの段階なのだそうだが、素晴らしい子たちなので絶対に成功させたいと熱く語っていた。

 正直言ってそんなに良いイメージがある世界ではない。若い女性の夢を搾取するかのような振る舞いをするプロデューサーもいると聞く。少し斜めに構えてしまったが、お話を聞いているとびっくりするほど熱心で、なんだか1度見てみたくなった。

 せっかくなので行ってみようかな。

 といっても……。

 アイドルとは何か。どんな世界なのか。


 大人の男性が、若く可愛い女の子を探し彷徨う場所――。


 邪悪な魔境――。
 理性を失う底なし沼――。


 そんなイメージがあった。


 いい年をしてアイドルにはまってしまうと、少し危ない人だと思われてしまうのではないか——。それは初期の頃のAKB48に対して、一人で1000万円以上使うオタクさんがいて、そこから生まれたイメージのように思う。

 オタクさんといえば、アイドルの恋愛発覚の際に怒っているのも見かける。個人的にはアイドルだって恋愛はしたいだろうとは思う。それが人間だから。だけど、理性のたがが外れてしまい、お金や時間を注ぎ込み過ぎてしまった結果、うまく感情がコントロールできなくなるのかもしれない。なかなかハードな趣味だと言えるかもしれない。


 ぼくはそこまでアイドルに関心が持てない。

 他人を応援している暇があったら自分の人生を見つめ直し、一層の努力をするべきだ。

 実際問題として、他人を応援するような余力はない。


 創業して二年目の会社は毎月、資金繰りに追われている。もしも倒産すると一気に借金1000万円である。仕事は山積みで、一つでもやり残すと地獄行きだ。起業というのはそういうものだとわかりつつもなかなか厳しい。

 順風満帆とは言いがたく、嫌なこと、困ったことが山積みで、心身ともに疲労している。さらに2人の子供の成長を見守らなければならない。自分の子どもがいるのにアイドルを応援するとか推しにするなんてことは、まずありえないことだ。

 アイドルというと「チェキ」という行事があって、いくらかお金を払うとアイドルとツーショット写真が撮れるのだ。

 ただぼくは、すっかり太ったおじさんになってしまっている。10年前ならバスケとサッカーに明け暮れていたのでスリムだったのだが、そのときよりも20キロも重いのだ。

 85センチは飛べた垂直跳びも、今は20センチくらいだろう。そもそも膝を痛めそうなので思い切り跳ぶこともできない。すっかり年老いた顔で、若くフレッシュな女性と並んで写真を撮っても絶望するだけなのではないだろうか。

 といっても、バーで隣に座ったオーナーが、あんまりにも熱く語るので、見に行ってみようという気になった。トイレも壊しちゃったしね……。そこまで気乗りはしないのだが行ってみようか。



 2023年2月24日金曜日。

 六本木ミッドタウンちかくのライブハウス。起業する前にやっていたタクシードライバー時代は、このあたりが主戦場であった。

 ミッドタウンから交差点まで流していると、路地からお客様が出てくるのだ。そういえばライブハウスのあるビルには見覚えがあった。朝方、泥酔したお客さまをこのあたりで乗せたことがある。

 埼玉県までお連れしたところ、「頼んでないのにタクシーに乗せるとはどういうことだ!!」と大クレームをもらったのだ。

 頼まれていないのにどうやって連れてくるのかわからないのだが、ドライブレコーダーに記録はあるので、颯爽と会計して東京に戻った。

 そんな苦労をしながら作った会社もなかなかうまくいかない。いやいや、弱音を吐いてはいけない。最後の最後までがんばらなければ。ぼくが諦めたときは会社が死ぬときなのだから。

 少し嫌なことを思い出してしまった。気を取り直して、ビルの地下にあるライブハウスへと降りていく。

 地下のライブハウスは意外にもきれいで整然としていた。どうやら改装したばかりのようだ。

 まわりを見渡して意外に思ったのが若い女の子が多いことであった。中には制服を着た高校生までいた。運営のスタッフにライブの終わりの時間を確認しているのが聞こえてきた。もしかしたら門限などがあるのかもしれない。

