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【小説】42歳、主婦。ホームレス。

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15年の専業主婦生活を経て仕事に復帰した。そこに至るまでの人間関係の葛藤、大人の恋愛の話。
まだまだ日本という国は女性が生きづらい。たくさんの登場人物の中に、あなたがいるかも。男性は女性の生…
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#昼顔

12、上品さ。とは何か。

人の好き嫌いはない方だと思っていた。 でも、最近思うのは 好き 嫌い を判断できるほど深く人と関わってこなかったのかもしれない。 私は常に広い視野を持って、狼狽したり臆したりする事なく物事に向き合い、合理的で理性的な判断を下せる状態でいる事が人として、大人の女性として美しく、品格があると思っていた。 今でもそれは変わらない。 真っ直ぐで、正直でありたい。 一瞬カッコ悪い時があったとしても、カッコ悪いと上品は反比例しないと思っている。 たとえカッコ悪くても、正直で上品であ

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11、父が倒れた。

2012年10月1日4時40分 枕元の携帯電話が鳴った。父からだ。 こんな時間になんだろう…母方のお婆ちゃんに何かあったかな。それしか思いつかない。 夫はテレビの前で寝てしまったようで、寝室にはいなかった。寝ぼけながら電話に出ると警察だった。 実家から車で30分ほどの場所で父親が倒れていた。全身傷だらけで、10月とはいえ夜は冷え込む。凍死寸前の状態で新聞配達の職員の方が通報してくれたのだ。 謎しかない電話だったが、一瞬で目が覚めた。病院に行かなくては。

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10、もうすぐ春がくる。

義妹は実母を知らない。写真を見て、お姉さんそっくりですね!という程度の認識だ。 弟の前の彼女は実母が可愛がっていて、私も実母も、弟が彼女と結婚すればいいのに!と思っていた。 高校時代の彼女など、そう周りが思うほどうまくいくわけはない。どちらかというと、瞳さんと結婚したことの方が驚きだ。健太に彼女のような能力のある奥さんが来てくれるとは思っていなかった。 弟が結婚した頃は父はひとりで暮らしていた。たまに私が子供たちを連れて遊びに行く程度で、自営業の父はひとりで店を切り盛りし

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9、そして14歳の誕生日に…

祖母が亡くなる1ヶ月前に、14歳の誕生日を迎えた。 祖母も肺がんだった。祖母はまだ50代だったし、がん治療のあれこれも進んでいなかった時代だ。祖母に「あなたは癌ですよ」と最期まで言わなかったのではないかと思う。きっと聡明な彼女は気付いていたけど。 祖母が治療中で病院と自宅療養を行ったり来たりしていた頃、私は生と死について考えさせられた。とにかく『死』というものが身近ではなかったのだ。 私は母の本棚が嫌いだった。

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8、続・他人の不倫と祖母の死

2005年〜今日まで 私はとにかく、不倫相談や恋愛相談をされる。 今まで誰にもその内容を明かしたことがないから、ふたりの秘密だと思って黙っていたら実は周知の事実だった、って事も何度もあった。 私が他人に話さない理由はただひとつ。巻き込まれたくないのだ。 仕事を始めてからは男の人も同席する飲み会も多く、明らかに自慢の様相で語ってくる人もいた。 大抵の男の人が自身の恋愛話をしてくる場合、ほとんどが自慢ぽく聞こえる。最初は私にそういう話がないから、卑屈になってそういう風に感じて

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7、習い事と、私の人生

2011年5月10日18時00分 梨花とランチしたその日、夕方帰ってきた子供たち二人を連れて、私はサッカー場にいた。 丈太郎はサッカークラブに入っている。 彼の意思で小学校1年生に始めた。 野球じゃなくてよかった…と心底思った。 近くの野球チームは朝が早い上にパパ、ママの役割も多く、監督のお弁当まで保護者が順番で用意する。 聞くところによると、グランド整備も保護者の仕事らしい。 ママたちは口を揃えて野球のユニフォームの洗濯が大変だ、と言っていた。 おかしな世の中になった。

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