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暇空茜記事(デイリー新潮)、その後の展開とは


 暇空茜氏の支持者は陰謀論者だと言われることが多かった。言われるというよりも、レッテルを貼られることが多かった。確かに「暇空茜というワードはメディアには載らない。大手メディアはナニカグループに操作されている」という趣旨の言説はよく見られたし、それは極めて標準的な陰謀論と同じ形式である。

 陰謀論とは、実際には存在しない巨大な敵を描いて、それらが見えないところで暗躍し、自分たちや、国家、世界に対して悪い影響を与えているという考えだ。

 代表的なところでいうと「日本を襲う地震は自民党の右翼勢力による人工地震である」というものや「アメリカを中心とした世界情勢はディープステイトに支配されている」というもの、「アメリカの911事件は、保険会社が多額の金銭を政府から引き出すために起こした」というものも見たことがある。最近だとmRNAワクチンだが、これは現在進行形であり、ややこしいので触れない。

 さらにぶっ飛んだ内容のものを引き出すと「人間は、そもそも地球に適応した身体ではなく元々は火星の生物であった。火星の文明が核戦争で消滅したあと、アヌンナキと共に地球に逃げてきたのが今の人類」というものもある。

 人類の起源は隠されており、月は巨大な宇宙船で、人類は宇宙人に監視され、管理されているのだ。

 私は陰謀論の専門家ではないので、いやいや、その陰謀は少し違うという突っ込みはあるとは思うのだが、そういった詳細な突っ込みは『ムー』の領域に入ってくるので、ともかく「大きな力によって支配されている」というようなことを掲げるのが陰謀論であるという理解だけしていただきたい。

 陰謀論とはストーリーである。ストーリーには人を納得させる力があるため、「突っ込み力」を発揮せずに聞いていると、次第にそれが真実であるかのように思えてくる。これが陰謀論の怖さである。

 ちなみに筆者は、人類が火星から来たという説は、どうやって否定すればいいのかわからない。「そんなことがあるはずがない、なぜなら……」というほど知識がないのである。とはいっても、火星までいくと、よくできたSFというくらいの受け止め方なので、日常のちょっとした楽しい妄想として処理できる。火星から来たかどうかは、どっちでもいいので議論をする必要もないのである。

 しかし、自分に関わりのあることなら別だ。態度を決めないといけない。

 暇空茜氏の支持者のことを、対抗勢力は「暇アノン」という。アノンというのは、アメリカの政治運動であるQアノンに由来する言葉で、その特徴は陰謀論に基づいていることである。

 Qアノンの主張は「世界規模の児童売春組織を運営している悪魔崇拝者・小児性愛者・人肉嗜食者による秘密結社が世界を裏で支配しており、ドナルド・トランプはこれと密かに戦っている」というものらしい。wikipediaによると複数の出展があるようなので、こういった解釈はアメリカでは一般的なのだろう。

Qアノン - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/Qアノン#分析

さて――。

暇空茜というワードはメディアには載らない。大手メディアはナニカグループに操作されている

 こういった主張をする匿名アカウントが多数あったのだが、確かにそれは「アノン的陰謀論」と形式上は同じように思えた。しかし、それは本当に妄想に基づく「陰謀論」であったのか。

 これが陰謀論であったのか、陰謀論でないのかは検証が必要である。「陰謀論と形式が同じで、陰謀論にしか思えないからアノン認定」というのは、少し強引ではないだろうか。

 陰謀論に思えるならばそうであると事実を持って示すべきである。逆に、陰謀論ではないと主張したければ、実際にどういう事実があるかを提示していくべきだ。

 そして、この争いについては、東京都相手に11件もの「司法バトル」をしているにもかかわらず、メディアに取り扱われなかった暇空茜氏という一般人の存在と、逆に、暇空茜氏に対するネガティブなニュースは小さなものでも誇張されて報道されることから、1年半という時間の塊を越えて、一定の確からしさを獲得してきたように思える。

 特に、一般の個人が、東京都相手に国家賠償請求訴訟を行い、東京都が敗訴したにもかかわらず、一切の報道がなされないのは異常であった。

 もちろん、報道の扱いが小さいということはありえる。ニュースバリューは相対的であるためだ。しかしながら、通信社、新聞社、雑誌を含めて、すべて沈黙しているのを見て「ナニカグループの存在は陰謀論ではなく現実の脅威である」ということを感じた人も多かったのだろう。