 「この世の終わりのようなおじさん」ばかりがいるのかなと想像していたのだが、そもそもおじさんが少ない。ぼくを含めて5,6人しか見当たらない。
半分くらいは女性で、残りは小ぎれいな服装をした若い男性であった。

 人数は50人から60人というところだろうか。想像していたよりも人数は多く、また馴染みやすそうな雰囲気であった。中には公式グッズとおぼしきTシャツや、手持ちの棒状のライトを持っている人もいる。

 よくわからずに来てしまったのだが、この日はメンバーの一人、下町あおさんの誕生祭とのこと。どうやらリーダーを務めているらしい。

 下町あお、とは実に面白い名前だ。アイドルが本名で活動するのかどうかはよく知らないが、下町という苗字は実在していて、全国に600人程度いるとのこと。
 
 受付を済ませ、ドリンクカウンターでピールを受け取って、ライブの始まりを待っていた。

『下町あお生誕祭』
GIRLY MOON PROJECTラストライブ


 あれ、ラストライブとはどういうことだろうか。アナウンスなどから解釈するに、今回ライブをするGIRLY MOON PROJECTの最終ライブで、次からは名前を変えるようだ。

 GIRLY MOON PROJECTはオーディションプロジェクトのようなもので、最初に選ばれた8人が段々と抜けていって3人が残ったとのこと。

 そのメンバーの一人が下町あおさんで残りのお二人は……。ええっと……。写真だけは事前に見たのだが、それだけではよくわからない。バーのオーナーからは詳細かつ熱心なメッセージと共にPVやアイドル3人のTiktokを送っていただいたのだが……、実はそこまで興味が湧いていなかったのでちゃんとチェックしていなかった。

 そういえば、バーのオーナーが熱弁していた。彼女たちをトップアイドルまで成長させたい、と。

 それは流石に難しいのではないかと思ったし、オーナー自身も簡単ではないことを重々承知しているだろう。だからこそ、一人でも多くの人に知ってもらおうと一生懸命なのかもしれない。

 ところで、トップアイドルとは何だろうか。そして、どうやってなるんだろう。

 その筋にも明るくないのだが、AKB48、乃木坂46、ももいろクローバーZ、Perfume。このあたりだろうか。

 私は文章の世界の人間で、文章を通して人が成功していくのは何度も見てきた。しかし、歌や踊りによって成功する方法は皆目見当もつかない。

 メディアのゴリ押しで売れた時代はあったかもしれないが、今の時代ではそうもいかないだろう。

 開演までの時間。アイドルをトップまで押し立てる方法を考えてみたが、まったく思いつかない。

……。

……。

……。

 いよいよ、開演である。

 勢いよく音楽が流れ、華やかな照明に照らされて3名のアイドルが舞台の上に現れた。

 武骨で無機質に感じられた小さな地下のライブハウスが、突如、溢れんばかりの光に包まれた。

 音楽が鳴り響く。

 この音量、この音圧。

 ライブハウスでしか味わえない、確かな音。存在感のある音。



 そして――。


 うわーーーーーー!!!!


 3次元のアイドルの存在感すごくないか!!!!???

 
 動画では絶対に出せない生々しい存在感!!

 
 立体的なアイドルが、動いている!!


 3次元のアイドルすごい!!

 
 生きている、動いている、歌っている!!


