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孤独のタクシー飯(仮)一晩目 蔵前「元楽」で甘いラーメンと豚飯


38歳、2人の子供がいる。夢を追う暮らしをしていたが、夢とは夢で稼ぐことではないと気付き、タクシー運転手を始めた。

タクシーはお客様を目的地に運ぶ仕事である。自分が行きたいところに行く仕事ではない。

ちょうど小腹が空いた頃、辿り着いた街で、今日も独り飯を食う。正確にいうと今日から独りで飯を食う。

墨田区でお客様を降ろし、母校である安田学園高校の横をすり抜け、蔵前橋を渡ると「元楽」があることを思い出した。

高校の時に学ラン姿で時折通ったラーメン屋である。バレー部のエドゥーというあだ名の友人が愛好していて、熱烈に勧められたのを覚えている。余談だがあだ名の由来は、横浜フューゲルスに所属していたカルロス・エドゥアルド・マランゴンに顔が似ていたからだ。

元楽前のコインパーキングに入庫し制服を脱ぐ。元楽は古民家を活用して作られたのだろうか、趣きのある店構えをしている。

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最近は豚メシとラーメンのセットを売り出しているらしく、券売機の一番目立つところにあった。普段はラーメンに炭水化物を増やすという選択肢はないのだが、とても美味しいということがPRされていたので注文してみた。

元楽は料金が安めなので、豚メシと一緒に注文しても950円であった。

まず豚メシが運ばれてきた。テーブルに置いてあるタレとごま油をたっぷり掛けてかき混ぜる。それをかっ込むと……。うまい!

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ご飯からはタレとごま油が香り、細切りの海苔の風味とシャキシャキのネギの食感も味わえる。これがまずいはずがない。もっとも、それだけならばただの「タレ掛けメシ」である。

元楽の豚メシはチャーシューが美味しい。タレとごま油だらけでジャンクな味わいが感じられる中、豚肉だけが上品に鎮座している。柔らかく、癖がなく、清廉さを感じられる豚肉である。多くの場合は豚肉とはジャンクな食品の象徴のように語られるのだが、まさかコテコテのラーメン店でこれほど清楚な豚肉に出会えるとは思わなかった。

ラーメンが運ばれてくる。脂の浮いたラーメンであるが、味つけはさほど濃くない。というよりも淡泊さを感じられるほどだ。豚メシを半分ほど食べた後では、味が感じられなかったほどである。

元楽のラーメンはほんのり甘い。

麺をすすっていると次第に甘みが感じられるようになってくる。この甘みはなんだろうか。高校生の頃はスープについた甘みだと思っていたのだが、脂の旨味をあまく感じているのか、あるいは炭水化物の甘みなのだろうか。理屈はわからないのだが、ほんのりとした甘みを感じて箸が止まらなくなっていく。

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ラーメンを食べ進めた後、豚メシへと回帰した。すると、豚メシが真の姿を見せた。さっぱりとしていて甘みのあるコテコテのラーメンと、ジャンクな味わいながらも上品さを持った豚メシは絶妙なハーモニーを奏でた。

これはうまい……。止まらなくなる……。

そして、この段階で初めてラーメンのチャーシューにも手をつけたのだが、こちらもうまい。豚メシに載っていた角切りでサクサクのものとは異なり、よく脂が乗っていて濃厚であり、口に入れると蕩ける。脂身も一切臭みが感じられず非常に美味しい。

高校生の時は知らなかった。元楽は豚のお店だということを。お土産用のチャーシューも販売されていたので、

元楽ラーメン 豚メシ あわせて950円
駐車料金 300円

ごちそうさまでした。

その日は、懐かしの松濤公園から東大裏へ行ったり、務めていたBOOK LAB TOKYOという書店の前を通ったりと渋谷地域で懐かしい気持ちになった。

思い出がたくさんある街、東京。

お客様と会話をしていたら、非常に喜んで頂けてチップを頂くなどの良い思いをした。道がわからずに悔しい思いをした。

愛するべきぼくの街である東京を走り回る仕事。
楽な仕事ではないけど悪いことばかりでもないと期待している。

次はどの街で、どんなご飯と出会えるだろうか。

続く


「らーめん元楽」
総本店 東京都台東区蔵前2-12-3
銀座元楽 東京都中央区銀座4-10-12
新橋元楽 東京都港区新橋5-12-1 越田ビル1階

https://www.genraku.com/top.html





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作家・Youtuber。偏差値30からの大学受験を経て東京大学文科Ⅱ類(経済系)→文学部に進学(宮沢賢治の生命観)→大学院は理転して農学系(アワビ類の行動生態および繁殖生態の比較)→自主退学しスポーツ系の物書きに。著書『サポーターをめぐる冒険』がサッカー本大賞2015を受賞。