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そして誰もいなくなった(のか?)

2023年5月7日。別れが訪れるには、その日はよく晴れ過ぎていた。
前日の5月6日のみちのくプロレス仙台大会において、フジタ”Jr”ハヤト選手が、世代闘争について辛らつな言葉で、新世代軍に覚悟を聞いた。これ以上、世代闘争を続けるのか?と。
そして5月7日、みちのくプロレス矢巾大会。メインの10人タッグマッチの試合前に、新世代軍のMUSASHI選手はマイクを持って、ハヤト選手にこう言った。「辞めるわけがない。今日こそ勝つ」と。その言葉は頼もしく、私はこう思った。『おいおい、思いっきりフラグ立ってるじゃねえか』と……。

結果的には新世代軍のリーダーのMUSASHI選手がハヤト選手からギブアップ負けして、新世代軍が解散、世代闘争の終結、という結果だったんだけど、いや~~~~~良い試合でした。月並みな言葉で申し訳ないですが。フラグとか思ってごめんね。でもあのタイミングであのセリフはもう、フラグにしか感じないのよ……。

ここ数年の間、みちのくプロレスの主軸となっていた『世代闘争』。新世代軍と現行世代軍の対立での抗争で、団体に何をもたらしたのか考えていきたいな~と思ったので考えていきます。

新世代軍は、2021年3月にMUSASHI選手が主体となって発足されたユニット。リーダーのMUSASHI選手を主軸に、郡司選手、川村選手、大瀬良選手、小笠原選手の5人で始まり、みちのくプロレスの世代交代を目標に掲げて、活動を続けていた。いた、という過去形になってしまうのがすでに悲しい。なんやかんやで2年以上活動してたんだねえ。

私は前々から『新世代軍』はMUSASHI選手こと佐々木大地選手への救いのための存在じゃないかということは主張していたんですが、この2年程の間でMUSASHI選手の心は救われたのかは分かりません!!!!(下記がMUSASHI選手にとっての新世代軍の存在を考察したnoteです)

先に結論を言ってしまうと、新世代軍を発足したことによって一番大きかった影響は、MUSASHI選手が『橋本和樹』選手というタッグパートナーを得たことだと思います。きっと新世代軍というユニットが無ければ他団体に所属している和樹選手を勧誘する(もしくは共闘する)ことも難しかったと思うので、MUSASHI選手と和樹選手とを繋ぐ橋になってくれたような気がします。多分。
団体の垣根を越えてタッグを組んで活動するのは難しいとは思うんですけど、和樹選手にはまだまだ継続参戦してほしいですね…。そこでまたMUSASHI選手と二人でユニットの中心になってもいいし、二人っきりで頑張ってもいいし。楽しみにしてます。

和樹とムッちゃん

目に見える功績、というか成果は、MUSASHI選手の東北ジュニアのシングル、MUSASHI選手と橋本和樹選手の東北タッグのベルトというところだと思うけど、それだけか?と言われるとなんか違うな~と思ったり。目に見えるものだけが全てじゃないよね、と信じたいところではある。

他の新世代軍の選手についても少し考えてきます。
郡司選手に関していえば、新世代軍に所属してからの方が闘い方に吹っ切れた感じがありません?そふと新光を持ちこんで、標識で反則して、っていうファイトスタイル。SUPER STARSのときもラフファイトはしてたけど、新世代軍に入ってからの方が楽しそう。に見えます。そういうラフファイトというかハードコアに振り切った試合が観られるのが、現状道場プロレスだけなのが惜しい!あと、OSO11選手という猛獣の飼い主というポジションを見つけたのも強かった気がする。(キャラクター的に)

というところで、小笠原選手と入れ替わりのようなかたちで入ってきたOSO11選手。郡司選手が山から連れてきたということではあるんだけど、この選手も新世代軍が存在しなければ発掘されなかった選手だろうなあと思います。2022年デビューなの面白くないですか?ニューカマー賞狙えるじゃん。今度の動向が一番気になる選手でもある。

大瀬良選手は主戦場が大阪にあったんだけど、逆に言えば新世代軍という帰る場所があったから安心して東北を離れて試合ができていたというところもあるのかなあとか思ったり。いや全然知らないけど。でも花園軍団とかすごく楽しそうでよかったね~!でももう少しみちのくプロレスも出てよ~!と思ったりもします。大瀬良選手の事情ならなんやらもあるんでしょうけど……。

川村選手は新世代軍に入ってから塁選手に東北ジュニア挑戦していて、セコンドに新世代軍のみんながいたのは心強かっただろうなあ。でも結局みちのくプロレスのベルトを奪取する前に海外へ行っちゃったので……。しかも退団しちゃった……。まあ、海外で元気にプロレスしてくれればと思います。