 その日は陰鬱な雨だった。40代になると本当に嫌なことばかり起こる。家族の病気、子どもへの課金、資金繰り、体力の衰え、頭髪の減少、肥満、肌荒れ、謎の痒み……。

 しかし——。
 
 舞台の上に現れた3人のアイドルは、ほんの数秒ですべてを吹き飛ばしてくれた。

 胸の奥に詰まっていた嫌なものがすべて洗い流され、心に音楽が流れはじめた。

 想像と違っていた。
 
 地下アイドルというくらいだから、素人に毛が生えた程度の歌と踊りだと思っていたのだ。目の前にいるのはプロであった。しっかりとした声量に、魅惑的なダンス。

 しっかり手が伸びているし、指先まで気をつかっているのが感じられる。特に素晴らしいと感じたのは、観客席を見渡して表情を作ってくれることだ。もちろん、こちらは彼女たちからしたらただのおじさんである。しかし、目が合って、満面の笑みを向けられると……、もう……。すべてが……。

 これは、普通のことなのだろうか。

 地下アイドルという言葉からは想像も付かないプロのパフォーマンスに一瞬で魅了されてしまった。

 アイドルファンでも何でもないので、すぐに飽きてしまうかと思っていたのだが、飽きるなんてとんでもない!!

 永遠に見ていられる。次から次へと移り変わっていくアイドルの表情を見ているだけで幸福感を感じる。

 なんだこれは!!なんだこのエンターテイメントは……!!

 アイドルとはなんなのだ!!

 最近の推し文化では、推しを見ると「尊い」と感じるらしい。これまではまったくわからない感覚であったのだが……。

 この瞬間、心が理解した。
 これが「尊さ」であったのか——。

 曲が終わるとMCがはじまる。実にかっこいい……。彼女たちは地下アイドルではない。光り輝く舞台の上にいるスーパースターだ。

 もしかしたら、街中ですれ違ったら、ちょっと可愛い子がいたなぁくらいの存在感かもしれない。仕事の現場であったら、若い女性にプレッシャーを与えないように気を遣いつつ対応することになるので、可愛いなんて思う暇はなかったかもしれない。

 だけど、ステージの上で、自信満々にマイクパフォーマンスをするアイドルたちは、可愛い、美しい、神々しい、魅力あふれる、超自然的な、絶対的存在であった。

 ただ、ぼく自身は、音楽に乗って身体を動かしたり、「いえーい!」とか言いつつ手を振るのはちょっと苦手なので、そこまではできない。舞台の上のアイドルたちに応えてあげられないのは、残念極まりないのだが、どうしても壁に寄りかかって腕組みをしてしまう。

 だけど、目だけはステージに釘付けだった。一番前の、柵のところまでいって見たいという欲望が出たが、そんなところでおじさんが腕組みをしていたら、妙なプレッシャーになってしまうかもしれない。空気を乱してはいけない。この素晴らしい空間の邪魔になってはいけない。

 ファンが大喝采を送っている中、半分醒めた心で、腕組みをしている自分は、その場に溶け込めていないような気がして少し居心地が悪くも感じる。

 そうこうしていると、下町あおさんのソロパートが始まった。今日は生誕祭ということなので、独唱をするとのこと。

 大きな管楽器を取り出してきて演奏し、そのまま歌い始めた。

 Tani Yuukiさんの『おかえり』という曲であった。もちろん知らない。シンガーソングライターのようだ。

 曲が終わったあと、『おかえり』の歌詞を解説してくれた。

「あなたが太陽で、僕が月」というような歌詞があって、下町あおさんは太陽の光がないと月は輝けないことを知ったという。

「お客さんがいてくれるから、アイドルの私たちは輝くことができる。」


そう語っていた。

ああ……。

うう……。

それなんだよ……。

そうなんだよ。

その通りなんだよ。

それが一番大事なことなんだよ!!

