ABBEY ROAD 8 AUGUST 1969

本を開いて、読み終えて、映画を観終えて、それから本を開いて、読み終えて、また本を開いて、読み終えて、映画を観終えて、を繰り返していた一週間だった。そのあいだに、七十二候モビール展へ出かけたり、ウイグル料理を食べてみたり、旧友に会ったり、国産紅茶専門店「紅と香」の出張喫茶もあったりして、メリハリが意外にもあったのだけれど、その他は日がな一日本を読んだりして過ぎていった。今週読んだ本は阿久津隆著「読書の日記」、堀江敏幸著「雪沼とその周辺」、辻本力著「生活考察vol.6」、内沼晋太郎著「これからの本屋読本」、フィリップ・カー著「変わらざるもの」だった。食楽web掲載の連載掌編小説で吉田篤弘著「月とコーヒー」の第一話と、ウェブ平凡掲載のこれまた吉田篤弘著「アビー・ロードは晴れているか」の第一話も読んだ。文中において、ビートルズのアルバム「アビー・ロード」でポールマッカートニーだけが裸足だというのが気になって、インターネットの検索窓に「ABBEY ROAD 8 AUGUST 1969」と打ち込んで画像検索したら、ほんとうに一人だけ裸足だった。今はマーク・ボイル著「無銭経済宣言」を読み始めようとしている。このままでは経済的にまずい、しかとまずい、ということは至極真当に分かっているのだけど、こんなふうにして一生が過ぎていったらなんと幸せなんだろうと思わなくもなくて、むしろそんなふうに思ってばかりいて、どうして生きるためには働かないといけないのか、という破綻した疑問まで浮かんでくる。どの業界でも「ニッパチは落ちる」(つまり二月と八月は売り上げが伸びない)らしいが、わたしの記憶では先月のほうがひどかったように思えて、だったらそう焦らなくてもいいか、とまた自分を鼓舞というか安堵させている。ゲストハウスと名乗らずして、ゲストハウス文化の中で生き抜いていくためにはどうしたらいいのか、皆目見当もつかない。日本特有の古くて狭い建物を生かしたゲストハウスがなんというか窮屈な立場にある。気がする。資本を持ったひとたちが次々新品でオシャレな大箱を作る。わたしたちは同じ土俵で戦えないから(戦いたくないから)、ホテルではなくゲストハウスと名乗ってきたのに。いまや萬宿。さすがにこれだけおどけた名前なら、ゴージャスなひとたちに響くことは一切ないだろうと信じたい。でもこの先で万が一にも萬宿が簡易宿所の名称における王道となることの可能性のために、商標権は取得しておくべきだろうか。愚問ばかりが浮かんでは消える。ABBEY ROAD 8 AUGUST 1969。

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