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【Valorant】新生FNCに学ぼう番外編~爆破FPSにおいて攻撃側の方が1pickの価値は高いは正しいか?Boasterが言うように本当に"If you can get the man advantage, I feel like the chances of winning the round are like 80% higher"なのか?~

要旨

cNedのブリーズジェットガイド、これで君もプロレベル | FNATIC Boasterの1:00前後において、Boasterは

"If you can get the man advantage, I feel like the chances of winning the round are like 80% higher"
「人数有利(文脈的に5vs4のことと思われる)ができたらそのラウンドの勝率80%超える気がする」(*1)

https://www.youtube.com/watch?v=b3PJj3FijAo&t=61s
(cNedのブリーズジェットガイド、これで君もプロレベル | FNATIC Boaster)

と述べている。
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(*1)件の動画には日本語字幕がついているのだが、それによると、「ラウンドの勝率が8%上がる気がする」になっている。そもそもこの記事の発端は8%しか上がらないわけないやんけ!と思ったことなんだが、明らかに80って言ってる。
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5vs4においてラウンドの勝率が上がることは経験的に理解されていることである。しかし、実際5vs4においてどれくらいのラウンド勝率上昇幅があるかというのは、数字として知られてはいない。そこで本論では2022/6月現在開催されているVCT EMEA Challengers2に出場している8チームのhttps://rib.gg/により収集されたデータから、5v4におけるBoasterの直観と実際の差を計測し、また汎用的な人数有利時のラウンド勝率への影響を数値化、可視化した。研究の結果、12チーム間で5vs4時の勝率が最も高かったのがFPXの79.86%で、最も低かったのがOGLUの69.33%であり、Boasterの発言よりも低い値が得られた。また、5vs5時との勝率の比較のために、Boaster勝率上昇割合:Bを定義した。また、攻撃側と防衛側における5vs4の影響の差異、マップの違いにおける5vs4の影響の差異についても検討するために、全ラウンドについての情報を全チームで合算してB値を比較した。







X_5v5/X_5v4=B   (X_N:人数状況Nにおけるラウンド勝率)

式-(1.1)

8チーム間でB値の比較をしたところ、最も大きい値を示したのがOGLUの1.824、最も低い値を示したのがFNCの1.370であった。また、BIND以外のマップにおいて、攻め側のB値と防衛側のB値の差が正であった。今回結果から、爆破FPSにおいて経験的に唱えられていた「攻撃側での1pickは防衛側の1pickよりも価値が大きい」という言説が、数値によって示され、Valorantにおいて成立することが確認された。

方法

rib.ggに全てを委ねる、コマンドの解説は英語だけど
rib.ggより、VCTEMEAchallengers2出場12チームのIDを取得した。
その後!rib team-xvy-performance、!rib team-round-performanceを用いて各チームごとに-s atk -s def、-m ascent -m bind -m split -m fracture -m icebox -m breeze -m havenのオプションを付けて各オプション下でのラウンド勝利、敗北数を得、勝率を算出した。その後各マップにおいてB値を攻守間で比較した。

結果


図1

図1において、5vs4は5vs5よりもラウンド勝利が高いという当然の事実を確認できる。

図2

B値を取る事で、各チームに固有の5vs5ラウンド勝率に左右されない、5vs5から5vs4になった時の勝率の上昇割合を表現することができる。

X_5v4/X_5v5=B   (X_N:人数状況Nにおけるラウンド勝率)