 舞台の上に立っているのは、ただの可愛い女の子ではない。一人の少女でありながら、舞台の上に引き上げられて、そのプレッシャーと戦いながらも、お客さんを大切にして、お客さんに一生懸命に頑張っている——。

 つまりそれが、アイドルなのだ。

 清らかな精神。

 生きていることの美しさ。

 40年生きているうちにすっかり失ってしまった爽快な何かを下町あおさんは惜しげなく放ってくれた。

 再び3人に戻ってパフォーマンスがはじまる。

 ああ、美しい…… 神々しい…… 尊い……

 音と光に包まれた地下のライブハウスで、脳がすごい速度で動きはじめた。彼女たちは何者で、このさき一体どんな大人になっていくのだろうか。

 背の高い子。
 石田夢音子(ゆいこ)さん。通称は“ゆいまる”というらしい。
 ボディーバランスがとりわけいいのだろう。左右の動きが見事に対称で、長い手足がしっかり伸びる。ずっとダンスをやってきたのか、あるいは球技をしっかりやってきたのか。

 ごめんね、事前に写真で見たときは普通っぽい子だなと思ってしまった。でもステージの上で、自信満々に笑顔を浮かべて、流し目で客席を見るのはちょっと反則だと思う!!

 すごく年下の女性のはずなのだが、ぼくは彼女が「お姉さん」であるかのように感じた。もちろん、仕事の現場で出会ったら、話は違う。年齢も、性差も、すべての背景を取り去って、魂だけになったとしたら、ぼくはこういうお姉さんが欲しいのだろう。

 あ、なんかキモいこと言ってるかな……。

 かつて流行った『機動戦士ガンダム』という作品では、シャア・アズナブルという仮面の男が、ララァ・スンというインド系の美少女に傾倒していた。ララァの死後にその理由を語っていた。

「私の母になってくれるかもしれなかった女性だ」

 ララァの精神をアムロ・レイに奪われたことに嫉妬をし、シャアは地球を滅ぼすためにネオジオン軍を立ち上げるのだが、それはともかく……。

 年下の女性に、母とか姉を見るというのは、ありえることなのかもしれない。

 いやーーー!! 人に知られたくないな!!

 といいつつ書いてしまう物書きの悲しき性。そういえば『源氏物語』に出てくるプレイボーイ光源氏は、ずっと年下の少女、葵の上に恋をするのだが、その理由は彼女の中に、死んだ母の姿を見たからであった。

 若いアイドルの中に、自分が理想としている女性像を見つける。こういった心の作用が起こるのは、ぼくだけなのだろうか。それとも他のアイドルファンにとってそういうことってあるんだろうか。

 ぼくが部屋の隅っこで落ち込んで、この世の終わりのような顔をしているとき、ゆいまる姉さんがピンポンとチャイムを押してくれる。

「さあ!辛気くさい顔してないで外でよう!!遊ぼうぜ!!」

 ぼくは、ゆいまる姉さんの顔を見て小さく頷く。そして、外に連れ出されて、次第に心が解けて、最後には満面の笑みになるのだ。

 うわー、そんな妄想してる。大丈夫か、ぼくは。どうしてしまったんだ。
若い頃はこういう脳の機能はなかったはずなのだが、40歳を超えて何らかのバグが起こってしまったのかもしれない。

https://twitter.com/yuiko_ishida/status/1632551852448575489?s=20



 目が大きくてとっても可愛い子は北野真衣さん、通称まいまい。鹿児島から上京してきて、一人暮らしをしながらアイドルの修業をしているのだそうだ。

 この子は……。宝石のようだ。どこからどうみても可愛さしかない。最初に写真で見たときは、アプリで修正した写真のように見えてしまった。 
 
 ごめんなさい、本当にごめんなさい。だって、こんなに目が大きくて、お人形さんみたいな顔をした女の子が実在しているとは思わないじゃないか。

 その圧倒的な存在感。ありとあらゆる要素がファンシーで、可愛くて、現実の人物とは思えない。そんな子が目の前で一生懸命歌って踊っている。

 声もいかにもアイドルという雰囲気でちょっと鼻にかかった可愛い声……、と思ったら、びっくりするほどの歌唱力をみせる。

 これは紛れもなくトレーニングの成果であろう。彼女はこれまで、存在しているだけで常にみんなの中心にいて、人気者でいたのではないだろうか。もちろん、モテすぎてやっかまれることなどはあったかもしれないが、まいまいに一目惚れをした男の子数は3桁はいることだろう。