こう考えると、新世代軍は個々ではそれなりに活動をしてたかとは思うけど、MUSASHI選手と同じ方向を向いて、同じ速度でその道を進んでいたのか?と考えるとちょっと疑問を持っちゃうよね。良い悪いの話じゃなくて、ユニット・軍として成果があったのか、機能していたのか、というと、う~ん……という感じ。
ユニットとして機能していたかっていうことは、試合で連携していたかってことだけじゃなくて、現行世代軍へ向けてのアピールとか、タイトルマッチへの挑戦とか、同じ程の熱量を持っているかだと思ってるんですけど、上の世代をぶっ潰して世代交代しようぜ!というところが目的ではあったと思うんですよね。ただ、そうなるとどうしてもMUSASHI選手と和樹選手!あとはその他大勢!みたいになっちゃってたのでは…?と思ってしまうことは否めないです。

ってそもそもね!私は世代闘争がいまいちハマらなくて、乗り切れなかったです!!!!ごめんねなさいね!!!!!!!!
いや、新世代軍が現行世代軍に世代交代を迫るべくして行っていたという部分については応援したいという気持ちはあったし、今もそれはそうなんだけど、現行世代が新世代を相手にしてなさすぎて……。
争っている、という部分へのカタルシスが無かったんですよね……。闘争って言うからにはお互いがお互いを「倒したい!認めさせたい!勝ちたい!」って思う気持ちが必要なんじゃないの?と思うんですよね。ユニット闘争って主義主張のぶつかり合いだと思ってるんですけど、結局は新世代軍の一方通行で進んでいる感じがどうにも拭い去れなかったし、現行世代軍が新世代軍に対抗する必要が無かったんですよ。だって現行世代軍にとって新世代軍が脅威じゃないから……。それと、新世代軍が最後まで現行世代軍のことを振り向かせることができなかったかな、とも感じました。
逆に言えば「世代闘争どうなの?終わらせない?」と問題を提起してくれたハヤト選手が唯一、新世代軍を気にしてたんじゃないかってくらい。

復帰戦がタイトルマッチだったハヤト選手

私と同じくみちのくプロレスファンの姉は、世代闘争のおかげで、現行世代がユニット関係なく組んでいた試合が観られたのが嬉しかったと言っていたので、そういう意味ではよかったところもありました。確かに、世代闘争中はKen45°選手とヤッペーマンズが組んだりとか、卍丸選手とのはし選手が組んだりとか、ここ最近は観ることができなかったタッグを見ることができたな~と。世代でくくられることが無ければ、通常は組むことあんまりなかった選手同士が組んでるところが観られたのはよかったね。
ただ、世代闘争としてのここ数年は、なんとなく煮え切らないというか、燃えきれない部分がありました。個人的には。もちろん、タイトルマッチや試合について個々の選手は応援するし、嬉しかったり悲しかったりっていうのはあったけど、世代闘が全面的に押し出されている試合では、ハラハラドキドキ!という風な気持ちにはなれなかったな……。

みちのくプロレスのここ数年しか知らないので例えを出すのも難しいんですけど、阿修羅の拳王選手vsBADBOYのハヤト選手が主軸だったころは、俺たちが一番強い!という主張の元、激しい場外乱闘や反則があって、とんでもない緊張感があったりとか、SUPERSUTARSの塁選手と正規軍の剣舞選手のマスカラコントラカベジェラ戦周辺の流れっていうのは、マスクマンのエモさがあったと思うんですよね。塁選手も、実力があるのにくすぶっている選手がエースになれないのはおかしい!って主張がちゃんとあったし。
それそれがそれぞれの考えや主張を持っていて、それがお互いに受け入れられないから闘争していた……というのが、観るファンを引き付けていたのではないかと思います。だからどっちの言いたいことも分かるしどっちも応援したいよ!みたいな葛藤もあって楽しかった。

世代闘争に関しては、新世代軍の一方通行感が否めなかったので、対抗戦としてのバチバチ的な部分を感じられなかったんですよね……。てかなにせ現行世代軍が強すぎる。MUSASHI選手も言ってましたけど、勝てない相手じゃないのは分かるんですよ。でも現役バリバリの選手が勢ぞろいしてるところで、世代交代するぞ!って奮闘しても追いついてる感じがあんまりなかった……。強さだけが大事じゃないとは思うんですけど、現行世代軍を振り向かせるまでのユニット力がなかったのかな?と思いました。