 国賠で都が敗訴したということは、一審において、司法が東京都の負けだと判断したことにある。つまり、国民、都民の権利を東京都が侵害していたという判断をしたことになる。これは、誰がどう考えても重い判決だと思うが、特にメディア関係者であれば、どこのメディアも取り上げないことには違和感を覚えるのではないだろうか。

 うちの新聞はどうして国賠敗訴を取り上げないのか……。これは想像なのだが、メディア関係者であれば「この件のややこしさ」にも気付いているのだろう。それは、メディア関係者ならば、さらりと見渡しただけで察することができる類のややこしさだといえる(この記事ではこれ以上言及しない)。しかし、「報道しないで避け続けるのはメディアのありようとして間違っているのではないか」という自問自答もあったのではないかと想像する。

 国家賠償請求訴訟の判決が出てから2週間と少しが経ったころ。デイリー新潮から唐突に2つの記事が出た。

「陰謀論者と言われる理由はわかりますが…」国賠訴訟で東京都に勝訴した「暇空茜」インタビュー「世間の批判にすべて答えます」

「暇空茜」インタビュー ”陰謀論者”という批判への反論「僕は石川五右衛門みたいなもん」「インターネットの華はレスバと炎上です」

 内容についてはYoutubeのラジオで詳細に検討したのだが、一言で言うと「ド直球」である。

 暇空茜氏にペタペタ貼られてきたレッテルについて、ド直球で言い返した内容になっている。より詳細に構造を説明しよう。

 デイリー新潮のライターは、暇空茜氏という人物を扱う際に批判も含めてかなり調べたのだろう。そういった批判は、いわゆるアンチ暇空界隈のアカウントや、5chの書き込みなどから収集できる。実際に新聞紙の記者がどの程度やっているのかはわからないが、その程度であればすぐに終わるので、調べていると考えるほうが自然だろう。

 その結果出てきた暇空茜氏に対する批判が「女性いじめ」「陰謀論者」「炎上ビジネス」というものであった。

 こういった批判はペタペタシール貼りと同様のレッテル貼りなので、ド直球で反論されると弱いところがある。この時点でいえることは、レッテル貼り的なアンチ言説に対して、取材が行われ、反論する舞台が与えられたことである。新潮社という歴史ある、立派なマスメディアを通じて、暇空茜の反論が行われたのだ。

 この反論の時点ではナニカグループの実態については詳細に検討されているわけではないので、「ある程度しっかりしているものの、やっぱり陰謀論」という風に読む人もいるかもしれない。しかしながら、この記事のクリティカルな点は、暇空茜氏の自説が陰謀論であるかどうか、読者が点検しやすくなったことであろうと思う。

 この記事が出たことによって「これまでマスメディアがとりあげてこなかった」ということが公開された。これだけの活動をしてきて1年半取り上げらず、逆に、ネガティブなものについては過剰に報道されてきたということが、事実として語られている。

 だから「暇空茜というワードはメディアには載らない。大手メディアはナニカグループに操作されている」という説については、ナニカグループの存在については論証はされていないものの、少なくとも何らかの事情や圧力によってメディアは扱わなかったことが示唆されたように思う。つまり、荒唐無稽な陰謀論ではなく、現実にありえる脅威であることが示唆されたといえる。

 メディアが健全ではないというのは、国民にとって大きな脅威である。メディアは国民のために権力監視をしたり、情報を伝達したり、理解の難しい事柄については解説したりするのが仕事である。しかしながら、何らかの忖度を行い、あるいは、自分たちの利益を追求するために、情報を選別しているとした場合、それはメディアが強い権力となっていることを示しているし、メディアが国民のために動いていないことになる。

 もちろん、そういう状態であることを、我々国民は何十年も前から疑っていた。しかし、それがもう無視できないものとして、「今そこにある危機」として提示されたのが、このデイリー新潮の記事なのではないかという気がする。

 私は、暇空茜氏の活動を支持している。

 もちろん、探求してみた結果、暇空茜氏の言っていることはやっぱり嘘八百、嘘松千人である可能性もある。現状では、私自身の感覚を除いてこの記事から受ける印象だけで語ると、暇空茜説には無理があるように受け取るほうが自然なのかもしれないとも思える。

 だからこそ、この先が重要である。

 まず、メディアは、なぜ暇空茜の周辺に起こる出来事を、ネガティブな事象のみ大きく取り上げ、その活動の趣旨や功績については報道していなかったのかを説明してほしい。もちろん、功績が小さいと思っており、悪人だと考えていたからそのように報道したということであれば、それはそれでいい。今後は、ある程度功績のある人物として適切に取り上げればいいと思う。一方で、その理由が説明できないということであれば、やはりメディアが権力となり、恣意的に行使しているという疑いの目は強まる。