 だから、自分は可愛いから大丈夫なんだと調子に乗ってもおかしくない。しかし、自分の容姿に頼ることなく、歌と踊りのトレーニングを着実にやってきたということだ。プロだ。この子はプロだ。完全なる存在だ。ライブ会場で、ぼくに対して、完璧なアイドルとしての存在を見せてくれる。

 まいまいの大きな目は、意志の強さを表しているように思える。彼女はまったく媚びることはなく、甘えることはない。自分のやりたいこと、やるべきことだけをしっかり見据えて、妥協することなく歩んでいくのだろう。

 でも、最後の挨拶では泣きながら話していた。そういうところで泣くのはさ、反則だよね、こっちも泣いちゃうから。

 あんまりにも言うことを聞かないで社長から「我がまま小娘」と呼ばれたこともあると聞いて、クスリと笑ってしまった。こんな子たちをプロデュースするんだから社長(バーのオーナー)も大変だ。

 まいまいは言った。

「家族や学校の友達、メンバーが話を聞いてくれて、みんなで支えてくれたからアイドルができているんだと思います。」

「この先もみんなが一緒にいてくれたらと思います」


 南国に生まれた自由な精神は、制御できないくらい強い感情を心の中に飼いながら、歌い、踊り、我々を魅了する。

 うー……。好きになってしまう……。

 出口のない、一方的な愛着、愛情、恋愛。ぼくはアイドルを好きになるのは不純だと思っていた。しかし、これ以上に純粋な気持ちはないのではないだろうか。無償の愛である。

 この世に愛はあるのかい?ここにあるよ!



 最後がリーダーの下町あおさん。

 あれ、この子がお姉さんの位置なんだよな。でも、ゆいまるさんのほうがお姉さんっぽい気がする。

 一番しっかりしているようなんだけど、もしかしたら彼女は妹なのかもしれない。しっかり者の妹。だとしたら良いキャラだ。異世界に連れて行って、戦闘中にサポートされたい。

 3人の中で、下町あおさんのパーソナリティにはあまり迫れなかった。恐らく、彼女はこの3人の中で一番未完成なのだろうと思う。

 長いことクリエイター界隈にいるのでピンと来たのだが、下町あおさんからは芸術的なセンスを感じる。イラストレイターとか、漫画家とか、ライターとかの、才能がある人によくある雰囲気を持っている。

 ただ、今やっていることはアイドルとして、歌や踊りの技術を磨くことだと思うので、もしかしたらパラメーターが伸びきっていないのかもしれない。

 多分、自分の中にある心象風景が、十分に表現できていないのではないだろうか。下町あおさんはしっかりもののリーダーであるが、彼女の発言からはどこか自信のなさが感じられる。それは大きなものではなくて、ほとんどの人は気づきもしないものだろうと思うのだが、ぼくにはそう感じられた。

 パフォーマンスの質は高いのだが、発言の端々にそういう要素が見られるのだ。これは、才能の量が大きいがゆえのものと考えると納得がいく。逆にいうと、この3人の一番の伸びしろは下町あおさんということになる。

 色んな本を読んで、色んな体験をして、色んな人と話して、文章を書いたり、作詩・作曲をしたりしながら、本物のアーティストとして成長していくルートが見える……。ぼくの中に……。何か文章を書かないかな……。物書きの血が騒ぐ……。

 GIRLY MOON PROJECTラストライブということで最後はリーダーが締める。

「GIRLY MOON PROJECTは「プロジェクト」。だから、私たち3人だけではありません。皆さんも一員だと思っています。これからMOON RABBiTSになって、よりしっかりとしたものを作って行こうと思っています。」