再掲-式-(1.1)
表1

十分なサンプル数を確保するため任意のチームiについて和を取ったデータを用い、マップと攻守陣営固有の値としてのBoaster勝率上昇割合を得た。

表2
B(atk)-B(def)の順、図3


攻撃側B値と防衛側B値との間の差は、Bindを除いて正であった。

考察

 まずは各図表から直接的に読み取れることについて記述する。
 図1に示された通り、EMEAのチームにおいて5vs4時のラウンド勝率が80%を超えるチームはなかった。このことから、Boasterの動画内での5vs4時に勝率が80%を超えるという発言は、BoasterのかわEお茶目誇張であったといえる。彼の経験と実際の間で多少の差異があったためと言える。
 また図2に示されたB値から、Boasterの所属するFNCではファーストブラッドのラウンド勝利への寄与への大きさが他のチームよりも少ないことが分かった。このことから、折角人数有利を取れたのに甘えて死んでラウンド勝利につなげられないことが多いと言えるが、FNCの実際の試合動画を見るとそのようなシーンは少なく感じる。これは、このような理由に基づくと考えられる。rib.gg上で収集した5vs4状況の中には、独立した5vs4でトレードキルを取り返されていない(1pick)と、5vs5からトレードキルの流れの中で5vs4を経由したもの(トレード先行)が混在している。
 1pickとトレード先行では前者の方がラウンド勝利への寄与が大きく、1pickとトレード先行の割合はチームによって異なる。つまり1pickを積極的に狙うプレー(攻守におけるオペレーターや、ウエポン系アルティメットによるソロキル)を多用するチームはB値が大きくなる傾向にあり、トレード先行の機会が多くなるプレー(攻防人数をかけてサイトやエリアを確保する、5vs5リテイクを多用する)を多用するチームはB値が低くなる傾向にある。またOGLUは極端に弱いのでB値に意図しない影響を与えている可能性がある。
 しいて言うなら前者はハイリスクハイリターン、後者はローリスクローリターンであるとされ、いずれのスタイルが優れているということはないので、チーム同士でB値を比較してそのチームの優劣を語ることはできず、B値は十分なメカニクスを備えているチームである(5vs4から"変に"負けることが少ない)という前提のもと、プレースタイルを判断するための指標になっていると言える。
 また、表1より、5vs4状況を生じさせるようなプレイングがどれだけラウンド勝利に貢献しうるか、つまりそのプレイングを実行する価値が他のマップ、陣営と比較してどれくらいあるかを読み取ることが出来る。最もB値が大きいのがsplitの攻撃側、低いのがsplitの防衛側である。
  表2からは攻撃側の方が1pickの価値が高いという爆破FPSにおける言説を裏付けられる。また、Bindにおいては例外的に防衛側の方が5vs4シチュエーションを目指す価値が高いという結論が導かれるが、絶対値は小さく、サンプル数を確保した場合の挙動が注目されるところである(やけくそ)。
 今回取った手法の問題点としては、rib.ggから収集できる5vs4データ内で明確に1pickと先行トレードを区別できない点である。今回は1pickと先行トレードの性質からB値との関係性を導くことができたが、データとして分けられていることの方が望ましい。また、今回はエージェント構成による影響が全く考慮されていない。
 また、各マップ間や攻防間でのB値の比較にとどまっているため、具体的に12ラウンド中何ラウンド特殊な1pickセットアップを実行するかという実践的な問題には対応できていない点も、今後の課題である。
 B値の概念は、もし各プロチームが自チームのスクリムデータを記録するなどしてエージェント構成によるデータの仕分けを行っても十分なサンプル数が確保できる場合とくに3センチネル構成と2デュエ構成の間では、前者はB値を低く、後者はB値を高くするようなプレイングを採用することが、エージェント構成をフルに活用して強みを活かすことにつながるという点で有益である。
 また、ピストルとフルバイどちらが1pickの価値の差の理解という点も今後の課題である。

結論

 "If you can get the man advantage, I feel like the chances of winning the round are like 80% higher"は若干の誇張で、プロの試合だと70-80%程度である。
 攻撃側の方が1pickの価値が高いという言説は、Bind以外においては正しく、splitでは特に攻撃側の方が1pickの価値が高いと言える。

謝辞

 今回の調査に当たってデータを提供していただいたrib.gg様には感謝の念が尽きない、また土曜の昼間からDiscordでくっちゃべってくれる友人たちにも感謝したい。

付録A



あとがき

 疲れた、、論文書く練習+rib.ggの練習でもするKerちゅて土曜の昼に始めたら12時間たってた。
それから個々のデータの取り扱い方はかなり危ういものがあるので(とくにサンプル数が十分かどうか、B値の定義の仕方は大丈夫なのかetc..)、フィクション小説だと思ってもらいたい。とはいえこんだけ雑でも攻め側の1pickが大事とかそれがマップ間で程度が異なりそうとかBoasterは1pickの重要性を下界の民にわかりやすく伝えるために誇張した表現を使ってくれたんだなとかが分かったりわかんなかったりしたのでやった甲斐はあった。
 後rib.ggのdiscord中でコマンド打って文法エラーしたら全世界に晒されるの滅茶恥ずかしかった。
 やって思ったのは、こんなにクッソ早くメタが遷移していくし、地域差も少なからずあるゲームで一定の条件を満たすデータが十分な数集まらないという事。やっぱり経験的にどうこうみたいな話で進めていくのが労力も少なくていいのかなと思う。(勿論その場合論を進める人のバイアスがかかりまくるけど)まぁ数字だけでゲームが語れたら面白くないしね、複雑さを適度にはらんでいて人間に理解できて面白いゲームシステムを作れるriotはすごい。


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