 国賠で都が敗訴したという事実は、考える必要はない。全都民が知るべきことだ。知らなくていいということはない。知った結果は、我々都民が判断するので、伝えるべきだ。それがメディアの仕事だからだ。今後はそのスタンダードで報道してほしい。暇空茜というワードを出すと、クレームが来るというのであれば、そのクレームに対する理論武装をするのも仕事のうちだ。

 もしも、クレームが来るものは避け、クレームが来ないものだけを取り上げるのであれば、それは実質的にクレームをするものの手先であるということだ。クレームがメディアを支配するということになる。メディアは誰にも支配されてはならない。

 暇空茜と対峙するナニカグループ、というと少し範囲が大きいので、直接名指しされた人物と団体、あるいは、ネット上で「女性いじめ」「陰謀論」「炎上ビジネス」と批判してきたものについては、その点について反論する必要がある。

 「女性いじめ」という批判は女性蔑視主義者(ミソジニー)という認定に基づくものだと考えられるが、この差別主義認定という判断が、恣意的に行われているのではないかと感じている。どの団体が出している、どういったスタンダードに基づいているのかが不明瞭なのである。暇空茜の支持者には当然女性もいるし、弁護団にも女性が含まれている。そのため、女性に対する憎悪を燃やしているとは考えづらい。

 一方で、発言に行きすぎた点があるという一般的な視点からみた批判はあるだろうと思う。本来的には、フェミニズムという活動は、女性蔑視主義者と認定して攻撃するものではなく、本来あるべき女性の扱われ方を世に伝えながら、適切ではないと考えるものについて、しっかりと一つ一つ議論しながら世に問うていくものだろうと思う。

 フェミニスト、フェミニズム研究者が、一般人よりも女性論において認識が進んでいるのは当たり前である。だからこそ、それがいかに必要とされる考え方なのかを一つ一つ伝えてほしいと思う。当たり前であるが、女性と男性、男性と女性の2つの性別がなければ、生物として次世代へと命を繋いでいくことはできない。将来的には技術的に可能になると言われているが、少なくとも現在までは不可能であった。

 なので2つの性別の相違と役割を点検し、理解し合えることが重要なのではないかと感じる。もちろん、フェミニズム研究の最前線にいると大変なこともあるのだろうと上野千鶴子先生のお話を聞くと感じることもある。

 暇空茜という人物の発言や行動が、どういった点で問題となり、それが「法によって規制できるもの」なのかどうか、もしもそうではないなら法をどのように改善していくか、そのためのコンセンサスを得ていくためには、どのような活動が必要なのかという、より詳細な検証過程を求めたい。

 それによって、私自身の女性に対する考え方がより進歩するのであれば、それはフェミニズムという潮流の人類史における功績であるのではないかと思う。

 ミソジニー認定によって女性の敵というイメージを植え付け、周囲の女性からの攻撃を誘導しようとしているように見えるようなことはするべきではなく、同じ生物種の異性である男性も含めて、次世代を考えていくべきなのではないか。

 私もこの件については勉強が不足していたので、もう少し勉強をしなければならないと反省している次第だ。今の私が言っていることが的外れで、女性蔑視だとするならば、そういった批判も受け容れなければならない。

 しかしながら、女性蔑視というのは、あくまでも文化的な背景から生まれるものであろうから、もしそうであるならば、文化的な解決もあるはずだ。認定されたものは直らないので死ぬしかないというような直情的な議論ではなく、良い方向に向けて進んでいけるように話をするほうがよいのだろうと、私は感じる。

 最後に暇空茜氏であるが、彼はこのまま司法バトルを続けて行くことになるだろう。記事の中であるように、事実関係についてはすべて動画で公開されるため、その点については既存メディアより信頼することができる。

 このような人物は見たことがない。英雄だということもできるし、魔王だということもできるだろう。

 ともあれ、彼ほど、「今の日本」というものを考える契機を与えてくれた人物はいないと思っている。また、国家の根幹の1つである司法について学ぶ機会を与えられたことにも感謝している。

 最終的にどんな結果になるのかはわからないが、私はこのバトルを最後まで見届けるつもりだ。

中村慎太郎

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国賠勝訴について(速報版)


しっかり説明版(法律の専門家ではない人が頑張ってゆっくり説明しました!)


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