 下町あおさんから伝わってくる、はっきりとした、明瞭な、安定した思想。こころざし。

「言霊ってありますから。願い事は口に出して言ったほうがいい。私たちは本気でトップを目指しています。絶対に武道館をめざすのでついていてください!」

 ああ、気持ちがいい……。

 なんてすがすがしい、爽やかで、曇りのない魂なのだ。

 心が洗われた。洗われただけではなく、太陽の下でほかほかになるまで干してもらった気分だ。

 やっぱりリーダーは下町あおさんなんだな。彼女の器の大きさがあるから、この3人はもっと遠くまでいけるのだろう。

 段々と3人のバランスが見えてくるのがいい。


 野望を持ったデキる妹、リーダー下町あお。
 自分の魅力を疑わないみんなのお姉さん、ゆいまる。
 暴走機関車、圧倒的な破壊力をもつ、まいまい。


 1回見ただけの感想なので、ずっと見ているファンからすると全然違うかもしれない。あくまでも、初めてライブを見て、こんなことを考えながら楽しんだという記録であり、ぼくの恥をさらしているだけだと思っていただけると幸いだ。

 アイドルとは女の子を見て楽しむものではなく、がんばる女の子を見ることで自分の脳内に巻き起こる感覚を楽しむエンターテイメントなのではないだろうか。

 この3人は武道館、そして東京ドーム。それだけではなく世界も目指しているらしい。世界といっても、具体的にどこに行くのかはまだ調べていないようであったが。

 他人を応援している暇があったら自分の人生を見つめ直し、一層の努力をするべきだ。

 そう思っていた。だけど、それは的外れだった。アイドルは元気をくれるのだ。戦う勇気をくれるのだ。頑張る姿を見せることで、我々が戦っていく勇気を与えてくれる。

 下町あおさん、石田夢音子さん、北野真衣さん。この3人が大志を抱くなら、その行く末を見届けたい!!

 アイドルとは何か。
 わからない。

 しかし、確かなことが2つだけある。

 下町あおさん、石田夢音子さん、北野真衣さんの歌と踊り、そして挑戦していく姿勢に、心の底から励まされたし、頑張ろうという気持ちになれたこと。

 もう1つはーー。

 ぼくが次のライブにも参加することだ!!
 他の予定などどうでもいい!!
 最優先だ!!

 次は渋谷!!


 泥酔してトイレをぶち壊した大城あしか君。
 君のおかげでぼくは人生の答えを見つけたよ。
 The future is unpredictable.



 お読みいただきありがとうございました。少しでも感動を伝えたいと思って書き始めたらまさかの1万字……。ちょっと字数がバグっていますが、職業物書きが本気で感動するとこういうことになります。この文章はオーナー(社長)のYojiさんにも見てもらい、出しても問題ないとのことなのでそのまま出そうと思います。こういうレポートは業界でも珍しいようなのでとても喜んでくれました。

 この文章は広告費などをもらって書いた商業記事ではなく、ただの趣味で書きました。むしろお金を払って書いています。当然原稿料などもありません。サムネイルの写真は、渋谷のライブで写真撮影OKのときに撮ったものを加工しています。

 アイドルファンの先輩方の中には、こういうのは違う、というご意見もあるかと思いますが、初見の感想としてはこれが真実です。なので、このまま残しておこうと思います。

 次の渋谷でのライブには参加して、大変充実していていました。こちらも取材ノートはとってあります。職業病で、どこへいってもメモを取ります。記事にしないことのほうが多いです。こちらは金曜日までに余力があれば書き記したいと思います。間に合うかな……。ゆいまるさんのことを勝手に書きたい……。

 金曜日はまいまいの誕生祭です!!まいまい、絶対泣くし、泣いたらこっちも絶対泣けるから、もう行くしかしない!!!

 他のアイドルファンの方のお話も聞いてみたいので、会場で不意に話しかけるかもしれません!!


 がんばれ!!MOON RABBiTS!!

 武道館に連れて行っておくれ!!

 武道館でライブを見たことがない脳内が忙しい41歳のおじさんより。


 気軽に絡んで欲しいTwitterアカウント(https://twitter.com/_Shintaro_)

 せっかくなので最後に宣伝。
 徒歩で日本一周サッカー旅をしています。面白そうだなと思う方はご覧ください!


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