私にとっては新世代軍がユニットとしての魅力が足りなかったな……。解散間近では郡司選手とOSO11選手が足攻めの連携とかしててタッグっぽい動きが増えたのはよかったんだけど、やっぱりユニットとして組んでいる意味や意義が見つけられなかったなあと思います。MUSASHI選手が新世代軍を引き連れて雪の降る道路を走ったりとか、そういうムーブは若いキャリアの選手だからできることだよなあと思ったりもしたんですけどね……。個人的にはタイトルマッチに挑戦もそうなんだけど、ユニットとしてもっと現行世代軍に噛みついていってほしかった。バックステージコメントでもツイッターでもなんでもいいからもっとアピールもしてほしかったし。試合で魅せるぜ!でもいいんだけど、それこそMUSASHI選手と和樹選手は、試合前や後に心の内をツイートしてくれるんだけど、他のメンツはそこが薄かったようにも思えます。試合だけじゃあ何をどう思ってるのかどうしても伝わってこないこともあるしね。
なんかここまで書いてきたけど、新世代軍のアンチというか、ネガティブキャンペーンしてるみたいだな…。長々と新世代軍への不満を書いてるみたいになってますけど、「こうしてくれたらなあ」っていう感想を抱くのは、それだけ期待してたり、そういうことができる能力があるって信じてるからだっていうところだけはご理解いただきたいです。

でも、そもそもMUSASHI選手が新世代軍を結成した、というところが新世代軍の意義なんだと思うんですよね。MUSASHI選手って海外武者修行から帰ってきて最初に合流したBADBOYもKen45°選手のお誘いありきだったし、自分の意思で、自分を中心としてユニットを作ったというのが一番大きなポイントだったのかなあと思いました。MUSASHI選手の、MUSASHI選手による、MUSASHI選手のためのユニット。それが新世代軍だったんですよ。良い意味でも悪い意味でも。

新世代軍は解散という形にはなったし、中心人物だったMUSASHI選手の周りには誰もいなくなったのか?と言われるとそうじゃないと思います。それこそタッグパートナーの橋本和樹選手がいてくれるし、ここ最近はMUSASHI選手が他団体に出て試合する機会にも恵まれているので、きっとそこでも色んな選手との縁だったり因縁だったりができていくんじゃないでしょうか。それに新世代軍のメンバーに関してはユニットが解散したとは言っても同じ団体にいるしね。同じ方向を向いていていれば、同じ速度で歩くから一緒に行こうよ!ってなることもあるだろうし、俺のが先に行くぜ!っていうこともあるだろうし、その道は間違ってる!って言ってくるひともいるだろうし……。ここから先がどうなっていくのかは、またみちのくプロレスを見続けていけば明らかになっていくでしょう。

6月30日にはみちのくプロレス後楽園ホール大会でMUSASHI選手と和樹選手の持つ東北タッグに景虎選手と義経選手が挑戦します。いやもうガチでエモすぎるんよなこのタッグタイトルも……。団体の未来を背負ってるMUSASHI選手と、みちのくプロレスの歴史なんて知ったこっちゃねえぜ!な和樹選手、その二人にみちのくプロレスの一時代を確実に担っていた景虎選手と義経選手が今!このタイミングで東北タッグに挑戦するって……。30周年の今年、仕掛けまくりすぎでは???そして個人的にはこのタッグタイトルがMUSASHI選手と和樹選手のタッグとしての別れ道になってるんじゃないかと勝手に予想してます。防衛しても、防衛できなくても、『新世代軍』というユニットの関係ない、二人のタッグとしての道のりが始まっていく気がする。とか言ってて、もしかしたらここで全部終る可能性だってあるし。おもしろいねえプロレスって。

この二人がベルト取ってもおもしろくなるんだろうなあ


約3年の間、みちのくプロレスファンを楽しませてくれた【新世代軍】。そして【世代闘争】は幕を閉じました。とは言っても、世代闘争は表立ってのストーリーの主軸にならなくても、どの選手だって思ってるところだから、ずっと続いていく問題にはなるんだと思います。ほら、レジェンド枠の新崎人生選手が先日の30周年興行でMUSASHI選手にまさかの初披露のスパニッシュフライで勝ったりしてるしね。みちのくプロレスのレジェンドどうなってんの??????こんなもの見せられたら若い世代は上の世代を乗り越えることに必死になるでしょう!!!高い高い壁が数多く存在するみちのくプロレスで、闘いをおもしろくするのは若い世代の頑張り次第なのかなと勝手に思ってます。

新世代軍の選手がどの道を選ぶのか。はたまたどの道も選ばないのか。これからもみちのくプロレスから目が離せません!

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